第二百八十五話 後日談
「つ、疲れたわ・・・」
「災難だったわねぇ。お疲れ様」
ホワイトデーから数日経った休日。リビングのテーブルでだれていると、お母さんが頭を撫でて労ってくれました。
「ただでさえ忙しいというのに、馬鹿のせいで取材攻勢が激化したから皆目が死んでたわよ」
新白岡が起こした騒ぎはマスコミ各社か総力を挙げる取材合戦となり、桶川プロや私に掃いて捨てるほどの報道陣が詰め寄りました。
現役都議の子息が米国大使に暴言を吐き暴行するというあり得ない事件が、証拠の映像付で流れたのです。
新白岡がテレビ局など言いなりだという発言も桶川プロ提供の動画でテレビ局各社も知り、反発した各社による盛大なバッシングが展開されました。
内調主導による捜査で新白岡議員が過去に子息がやらかした犯罪行為に対して懐柔・買収・脅迫・実力行使による揉み消しを行っていた事も発覚。都議が所属していた都民第一の会は散々に叩かれ次の選挙は危ういと言われています。
当然、都議本人は都議の資格を剥奪された上で逮捕。親子揃って留置されています。
「現役都議の息子があんな事やらかすなんてね。念の為知り合いにお話しておいて良かったわ」
「あ、タイミング良く米国大使やら内調が来たのってやっぱりお母さんが・・・」
疑ってはいても確証の無かった疑惑が、本人の口から明かされました。ライトノベルのイラストレーターが、何をどうしたらそんな機関と接点を持つのでしょう。
「お母さんの昔の趣味でちょっとね。でも、こうなったのはお父さんも関わっているからお母さんだけが原因ではないのよ」
「お父さんの書く小説よりも破天荒な内容だろうと容易に想像つくから、聞きたいような聞きたくないような・・・」
「そうそう、逮捕された新白岡なのだけど・・・」
葛藤する私を面白そうに見ていたお母さんは、徐ろに話題を変えました。聞くか聞かないか結論の出ない私は黙ってお母さんの言葉に耳を傾けます。
「原料から作った特製チョコレートを渡されたから婚約者だと今も言い張っているらしいわよ」
「関係者全員にカカオから作ったチョコレートを配ったと脳力試験で言ったのだけど。見ていなかったのかしらね」
番組を見ていなかったのか、そこだけ都合良く忘れているのか。新白岡の言動から思うに後者のような気がします。
「来年からは変な誤解されないように、市販品で済ませるべきね」
「横田の皆さんや大使はガッカリするでしょうけど、それが無難かもしれないわね」
その後、新白岡に対する取り調べは過酷さを増し新白岡は贅肉の殆どを失ったそうです。
その理由が米国からの圧力との噂が流れたのですが、圧力の理由が来年ユウリちゃんの手作りチョコを食べられなくなったからだという事実を誰も知りませんでした。




