第二百四十九話 激闘、声優カルタ
「では読むわよ」
最初の1枚目をめくりました。書いてあったのは、マスクを被った男達が格闘を繰り広げるアニメで有名な台詞でした。
「屁の突っ張りはいらんとです!」
「はいっ!」
スパーンと擬音が入りそうな勢いで友子が札を取りました。反応速度で勝る筈のお母さんが出し抜かれています。
「友子、お手つきじゃない?」
友子が取った札は牛丼大好きなレスラーではなく、胸に7つの傷がある世紀末救世主でした。
「合ってるわよ。遊、置かれている絵札をよく見なさい」
友子に言われて絵札を見渡すと、超人レスラーの絵札はどこにもありませんでした。
「えっ・・・もしかして!」
次の札を見て絵札を探しましたが、セリフに合うキャラクターの絵札はこれまた存在しません。
「お姉ちゃん、これは同じキャラクターじゃなく同じ声優さんのキャラクターを取る声優カルタなのよ」
由紀の説明を聞き唖然とする大人組と私。業界人である桶川さんも知らなかったようです。
「それって、セリフからキャラクターを判断して声優さんを思いだし、その人がやったキャラクターを探さなくてはいけないって事だよね」
参加しなくて良かったとしみじみ呟く朝霞さん。それには私も同意見です。反射神経では勝てても、声優知識で二人に勝てるとは到底思えません。
「これはお手上げかな」
「この2人には勝てそうに無いわね」
両親も職業柄アニメには強い方ですが、この二人に勝てる程ではありません。それはさておき、とりあえず競技は続行いたします。
「俺は勇者なんかにならないよ~」
「はいっ!」
由紀が8枚の黄金の欠片や仮面を集めたり、風を操って海を爆走する少年の札をゲットしました。
「やるわね」
「例え相手が友子お姉ちゃんでも負けないわよ!」
瞳に炎を燃やし、スポコン路線に突入する2人。両親と桶川さんは半ば置き物と化しています。
「エ○スは、俺が助ける!」
龍の玉を集める物語で人造人間と結婚した彼の札が取られたかと思いきや。
「真実は、いつも1つ!」
水を被ると女になっちゃう格闘家に登場するお金命の次女の札が叩かれます。
由紀が取れば、友子が取り返す。正に一進一退の攻防が続きます。そんな中、これだけでは分からないのでは?と思われる札がありました。
「肉汁滴らせますよー!」
私の初主演作品にしてデビュー作、悪役令嬢になんかなりませんで主役のロザリンドちゃんが魔物の氾濫の時に言った台詞です。
たったそれだけのセリフにも関わらず、由紀と友子は即座に反応しました。2人の手が伸びましたが、札を押さえる事は出来ませんでした。
「お、お母さん!」
「可愛い愛娘の札だけは譲れないわよ」
私のもう一つの主演作品であるオラクルワールドの主人公が書かれた札を手にしたのはお母さんでした。
エブリスタでは平気だったけど、なろうではアウトかな?




