第二百五十六話 気になる久喜さん
それから数日が経ち、久喜さんも問題なくクラスに溶け込んでいきました。漫画・アニメ・声優大好きっていう時点でうちのクラスに受け入れられない理由などありません。
「やったぱりユウリちゃんが一番よね」
「オラクル・ワールドの予告見た?知らなかったらユウリちゃんが声やってるって絶対にわからないわよ!」
大のユウリファンというだけで、彼女は長年の同士のようにクラスメートと話せるようになっていました。公式ホームページで書いてので知っていましたが、表向きの話だけではなく本当に私のファンだったようです。
「もう一度直接会いたいなぁ・・・」
「そ、そうね!」
「会ってみたいわね!」
良子の呟きに挙動不審に陥る女子二名。久喜さんと友子です。久喜さんはテレビ局で会ってるいし、友子は毎日会っているのです。
「友子、私今日は早引きするから」
「ああ、私も家の都合で早退するんだったわ」
友子に断り帰ろうとすると、久喜さんも帰り支度を始めました。これから収録する番組に共に出演するので、彼女もそろそろ帰らないと間に合いません。
「北本さん、駅まで一緒に行きましょう」
接点を持ちたくないので断りたいのですが、理由もなく断るのも不自然となります。なので不本意ながら一緒に帰る事になりました。
「北本さんは質問に来なかったわよね」
「あの人混みに突っ込む気はないわよ」
私は迫力満点な人混みに突入するつもりはないので、コミケやバーゲンに突入する世の女性方の気持ちはわかりません。
「私は早退が多いから浮くかと思ったけど、皆親切で良かったわ」
「そうね・・・」
この子相手に下手な事は言いたくなので、口数が少なくなるのは必然です。それでも気にせずに久喜さんは話しかけてきます。
「何より、ユウリちゃんのファンが多いのが嬉しいわ」
「親友の友子もファンみたいだし、確かに多いわね」
早く駅に着いて欲しい。というのに久喜さんが足を止めました。私の方を向くと、まじまじと顔を見つめてきます。
「どうしたの?」
「誰かに・・・北本さん誰かに似てるのよ。それが誰だか分からないのがもどかしくて」
久喜さんにはユウリとして週一か週二ペースで会っています。その影響でしょう。
「世の中には3人は似た人間が居るっていうし、深く考える事はないんじゃないの。あ、そろそろ時間が無くなるから私は行くわね」
今だ立ち止まっている久喜さんを残し駅に走ります。気が付かないとは思いますが、用心に越した事はありません。
と久喜さんを警戒してたのですが、事態は思わぬ方向に転がったのでした。
第百五十三話 あの娘とスキャンダルの「あの娘」はKUKIちゃんの事だったりします。




