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第二百八十話 叩けば直る 

「遊ちゃん、こういうのはこうすれば直るのよ!」


 桶川さんは机から取り出したハリセンで課長さんの側頭部を思い切り叩きました。心地良い音が鳴り、何が起きたのか理解出来ていないらしい課長さんはキョロキョロしています。


「ほら、直ったわ。映りが悪いテレビもこの技で解決するのよ」


「桶川さん、今のテレビにそれやったら余計に壊れますからね」


 集積回路を使った現代のテレビと、真空管を使った昔のテレビを一緒にしないでいただきたいものです。


「遊ちゃん、流石に真空管のテレビは使った事無いわよ。トランジスタは使ってたわ!」


「そうそう、スイッチ入れても真空管が暖まるまで画面がつかないなんて体験はしていませんよ」


 復活した課長さんも桶川さんの後押しをしますが、語るに落ちているような気がするのは私だけでしょうか。気になる所ですが、今は追求よりも収録に行く準備をしなければなりません。


「今はテレビ談義よりも支度をしなくては。課長さん、納得していただけましたね?」


「ああ、まさか北本君がユウリさんだとはな。これは流石に言えないし、どう誤魔化したら良いものか・・・」


「ユウリちゃん、隣の部屋にユウリちゃん用の服があるわ。そこで着替えて頂戴。こんな事もあろうかと置いておいて良かったわ」


 ドヤ顔の桶川さんと悩む課長さんを残して隣の部屋に移動します。洋服掛けに吊るしてあった洋服に着替えて化粧を施し社長室に戻ると課長さんは総務部に戻ったようでした。


「桶川さん、時間も押してますし電車を使いましょう」


「えっ、急げば間に合うわよ。車の方が便利だし・・・」


「渋滞に巻き込まれたら身動き出来なくなります。電車の方が確実ですよ」


 囲まれる時もあるのでユウリで電車を使う事は殆ど無いのですが、今日は車よりも電車の方が確実です。急ぐ桶川さんの運転で車に乗るなんて自殺行為、私にはする勇気はありませんから。


 途中で変装がバレてサインや握手をせがまれたりもしましたが、何とか収録に遅れる事無くテレビ局に到着。恙無く収録を終える事が出来ました。


 尚、総務部に戻った課長は何故私を引き止められなかったのかとつるし上げを食らったそうです。しかし理由を話す訳にはいかず、切り抜けるのに相当の苦労をしたのだとか。


 そんなこんなで事務処理とユウリとしての活動をこなす事数日。三月十四日のホワイトデーがやってきました。今日は地下駐車場から車を締め出し、届けられる品はここで仕分けをする事となります。


 待ち構える私達の前に停まる運送会社のトラック。荷台から次々と包装された箱が運び出され山積みとなっていきます。これが長い一日の始まりとなるのでした。

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