番外編 夫婦の出会い⑥
輸送機から降りて駐機場に降りる。駐機場の端に俺の鞄と見慣れない物体が並んでいた。この基地のスタッフらしき制服を着た人達が嬉々として組み上げている代物を見た感想は。
「・・・巨大フィギュア?」
ダイヤ型の頭にスリムなボディ、脇には円形で膨らんだ盾を持つそれは、某人気アニメに出てきたモビ○スーツであった。
「何でこんな物がここに?」
「ミスター北本、お手紙でーす」
怪しげな日本語のウィロビーから手紙を受けとる。こいつ、初めはまともに喋っていたような気がするのだが気の所為だろうか。
『この手紙を見ているということは、あれを見ているだろう。あれは某刀匠が精魂込めて作り上げたコスプレ衣装だ。
自身の持つ鋼の知識を惜しみ無く注ぎ込んで作られた逸品なんだが、イベントでの使用を断られたらしい。
本当は本人が戦地で試したがっていたのだが、政府に止められたらしい。人間国宝なんてならなきゃ良かったってボヤいてたよ。
その無念を是非晴らしてくれ。総玉鋼製だから銃弾程度は難なく弾き返すから、防弾着としても優秀だ。
感想を楽しみにしているぞ』
・・・阿保かーーーーーっ!
「どこからどう見ても防弾着じゃねぇだろ!世界に誇る日本刀の技術をこんな無駄遣いしてんじゃねぇよ!」
と叫んだ所で状況は変わらないが、叫ばずにいられなかった俺を誰が責める事ができようか。
「早速着てみてくださーい!」
わらわらと集まった兵士によって鎧が装着されていく。バンドによってサイズの余裕を作る構造になっていたため、ちゃんと装備出来てしまった。
これ作ったの刀匠だよな。最近の刀匠は鎧作りも修めているのか?
「Oh、見事なギ○ンでーす!」
「壺を女上司に送ってくださーい!」
俺に女上司なんていないから!あの壺は本当に良いものだなんて言わないから!
・・・はっ、女で思い出した。俺はイラストの依頼に行かなければならない!
「こんな事をしている場合ではない。民間人の日本人女性を探さなければならないんだ」
「心配ありませーん。事情は聞いてまーす」
「日本大使館に滞在してまーす。これからお連れしまーす」
イラストレーターの居場所をすぐに特定出来たのは幸運だったが、俺はやってきたジープに鞄と共に放り込まれた。
「ちょっ、このまま行くのか、着替えさせてくれよ!」
公の場所でコスプレをしてはいけない。ちゃんと然るべき場所で楽しみましょう。俺は楽しんでないけどね!
しかし俺の叫びはまたもや無視され、そのまま基地を出て市街へと走り出したのだった。




