番外編 夫婦の出会い⑭
この小説は「内緒のアイドル声優」で間違いありません。
体を桶で汲んだお湯で軽く洗い湯に浸かる。やはり露天風呂は最高だ。湯を両手に満たし顔を洗う。その拍子に我が相棒が目に入った。
魔王に幼児化の呪いを掛けられ、縮んでしまった相棒。きっと魔王を倒し、元の姿に戻してやる。
そして、可愛い女の子と恋をして・・・
「フハハハハ、勇者ツガルよ。勇者といえども風呂では隙だらけだな!」
「くっ、魔王マゼラン!こんな所まで・・・ブッ!」
立ち上がり魔王を睨み付けるが、すぐに目を反らす破目になってしまった。チラ見したいという欲求を鋼の意志で抑えつける。
「魔王・・・貴様、何て格好を!」
「勇者よ、風呂場で服を着ないのは常識であろう?ちゃんと大事な場所はタオルで隠しておるわ!」
塀の上にはタオル一枚で腕組みする幼女の姿があった。その姿を隠すのは、自己申告の通り腰に巻き付けたタオル一枚である。
「出たわね魔王!」
「ゆーしゃちゃんを覗・・・護衛して正解だったわ!」
「ここであなたを倒す!」
頼れるパーティーメンバー、スカゲラック・ボスポラス・ドーバーの3人が駆けつけ俺を囲む。幼女魔王の肌を直視しなくて良くなった俺は、すぐに両手で目を覆った。
「ちょっ、来てくれたのは助かるけど、装備はどうしたの装備は!」
風呂場に乱入してきたメンバーは皆タオル一枚で防具を付けていなかった。先程よりも増えた肌色に、戦闘中であるにも関わらず目を隠す必要に駆られてしまった。
「「「あら、服を着て入浴なんて不粋じゃない」」」
「それみろ、勇者よ。我が正しいではないか」
ドヤ顔で無い胸を張る魔王。何だかやけにムカつくが、反射的に睨んで見てしまった肌色に慌てて目を隠した。
「カネガタリナイソリャスマネーアイムソーリーヒゲソーリー・・・スベッタサムイゾー!」
スカゲラックの最上級氷結呪文、スベッタサムイゾーが炸裂する。強烈な冷気に標的になっていない俺まで寒くなってくる。
・・・トントントン、と扉を叩く音がした。調子よく書けていたのだが、無視する訳にもいかないのでペンを置き扉の鍵を開けた。
「まだ原稿は出来てませんよ。どうしたんですか?」
「それが、敵と休戦交渉をすることになったのよ。その場に私たちも来て欲しいと言われてね」
本来なら日本人の俺達は内戦の休戦交渉に行く必要はないのだか、俺には休戦の理由に思い当たる節があり過ぎる。暴れまくった影響以外に考えられない。
「行かない訳にはいかなそうですね、行きましょうか」
この基地の司令官と補佐官、彼女と俺の4人は装甲車に乗り休戦交渉をする場へと向かった。
両軍の中間点となる荒野に設えられたテントの前で装甲車は止まる。その背後には友軍が万一に備えて展開していた。




