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第二百三十一話 イブのイベント

 数日後、仕事が早くはけた日に再び孤児院を訪れました。目的は草加さんとのお喋り・・・と見せかけた孤児院の軽い調査です。


「あら、来てくれたのね。あまりお構い出来ないけど良いかしら?」


「ええ、少しお喋りしたいだけだから」


 前回も通されたリビングでお茶を飲みながら他愛のない話をします。と言っても、殆どがユウリ関連の話で私は聞いている時間が長かったのですが。


 それでも合間に聞きたかった情報はあらかた聞くことができました。人数的にはほぼ想定通りの子供が保護されてあるようです。


「あ、お姉さん、いらっしゃい!」


「お邪魔してます」


 この間見送ってくれた男の子が学校から帰ってきました。ちゃんと約束を守り遊びに来たので、男の子は嬉しそうです。


「もう夕方だし、そろそろ帰るわ」


「もう少し話したいけど、夕食の支度もあるしね。遊さん、また来て下さいね」


「勿論よ。次は来年になりそうだけど」


 本当は年内にもう一度来るつもりですが、それは言えません。今回は草加さんに見送られ孤児院を出ました。

 桶川さんに孤児院の情報を電話で話し、必要な物の調達を桶川さんに任せます。


 そして時は流れてクリスマスイブになりました。私は今公爵令嬢らしくドレスに身を包み、イベントの開始を待っています。

 隣には朝霞さんも待機していますがその頭にはケモミミが鎮座し、お尻には尻尾が装着されています。


「何だか緊張します」


「ユウリちゃんも何度かイベントやってるんだし、大丈夫。いつもの通りにね。」


 確かにいくつかのイベントは経験しましたが、早々慣れるものではありません。元々私はごく普通の女子高生だったのです。


「ユウリちゃん、普通と言うのはかなり無理があると思うよ」


「朝霞さん、今心を読みました?」


「いや、小さな声で口に出してたから」


 どうやら私は想像以上に緊張しているようです。それを解す為に掌に鬱という字を書いて飲み込みました。


「ユウリちゃん、そこは人と書いて飲むべきでは?何故に鬱を選択したの?」


「人と同じでは詰まらないからです。それと、複雑な字を書けば気が紛れるかと思いました」


「字のチョイスはどうかと思うけど、その様子だと効果があったみたいだね。それじゃあ先に出るよ、舞台で待ってるからね」


 丁度開演時間となっとので、朝霞さんは舞台に飛び出していきました。すぐに朝霞さんに呼ばれ、私も舞台に出る予定になっています。


「皆さんこんにちは、悪なりのクリスマスイベントへようこそ!」


 開演を待っていた観客席から声援と拍手が巻き起こります。そして私も舞台に出る時が訪れました。


「あれ、ロザリンドが来ていると聞いたのに何処に居るのかな?」


 さあ、出番です。私は北本遊でも声優のユウリでもありません。クリスティア王国の公爵家令嬢、ロザリンド・ローゼンベルクになるのです。


「ディルク様、貴方のロザリンドはここにいます!」


 舞台に飛び出すと同時にディルク様に抱きつきます。ユウリが朝霞さんに抱きつくのは恥ずかしいですが、今の私はロザリンド・ローゼンベルクです。


「ロザリンド、大勢の皆が見ているから少しは自重して!」


「十分に自重してますよ。していなかったら私のゴールデンフィンガーが火を吹いてます」


 朝霞さんとのトークが進み、やがて他の声優陣の方々も登場します。一部役柄と姿が乖離している声優さんが居ますが、それはそうとしてイベントはもりあがっていきました。


 成人している声優さんに掌サイズの精霊になれなんて無茶振りしても無理ですから。

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