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番外編 夫婦の出会い⑤

 失神から目が覚めて一番に見えたのは、見覚えのないムサイオッサンの顔だった。


「知らないオッサンだ・・・」


「確かにオッサンだが、第一声がそれかよ!」


 目を凝らし周囲を確認する。いつの間にか対面式のシートに座らされていた。尻から振動が伝わってくるので乗り物に乗せられていると思われる。


「ここはセリカスタン行きの輸送機の中だよ。俺はウィロビー、こいつはケソンだ」


「北本です」


 差し出された手を握り握手を交わす。こいつら、絶対に偽名で軍人だな。所作に隙がない。


「お二人とも、オーストラリア旅行では苦労なさいましたね」


「ああ。TPボートが揺れまくってな」


「乗り換えた機がジークに襲われた時は肝を冷やしましたよ」


 ニヤニヤしながら応じる2人。ウィロビーはマッカーサー元帥の副官。ケソンはフィリピンの大統領だった。日本軍迎撃に失敗しバターン半島に籠った後、じり貧となりマッカーサーは大統領と側近を連れオーストラリアに逃げ延びたのだ。


「我々はセリカスタン政府のオブザーバーです。あなたの面倒を見るように言われていますので」


「日本の匠が作った鎧、楽しみにしているのですよ」


 俺が試験を頼まれたのは防弾着の筈だ。米国人の二人は上手く日本語に訳せないのかもしれない。長いこと気絶していたようで、乗機は着陸体勢に入った。


「これより、当機は着陸に入ります」


 速度を落とした機はゆっくりと降下して着陸シークエンスに入る・・・かと思いきや、急に上昇し宙返りをした。


「どわっ!」


 着席しシートベルトをしていたから放り出されたりはしなかったが、驚きで叫んでしまった。事故の危険が高い着陸で宙返りをするなんて、この機のキャプテンは正気なのだろうか。


「日本からのお客さんが乗ってるからサービスしたみたいですね」


「着陸直前に宙返りはお約束だな」


 平然としている米国人2人。着陸前に宙返りをするゲームがあったが、それの事を言っているのだろうか。


「ゲームと現実を混同しないでほしいが」


 と頭痛を堪えながら本音を漏らす。現実で真似をすれば墜落するような行動を平気でやらないでいただきたい。


「日本人に言われたくありませーん!」


「オタク大国、日本を見習ってるだけでーす!」


 この2人、日本に何か変な偏見もってないか?着陸前に逆噴射した機長はいたが、現実で着陸前に宙返りする機長は居ない・・・居ないよな?


「いやいや、日本人の殆どは真っ当だからな?一部の特殊な人達だけ見ないでくれよ?」


 その一部の特殊な人達を相手に商売するのが我々小説家なのだが、そこには突っ込まないでほしい。


「説得力がありませーん。ミスター北本、停止したので荷物を降ろします。確認をお願いしまーす」


 キャビンから出るウィロビーの後を追う。機外に出ると、既に荷下ろしは始まっていた。

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