第二百七十話 友子のチョコレート
何とかチョコレート大量生産も終わり、バレンタインがやって来ました。街にはどこか異様な雰囲気か漂い、見かける男性の目が血走っているもえな気がします。
「遊、おはよう」
「おはよう、ちゃんと用意してあるわよ」
会うなり期待に満ちた顔をしている友子にチョコレートを取り出して渡します。不安そうな顔をしていた友子は花が咲いたような笑顔となりました。
「ありがとう。遊のチョコレートは市販されてるどのチョコレートよりも美味しいから楽しみだわ!」
渡したチョコレートを大事そうにしまう友子。代わりに綺麗にラッピングされた箱を渡されました。
「はい、私からもチョコレート。遊みたいに上手く出来なかったけど勘弁ね」
「私のために作ってくれたんだから、ありがたくいただくわよ」
と言って受け取りましたが、すぐにその発言を後悔しました。私は今、受け取った物がチョコレートかどうか疑問に思っています。いえ、絶対にこれはチョコレートではないと断言出来ます。
何故ならば、普通チョコレートは箱の中で動いたりクルルルルとかシャーッとか鳴いたりしないからです。これ、私の思い込みでチョコレートは動いたり鳴いたりするのが常識という事はないわよね?
「友子、一体何を使って作ったの?」
出来れば聞きたくないのですが、中身の異常さを考えると聞く必要があります。何をどんな調理したらこのようなチョコレート(と言い張る物体)になるのでしょう。
「外国の友人がレア物の材料を送ってくれたから、奮発したのよ。色々と希少な原料も使っているわ」
いくらレアな原料と言っても、チョコレートの原料と常識で認識されている物を使った場合こうなるとは思えません。今でも箱は私の手の中でカタカタと動いています。
「えっと、確か材料の目録が・・・」
ポケットから取り出した紙片を見ながら、材料を読み上げる友子。その内容は想像の斜め上どころか、異世界の彼方の代物でした。
「プラチナカカオのパウダー、エンシェントドラゴンの逆鱗、鳳凰の風切り羽、人魚姫の涙、世界樹の新芽、雪帝虎の血・・・」
「それって、地球上のどこに行っても取れないものばかりよね、どこの異世界から取り寄せたのよ!」
どう考えても外国てはなくなくこことは異なる世界の産物です。友子には異世界通販のスキルでもあるのでしょうか。
「ラルク王国っていう無名な国だから、知名度が無いだけじゃないの?」
しらばっくれているのか、天然で言っているのか。どちらにしても追及するだけ無駄なようです。まだ朝だというのに、私のライフはもうゼロです。
「ちょっと苦めだけど、遊は大丈夫よね。」
「味見したの?と言うか食べられるの!」
食べても無事でいられる代物なのか疑問なのですが、友子が味見したということは食べられるのでしょうか。もし食べられるとしても、これを食べる気になるかと問われれば答えに窮します。
「失礼ね。味見もしないものをプレゼントするわけないでしょ」
そう言われても、100人中100人がそう思うと思います。箱の中で唸り威嚇してくるチョコレート(自称)が食べられる代物だと思う人は皆無でしょう。
「ありがとうね。家に帰ってからいただくわ」
怪しさ一万パーセントのチョコレートですが、友子の心の籠もったプレゼントです。鞄に入れて持ち帰ります。食べるのは家族に止められそうな気がしますが、今は考えない事にします。
鞄にチョコレート?を入れ、気を取り直して学校へ向かいました。到着した学校は異様な雰囲気に包まれていました。




