番外編 夫婦の出会い⑱
「私、変わってるわよ?」
「美人は3日で飽きると言いますけど、あなたなら飽きる事はないですね。あ、美人じゃないって意味じゃないですよ」
「一個師団を壊滅させる女でも良いの?」
「・・・夫婦喧嘩の時はあの鎧装着でお願いします」
ギ○ンの鎧、いくらで売ってくれるだろうか。というよりも、売ってくれるかどうかが問題か。作った人は人間国宝みたいだし。
「落ち着きなくて、あちこち飛び回るわよ?」
「小説のネタになりそうですね。何を言われても気持ちは変わりませんよ」
潤む瞳で見つめられると、抱き締めたくなる。我慢だ、もう少し我慢しろ、俺!
「よろしく、お願いします」
胸元に顔を埋める彼女を抱き締める。うっすらと涙を流し見上げる彼女。お互いに目を閉じ、距離が段々と縮まっていく。そして、唇に柔らかい感触。
こうして俺はリア充の仲間入りを果たす。
すっかり日が落ちてから帰った兵舎では、皆に手荒い祝福を受けた。やけに力が入った物もあったが、その気持ちはわかる。甘んじて受けよう。
この基地での彼女は貴重な戦力というだけでなく、憧れのマドンナとなっていた。皆が互いに牽制しあい手を出せなかった所にいきなりやって来た俺が掻っ攫ったのだ。手荒くなるのも仕方ない。
そしてその翌日、俺と彼女は思い出深い土地から飛び立った。日本に帰った俺達は1日休んだ後結婚を報告するために互いの実家を訪れた。
「こんな、小説家になるなんて妄想ぬかす男で本当に良いのだな?こんな甲斐性無しで!」
「どうか、どうか宜しくお願いします!」
「物好きっているんだなぁ・・・」
俺の実家に挨拶に行くと彼女は父には何度も念を押され、母には何度も感謝を言われ、兄には呆れ返られた。
その後俺は2時間もまともな職につけだの、うちには援助する余裕は無いぞだのグダグダ言われたため、流石にキレて絶縁宣言した。
確かに人気商売で不安定ではあるが、自分で選んだ職業をそこまで貶められて大人しくしているほど人間出来てない。
後に俺が人気作家として定着した頃、彼等が猫なで声ですり寄って来た。勿論、塩を撒いて追い返した。散々貶めておいて、成功したら掌返しする元家族を許すほど俺の心は広くない。
後日、あまりにも腹が立ったから、とあるインタビューの中でその事を暴露してやった。「作家北本の親族だ」なんて名前を使われたら堪らないからだ。
その結果肩身が狭くなり何処かに引っ越していったと風の噂で耳にしたが自業自得。今では消息も知らないし、知りたいとも思わない。




