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番外編 夫婦の出会い④

「ちょっ、もう少し丁寧に運転してくれないか?」


「こんなのとは比べ物にならないGを体験するんだ、我慢しろ」


 確かに飛行機のGは車とは比べ物にならない。旅客機ならそれを感じる事はないが、これから乗せてもらうのは軍用機だと聞いている。乗る者に対する配慮を期待してはいけない。


「おお、ここだここだ」


 蒲鉾型の建物の脇に車が止まる。滑走路はその向こうのようで、乗る飛行機はここからは見えない。建物の脇に居た金髪の兵士が俺達の車に手を振った。


「おーい、こっちだ。乗るやつは早く着替えてくれ!」


「ほら、北本。急ぐぞ」


 松原に手を引かれ建物に入る。飛行機に乗る前に手続きでもするのだろうか。普通ならパスポートなどの確認をする必要があるのだが、この基地の敷地内は既に米国。こんな場合どうなのか知っている人が居たら教えてほしい。


「荷物は俺が飛行機に載せるから、とっとと着替えろ!」


 松原は俺の荷物を持って駆け出し、宇宙服のような服を持った兵士が近付く。どうやら手続きをするために建物に入った訳ではなさそうだ。


「コレヲキテクダサーイ」


「ダイジョウブ、イタクアリマセーン!」


 2人の兵士さんによって宇宙服擬きを着せられる。軍用輸送機に乗るのに、こんな物々しい装備が必要なのだろうか。


「おー、中々似合うじゃないか」


「松原、普通飛行機に乗る為にこんな物は着ないよな?」


 戻ってきた松原を問い詰める。エンジン音で会話が出来ないのでヘッドセットを装着するらしいとは知っていたが、これはどう考えても普通ではない。


「そりゃ仕方ない。黒い鳥さんに乗るには必要なんだから」


 黒い鳥さんと聞いて思い浮かぶ飛行機はただ一種。最高速度マッハ3を叩き出す、世界最速の飛行機だ。


「おいおい、まさかSR-71ブラックバードに乗るとか言わないよな?」


 無言で入ってきたのと反対側の扉を開ける松原。目に入ってきたのは、エンジン音を響かせ離陸準備の整った黒い飛行機だった。


「最新型ではなく一つ旧型のSR-71なんだよ。まあ、高性能だから勘弁してくれ」


「いや、一つ旧型でどんな違いがあるんだよ!」


 違いってウエポンベイの容量と航続距離だっけか?小説の肥やしにとかじっただけの俺には詳しくは分からんし、分かった所で意味もない。


「滅多に出来ない貴重な体験、楽しんでこい!」


「ちょっ、覚悟を決める時間をくれ!」


 魂の叫びは見事に無視され、狭い座席に押し込まれた。軍用機に乗るのも初めての人間を、世界最速の偵察機に乗せるなんてどうかしてる。


「それでは離陸します」


 俺の心情などお構いなしに耳元のレシーバーから音声が入る。と同時に機体が動きだし、浮遊感を感じた。


「ノオォォォォォッ!」


 次の瞬間加速による強烈なGを受け、叫んでしまう事を止められない止まらない。


「Oh、ソコマデヨロコンデモラエルトハ。コレハサービスデース!」


 おいっ、超音速で木の葉落としなんて、機体強度が・・・


 それを最後に意識を手放してしまった。

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