第二百三十五話 子供達との団欒
「おいしい!」
「あま~い!」
パクパクと笑顔で食べる子供達。お皿はあっという間に空になりました。勿論、私と桶川さんもいただきました。
「「「ごちそうさまでした!」」」
全員で声を合わせる子供達。先程のお礼といい、よく躾けられています。
「ゆ、ユウリさん、一つお願いが・・・」
「あら、なにかしら?」
モジモジと恥ずかしそうな草加さん。今日はクリスマスイブです。大抵のお願いは聞こうと思います。
「一緒に歌ってもらえませんか!」
「もちろん構わないわ。皆も一緒にね」
何かと思えば、歌のリクエストでした。当然快諾し、職員さんにレコードをかけて貰って歌を歌います。
「やっぱりレコードは良いわね。反対押しきって出した甲斐があったわ」
「CDでは出せない音の深みがありますよね」
レコード談義で意気投合する職員さんと桶川さん。今時レコードも出すって聞いて耳を疑いましたが、今も愛好する人は一定数居てぷれいの針もまだ生産されているそうです。
子供達と数曲歌って歌はおしまいになりました。続けて歌うと喉を痛めてしまうので、あまり長くは歌えません。
「次はこれやろう!」
小さな女の子がカルタを持ってきました。クリスマスイブにカルタというのもミスマッチですが、皆で遊べるという点では良い選択です。
「あっ、私の秘蔵コレクションを!」
タイトルを見ると悪なりカルタスペシャルバージョンと書いてありました。いつの間にやらそんなグッズが出ていたようです。
主演なのに知らないのかと突っ込まれそうですが、グッズも沢山出ていて全ては把握できません。
「ツンデレ美幼女ミル」
「はいっ!」
私が途中まで読み上げた札を、素早く草加さんが取りました。読んだ殆どの札は草加さんが確保しており、一度たりとも札の句を最後まで読めていません。
「だ・・・」
「はいっ!」
1文字読んだ瞬間、札は確保されました。草加さんからは少し離れた場所に配置されていた札でしたが、多少の距離など草加さんには問題にならなかったようです。
「姉ちゃん、はえぇよ!」
「この札を他人に渡す訳にはいかないわ!」
そう言ってかざされたのは、主人公であるロザリンドちゃんの札です。ただし、描かれているのはアニメで描かれているロザリンドちゃんの姿ではありませんでした。
今の私の姿を写真にしたもの。つまり、ロザリンドちゃんのコスプレをした私が写っているのです。
これが通常と違うスペシャルバージョン理由で普通の悪なりカルタはアニメの絵が書かれていますが、このバージョンは声を担当した声優がキャラクターに扮した写真が使われていました。
「きゅ・・・」
「はいっ!」
またもや1文字で草加さんが奪取しました。その札には巫女服を着て狐耳を生やしと九本の尻尾を装備した私が描かれています。
「ユウリさんの九尾の狐バージョン、誰にも渡してなるものですか!」
快気炎をあげる草加さん。子供達が引いてまするので自重してほしい所ですが、子供達も既に諦めきった顔をしています。
「姉ちゃん、ユウリさんが呆れてるぞ」
「はっ、す、すいません!」
顔を真っ赤にして頭を何度も下げる草加さん。競技に熱中する余り私が居ることがすっかりと頭から抜けていたようです。
「気にしないで下さい。それだけ私に好意をもってくれているということなんですから」
私から直々の許しを得た草加さんは快進撃を続け、殆ど彼女の独壇場となるのでした。




