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番外編 夫婦の出会い⑰

「では、明日の便でアメリカに送りまーす」


「それは有難い、日本食が食べたくて仕方ないんだ」


 パンも嫌いではないが、やはりお米が食べたい。だって日本人だもの。


 基地に到着したが、彼女はジープから降りようとしない。何かを迷っているような表情をしていたが、踏ん切りがついたのか真剣な顔でウィロビーに告げる。


「ねえ、ちょっとこのジープ貸して。北本さん、この後付き合ってくれる?」


「構いませーん、お好きに使ってくださーい。」


 彼女がどこに連れて行き何をするのかは知らないが、内戦も終わったし危険な事は無いだろう。断る理由も無いし承諾することにする。


「俺も構いませんよ」


 ウィロビーが降り、運転席に彼女が収まる。砂煙を上げて走るジープ。雰囲気に耐えかねて彼女に質問をしてみる。


「どこに行くんだ?」


「ちょっとそこまで、ね」


 道なき道を走り高台の上でジープが止まる。目の前には見渡す限りの荒野が広がり、その地平に巨大な太陽が顔を隠そうとしていた。


「凄いな、日本じゃ絶対にお目にかかれない風景だ」


「昨日までは堪能する余裕なんて無かったものね」


 誰のおかげでしょうか?と言いたい所だが、空気を読んで黙っておく。もう銃弾が飛び交う前線に出ることは無いのだから。


「一つお願いがあるの。私をあなたのパートナーにしてくれない?」


 真剣な顔で俺を見つめる彼女が言う。俺がここまで来た理由は、彼女にイラストを頼むためだ。ことらに断るという選択肢は最初から存在していない。


「それは願ったり叶ったりだ。元々、あなたに挿し絵を依頼したくてここまで来たんだ。こちらからお願いします」


 俺は笑顔で答え右手を差し出す。彼女はその手を笑顔で握り・・・とはならず、少し悲しそうな顔をしていた。


「仕事もそうなんだけど、出来れば一生のパートナーに、なって・・・欲しい・・・なぁって・・・」


 段々と声のボリュームが小さくなっていったが、最後までしっかりと聞こえてしまった。耳まで真っ赤にした彼女が、不安と期待を入り交じらせた顔で俺を見る。


「申し出は嬉しいが、俺にも結婚に関しては譲れない夢があったんだ。それを叶えたい」


 拒絶と取れる言葉に彼女はうつむく。そんな彼女に、俺は一生に一度だけ言おうと心に決めていた台詞を伝える。


「貴女を愛しています。これからの時間を俺と共に過ごしてくれませんか?」


「へっ・・・?」


 彼女は薄く涙を湛えた顔を上げる。何を言われたのか理解出来ていないようだ。


「ロマンチックな場所で好きになった女の子に告白するのが夢だったんです。一生に一度なのだから、今を逃すと叶わなくなる夢なので」


 ちょっと意地が悪いとは思うけど、プロポーズは男から。これは譲れない。先制攻撃はされたけどね。

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