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第二十八話 取材と契約

 出版社に着き、受付へ。桶川さんが受付嬢に話しかけようとしましたが、先に話し掛けられました。


「お待ちしていました。声優のユウリさんですね?取材の件、承っております。ご案内いたします」


 用件を言う前に案内されてしまいました。表情に出さない事には成功しましたが、内心ではかなり驚いています。


「すぐに担当者が参ります。こちらで少々お待ちください」


 受付嬢はコーヒーを出すと出ていってしまいました。とりあえずコーヒーに口をつけます。

 私も桶川さんも一言も話しません。ここはどうか知りませんが、待たせる部屋に盗聴機を仕掛けておいて、待たせている間の雑談から記事になるネタを拾う場合もあるそうです。なので、不用意な発言を聞かれないよう話さないのです。


「お待たせしました。では、よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 少しして記者さんがカメラマンの人を連れて入ってきました。何とか笑顔で返します。

 取材内容は前回と被る内容が多かったので、難なく答える事ができスムーズに終了しました。


 出版社を辞して、次の取材先に向かいます。脳力試験への出演で取材申し込みが増えたので、今日は何件か梯子する事になっています。


「質問が被ってたから楽でした」


「取材なんてそんなものよ。さあ、次に行くわよ!」


 この日、七件もの取材をこなしました。


 翌日。自宅のリビングで、私は両親の前に桶川さんと並んで座っています。今日は私が桶川プロで声優として正式に所属するための契約を結ぶ日です。由紀は学校に行っているのでバレる心配はありません。


「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。お嬢さんをスカウトしました桶川プロの、桶川京子と申します」


「事情は全て聞いています。娘の都合で挨拶に来れなかった事も」


 そう。桶川さんが挨拶に来れなかったのは、私の我が儘が原因です。なので、責められるべきは私なのです。


「ありがとうございます。お嬢さんの声優としての契約の件ですが・・・」


 桶川さんが鞄から書類を二部取り出し、一部をお父さんの前に、一部をお母さんの前に差し出します。


「その前に、遊に聞きたい事があります」


 お母さんが私を見据えます。その眼光は鋭く、まるで別人のようです。


「遊、声優は今までの物とは違うわよ。分かってるわね?」


 お母さんが念を押す理由はわかります。今までやってみた習い事と、声優業は全く違うのです。


「分かってるわ、今までの習い事は趣味で声優業は仕事。途中で投げ出す事は、多くの人達に迷惑をかける。私は、投げ出したりはしません」


 まぁ、今までの習い事も一応のきりがついた所で辞めているので、周囲に迷惑をかけた事はありません。でも、声優は中途半端に辞めたら影響が多すぎます。


「それが分かっていれば、言うことはありません。ね、あなた」


 お父さんは無言で頷きます。両親が認めてくれたので、桶川さんの表情に安堵の色が浮かびました。


「では、条件などの確認をお願いします」


 両親が提示された書面を読みます。事前に私も目を通しましたが、特段問題になるような内容は無かったと思います。

 ですが、それは世間知らずな中学生の私が見ての事。両親から見た場合、何か不都合があるかもしれません。


「別に異存は無いな」


「私も無いわ」


 両親が見ても問題ないようです。お母さんが見終わった契約書を桶川さんの前に置きました。


「では、署名捺印を・・・」


 お父さんは署名し、印鑑を押します。その契約書を桶川さんに渡すと、代わりに渡された桶川さんが署名捺印した契約書に署名捺印します。


「ありがとうございます。これでユウリちゃんは正式にわが社所属の声優となりました」


 お父さんは、署名捺印した契約書を封筒にしまい、お母さんに渡しました。


「これでお前はプロの声優だ。未成年だからとか、学生だからとかの甘えは許されない。頑張るんだぞ」


「この子は社会というものを知りません。よろしくお願いします」


 両親が揃って頭を下げます。私も慌てて頭を下げました。


「大事なお嬢さんをお預かりします。こちらこそ、よろしくお願いします」


 両親も了承してくれて、無事に契約は終了。こうして、私は桶川プロの声優となりました。


「高校には、遊から言うのよ。何か必要なら言いなさい」


 忘れていましたが、高校にバイトの申請しなくてはいけません。基本的にアルバイトは禁止なので、許可を得なくてはなりません。せっかく入った進学校、そんな事で退学になりたくありません。

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