番外編 夫婦の出会い②
出版社を出てトボトボと歩いた。思案したところで俺は一般人であり、内戦中の国に入国する手立てなど考え付くはずもない。かと言って彼女のイラストを諦めたくもなかった。
「よお、北本、湿気た面してどうしたんだ?」
「お?ああ、松原か」
振り返ると友人の松原が立っていた。少し戯けた性格をしているが何故か憎めず、顔の広い奴だった。
「悩み事なら聞くぞ、聞いて笑うだけだがな」
「そこは普通、力になると言わないか?」
「内容も知らんのに軽々しく力になるなんて言えるか」
言われてみれば正論である。だからと言って笑うだけというのはどうかと思うがな。それでも話すだけ話してみようと松原を誘う事にした。
「それじゃ喫茶店にでも入るか。松原のおごりで」
「そこは相談をもちかける北本のおごりじゃないのか?」
「デビュー前の新人作家の懐が暖かいはずないだろうが。ヒットとばしたらおごってやるよ」
この時の発言を、俺は後に後悔しまくることになる。近くにあったスター○ックスに2人で入る・・・と思いきや、その隣にあったマク○ナル○に入店。
「店員さん、ホットコーヒーとスマイル2つづつね」
いつもの調子で店員さんにオーダーする松原。スマイルは注文する必要あったのだろうか、そう思うも声に出して聞けず禁煙席の隅に陣取る。
「なあ、何でス○ーバックスじゃなくマクド○ルドにしたんだ?」
「安いから」
的確で分かりやすく、身も蓋もない答えを返された。奢ってもらう立場なので文句は言わないが、もう少しオブラートに包むなり何なりするべきであろう。
「で、何を悩んでいたんだ?」
「いや、内戦中の国に入国する手立ては無いものかと思案してたんだ」
初の書籍の挿絵を頼みたいイラストレーターが外国に居る事。その国が内戦状態で一般人では入国出来ない事を説明した。
「なるほどな。そりゃ無理難題・・・でもないかな」
「えっ、行けるのか?」
「ちょっと席を外すぞ」
席から離れ携帯をかける松原。コーヒーを飲みながらそれを見守る。何ヵ所かに電話して戻った松原は、笑みを浮かべていた。
「良かったな。一つ条件を飲めば行き帰りの交通手段が得られるぞ」
「それは本当か!」
まさかどえにかなると思わなかった。その条件とやらを飲めば良いのならば、多少の無理をしてでもその話を受けようと思う。
「お前、体力あったよな」
「ああ。作家は体力勝負だからな」
小説家というと引きこもりというイメージがあるが、徹夜しての執筆等で意外と体力が必要なのだ。取材で各地を歩く事もあるので、俺はトレーニングを欠かさず行っている。
「ならいけるな。条件は1つ。防弾着のモニターだ」




