第二百六十三話 戦いは準備で大半が決まります
「お母さんただいま、ちょっと良いかしら?」
帰る早々お母さんに相談です。チョコレート作りの材料調達は毎年お母さんに頼っているので、増量が必要な事を出来るだけ早めに伝えなければいけません。
私ではカカオの輸入なんて伝がないので不可能なのです。産地だってガーナのどこかという事しか知りません。
「今年のチョコレートなんだけど・・について」
車の中での会話を伝え、作る量がかなり多くなった為カカオが大量に必要だと訴えました。
「私も出版社の人に配ろうかしら。どうせなら大量生産した方が効率的だわ」
出版社の人も芸能事務所ほどではなくても対応に苦労してるそうです。クリスマスやバレンタイン、人気キャラの誕生日には編集さんの表情が抜け落ちるのだとか。
一時間程で使う材料の量が決まりました。でも、結構な量になってしまいます。
これまでは個人輸入の枠内だったのですが、今年の量は商社かどこかに依頼しないと対応出来ないかもしれません。時間があまりありませんが、大丈夫でしょうか。
「海外の友人に直接頼むから多少増えても大丈夫よ、外交官特権で税金もかからないし。Cー4一機分位までなら問題ないって前に言われたもの」
Cー4とは米国ロッキード社の大型輸送機だと記憶しています。どう考えてもコンポジット4の方じゃないでしょう。この話の流れからは爆薬の話が出るはずが無いのですから。
「私にはわからないからお母さんに一任するわ」
「あらあら、遊ちゃんも覚えないとだめよ。人脈は役に立つんだから」
その言葉は否定しませんが、お母さんの人脈は物騒すぎます。たかだか一新人声優に軍用輸送機を自由に使える人間との人脈をどうしろと言うのでしょうか。
まあ、それを言ったらイラストレーターのお母さんに何故そんな人脈が、と突っ込まれてしまいますが。
「調理場所も保管場所も用意しておくわ。ああ、友人へのお礼にサイン色紙とチョコレートをお願いね」
「量が多いから家では作れないし助かるわ。サインは書いておくね」
チョコレートは一緒に作るので、作ってから一緒に渡してもらえば問題ありません。
「準備が揃う日がわかったら教えるから、学校休むのよ。そうしないと間に合わないわよ」
「私事で学校休むのは気が引けるけど、量があるから仕方ないわね」
仕事以外で学校を休みたくありませんが、他人任せにしたくないので仕方ありません。まあ、職場にも配るので仕事の一環と言えなくもないという事にしておきます。
話す場所をリビングに移し、更に細かくチョコレート作りの打ち合わせをします。量が桁違いに増えるので、今までと同じ作り方とはいかないでしょう。
「材料は去年と同じで良いかしら」
「砂糖黍じゃなく甜菜を使ったら甘味が違うかも・・が」
何事もそうですが、あれこれ言いながら計画を立てている時が一番楽しいのです。色々と話し合っていると由紀が部屋から降りてきました。
「あ、お姉ちゃんお帰りなさい。何を話してるの?」
「バレンタインのチョコレートよ。事務所や出版社に配るから大量に作る事になったの」
「私には特大のを頂戴ね!」
自分のチョコレートのキープ依頼をしてそのまま部屋に戻る由紀。あの子は市販のチョコレートを溶かして型に入れるだけなので、話し合いには参加しませんでした。
リハビリ兼ねた短編で平気だったので一昨日数話書いたのですが、昨日その代償が・・・
バレンタイン編終わったらまたお休みするかもしれません。




