第二百五十三話 転校生との関係
「・・・どこかで会った事ありませんか?」
「貴女とお会いした事は無いと思いますよ」
貴方とはしょっちゅう会ってますけどね。テレビ局で。と心の中で呟きため息をつきます。私は彼女を思い出しましたが、彼女は私が分からないようで安心しました。
「では課題を提出した者から終業だ。お姉さんを俺に紹介するのも忘れるなよ!」
「「「「絶対に嫌です!」」」」
全生徒一致した答えにまたしても崩れる先生。それを尻目に皆課題を教卓に積んでいきます。
「ねえねえ、どこから来たの?」
「家業って何をしてるの?」
「好きな声優さんは?」
久喜さんは課題を提出した生徒にあっという間に囲まれ、質問攻めにあっています。これは転校生の宿命てしょうから、頑張って乗り越えてほしいものです。
「罵って下さい!」
「踏んでください!」
「バカ!このヒールを履いてもらってからだろ!」
「このハンマーで殴って下さい!」
質問攻め・・・聞いていません。私は何も聞いていませんよ。
さて、今日は仕事があるので早く帰らなければなりません。私も教卓に課題を出して教室を出ます。
「遊、ちょっと待ってよ!」
「友子、転入生はいいの?」
他の生徒と同様に質問攻めに参加していた友子が走って来ました。
「質問は後でも出来るわ。それよりもオフの予定を教えて」
手帳をめくり今月の予定を教えます。友子にはフォローしてもらうので、これは必要な作業なのです。
予定を教えてから友子と別れ自宅に帰ると、桶川さんが迎えに来ていました。
「遊ちゃんお帰りなさい」
「いらっしゃい、桶川さん。すぐに着替えますね」
挨拶もそこそこに自室へと上がります。待たせてはわるいので、急いで支度をしましょう。
「何だか疲れてるみたいね。どうしたの?」
「ちょっと学校で・・・」
仕事へ向かう車の中、桶川さんが心配してくれましたが誤魔化す事にしました。別事務所の機密事項をペラペラと話す訳にはいきません。
私も秘密があるので、それを勝手にバラされたら嫌ですから。自分がされて嫌なことは他人にもしません。これ、基本です。
「今日の仕事は何でしたっけ」
「脳力試験の収録よ。ゲストはKUKI君だったわね」
よりによってKUKIがゲストです。これは何者かの悪意を感じます。と思っても顔には出さずに笑顔でお仕事をこなします。社会人なら個人の好き嫌いを仕事に持ち込んではいけません。
「あっ、ユウリさん。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」
局に入るなり件の方とバッタリと出会いました。ここまでかと言いたくなる程のテンプレ展開です。
「こちらこそよろしくお願いしますね」
内心を隠した私は、営業スマイルで対応しました。勿論スマイルは0円です。




