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第二十四話 両親へのカミングアウト

 そして放課後。学校が終わったら電話して欲しいと、桶川さんからメールがありました。途中まで一緒に帰る友子と別れ、すぐに電話しました。


「ユウリちゃん、昨日の反響凄いわよ!」


 桶川さんの嬉しそうな声が響きます。嬉しいのはわかりますが、もう少し声量を落としてもらいたいものです。


「私のクラスでも、何人かが話してました」


「問い合わせが多くてね。明日、取材が何件か入ってるから十時に来てね」


 用件を一方的に言うと、すぐに切られてしまいました。私は明日行けるとも行くとも言っていません。声優の都合も聞かずに一方的に予定を決めるのは、芸能界では普通の事なのでしょうか。


 家に帰り、リビングで寛いでいると由紀が帰ってきました。着替えもせずに、私が座るソファーの隣に腰を降ろします。


「昨日のテレビ、私のクラスで話題になってた!」


 由紀のクラスでは見た人が多かったようで、結構話題になっていたようです。私が口を挟む隙もない程に次々と言葉が口から吐き出されていきます。


「ユウリさんの声、役にピッタリだよねって、友達と盛り上がって・・・」


 私は由紀の学校の話を一時間以上聞かされました。その間、私からは一言も言葉を発していません。この子、こんなに話す子ではなかったと思ったのですが。


 話を聞いてるうちに夕食になり、食べ終わるとそれぞれの部屋に戻りました。

 普段ならば私も自分の部屋に戻るのですが、今日は由紀が二階に上がったのを確認してから両親の部屋に行きます。


「遊、どうしたの?珍しいわね」


 私は普段、両親の部屋に入りません。仕事部屋も兼ねているため、話があるときはリビングにいる時に話します。なので、書斎に入ってきた私にお母さんは怪訝そうな顔をしています。


「ちょっと、由紀に聞かれたくなかったから」


 両親は渋い顔をしました。家族で隠し事はしないというのが両親のモットーです。なので、由紀だけに隠し事をすると言った私に良い感情は沸かないのでしょう。


「それは、由紀には内緒にしてほしいと言うことか?」


「そう。あの子はすぐに舞い上がるから」


 私が声優だなんて知ったら、どうなることやら。最低でも一晩は演じる役を演らされて、アフレコの様子を根掘り葉掘り聞き出すでしょう。

 それが毎週末に繰り返される可能性があります。むしろ、そうならない可能性の方が低いでしょう。


「とりあえず話を聞くわ。由紀に言うかどうかはそれからね」


 無条件で内緒にはしてくれないようです。教育方針に真っ向から反対しているので、それが当たり前です。


「実は・・・私、仕事をしたいの」


 両親はいきなり仕事をすると言われて面食らっています。私はまだ未成年で、もうすぐ終わるとはいえ義務教育を受けている最中なのですから無理もありません。


「どんな仕事だ?」


「・・・声優」


「・・・」


「・・・」


 両親は、驚いて声も出ないようです。アニメが好きな由紀が言い出すならまだしも、アニメなんか全然関心が無かった私が言うのですから当然と言えば当然です。


「急な代役を頼まれて・・・二度収録もしたの」


「もうデビューしたって事?」


「うん。テレビにも出たわ」


 またもや驚く両親。私は眼鏡を外し、三つ編みを解きます。お化粧はしていませんが、両親ならばこれでわかってくれるでしょう。


「・・・こりゃ驚いた!」


「遊がユウリだったの!」


「黙っていてご免なさい。いきなりだったし、心の整理がつかなくて」


 お母さんはにっこりと笑うと、私を抱きしめてくれました。いきなりの行動に、私は硬直します。


「いいのよ。それより、遊がテレビに出るなんて凄いわね。頑張ってね」


「これから大変だと思うが、しっかりな」


 両親は何も聞かずに賛成してくれました。ありがたいのですが、こんなに簡単で良いのかとも思ってしまいます。


「由紀に黙っててって言った理由、判るでしょ?」


 両親は顔を見合せ苦笑いしました。由紀がとりそうな行動を想像したようです。


「そうねぇ」


「おおはしゃぎするな。遊は色々やらされそうだ」


 深いため息をつきつつ答える両親。流石に娘の事はよくわかっています。


「黙ってるのも仕方ないな」


「ええ。当面言わない方が良いかも知れないわね」


 こうして、私がユウリとして活動することは承認されました。

 桶川さんにそのことをメールすると、月曜日の昼に桶川さんが家に来ることになりました。

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