番外編 夫婦の出会い⑦
甲冑を乗せたジープに通りかかった人は驚き注目を浴びた。中世ヨーロッパじゃあるまいし、鎧甲冑装備する人なんて居ないのだから仕方ない。一刻も早く着いて欲しいと願うが、ジープの速度は上がらない。
「ちょっと安全運転すぎないか?」
「こんな見事なコスプレ衣装、市民の皆さんに披露しなければなりませーん!」
コスプレ衣装と言い張るか。どこの世界に総玉鋼製のコスプレ衣装があるというのだ。
俺の抗議は聞き流され、たっぷりと時間をかけて大使館に到着した。門の前で停車し、ウィロビーが携帯を取りだし何やら話す。すると門が自動で開く。
正面玄関に車が横付けされると、そこには一人の女性が立っていた。
「あら、ウィロビーさん。私に話があるって人は?」
日本語で話す女性は隣に座る俺を人と認識していないようだ。そりゃあ巨大ギ○ンフィギュアに人が入ってるとは思わないよな。
「お久しぶりでーす。隣に座ってる人がそうでーす」
「隣に?見事なギ○ンねぇ。材質は鉄かしら?」
握った拳で軽くコンコンと叩かれた。正確には鉄ではなく玉鋼です。
「え~、一応中身が入ってますので」
フィギュアから声がしたのに驚いた彼女は後ろに飛び退いた。誰だってそういう反応になるだろう。
「これ、フィギュアじゃないの?」
「製作者曰く、防弾着だそうですよ。それを知らずに防弾着だとわかる人って居るんですかねぇ」
もしもそんな人が居るのならば、その人には眼科医か脳外科に通う事をお勧めします。まあ、そんの人は居ないと思うのだけど。
「という事は、銃弾を防げるの?」
「みたいですけどねぇ」
そう言われてはいるが、試したいとは思わない。もしも防げずに貫通したら、洒落にならない事態になってしまう。
「なら試してみましょう、前線にお願い!」
女性はヒラリとジープに飛び乗ると、前線に行けなんてとんでもない事を言い出した。俺は慌てて反論する。
「ちょっと待って、前線に行く必要なんて!」
「いくら内戦中でも街中で銃を撃つのはまずいわよ。試すなら戦場でないと」
言われてみれば正論だとは思う。だけど、そう言う彼女の顔が輝いて見えるのが物凄く不安だった。
市街から離れた荒野にターン、と高い音が響き硝煙の臭いが鼻をくすぐる。その臭いの発生源であるM16ライフルを持った女性は嬉しそうだった。
「拳銃弾に自動小銃弾、機関銃弾まで跳ね返すわねぇ」
「流石はジャパニーズ刀匠の作品でーす!」
試験の結果、この鎧は機関銃弾さえも通さない高性能ぶりを発揮した。一応致命傷にならない脚や肩に当てていたとはいえ、貫通していたらどうするつもりだったのやら。
「では次でーす。RPG-7でHEAT弾でーす」
笑顔でロケット砲を肩に担ぐウィロビー。ちょっと待て、それは流石に防ぎきれないだろうが!




