第二百五十八話 盛り上がるクラスメート
「みんな~、クラスの方針を纏めるわよ!」
「「「おーっ!」」」
その後一致団結した皆により、久喜さんに対する方針が決定しました。
まず、明日の放課後まで一切噂の事を口にしない。放課後になったらクラス全員で久喜さんに真実を問う。ユウリちゃんのプライバシーを守るため、家族に対しても口外しない。
以上の3点が決定しました。無駄になるのは必定なのですが、盛り上がるクラスメート達に水を差すような真似はしません。
「ユウリちゃんのプライバシーを守るため、私達がユウリちゃんを独占するため、掟は必ず守るのよ!」
後半煩悩が漏れてます、漏れてますよ!
その後は普通に授業を受けて恙無く終了しました。友子と一緒に家路につきます。
「友子、明日朝に久喜さんを駅で捕まえて今日の事を話しておくわ」
「そうね、その方が良いわ。私も一緒に行くわよ」
友子に聞かれたくない話もするので、久喜さんと二人きりで話す必要があります。なので理由を付けて断ります。
「私一人の方が目立たないし都合が良いわ。友子は先に登校して待ってて」
「遊だって目立つわよ。銃弾回避事件で校内では有名人なのよ?」
そんな事件もありましたねぇ。思わず遠い目で空を見上げます。
見上げた空には星の屋根もないし、右のポケットに夢も左のポケットにチューインガムもありません。
「大丈夫よ。こうすれば目立たないわ」
気配を薄くして存在感を消していきます。今の私を明確に認識出来るのはお母さん位なものでしょう。由紀はまだまだ修行が足りません。
「凄い、遊が目の前にいるのに居ないみたい!」
私が居ることを確かめるようにペタペタと触る友子。その手が触られたくない場所に徐々に近づいているのは偶然でしょうか。
「ちょっ、いつまで、と言うか何処をさわってるのよ!」
「手を伸ばしたらここになっただけよ。気にしない、気にしない」
揉むように動く手を振り払って胸を手で隠します。時折発揮される信じられない力は何処からくるのでしょうか。
「とにかく、そういう訳だから明日は先に登校していてね」
残念そうに手を伸ばしたままの友子を放置して駅に走りました。私には百合の趣味はありません。
翌朝、早めに家を出て高校の最寄り駅前で網を張ります。自動販売機の影で気配を消し、改札を見張りました。
来ました。改札口を抜けて高校方面に歩く彼女を確認。気配を薄くしたまま後ろに回り込みます。
「久喜さん、おはよう」
「うわっ!あ、北本さん。おはよう」
いきなり声をかけられて驚いたものの、すぐに挨拶を返してくれました。
「話したい事があるのよ。少し遠回りしましょう」
腕をとり、1本離れた路地に誘い込みます。強引なお誘いに慌てる久喜さん。
「ちょっと、どうしたって言うのよ!」
人のいない路地裏で向き直り相対しました。さて、クラスで流れている噂を当人である久喜さんは知っているのでしょうか。




