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第二十三話 事実は小説よりも奇なり

 CMが終わり、そろそろ最終問題。両親に止められた由紀は、私の意識が落ちる寸前で離してくれました。

 アニメか声優が絡んだ由紀は、普段の三倍の力と早さを発揮できるようです。


 テレビでは、優勝争いが最後の最後までもつれこんでいました。まるで作られたようなレースに、三人は釘付けになっています。


 そして決着。結果を編集されるなんて事もなく、ユウリの優勝で幕を閉じました。


「優勝したな。見た目若そうだけど、いくつなんだろう?」


「声は大人びていたわね」


「お姉ちゃんと同い年みたいよ、ほら」


 由紀は先程の雑誌を見せました。インタビューの中で今年受験だと答えていたので、年齢もわかります。


「遊と同い年で、もう仕事してるのか。しっかりした子だな」


「そうね、遊も早く自分に合ったものを探さないとね」


 両親はそう言うと、仕事に戻っていきました。あれも私なんですけど。今は言わないですけれどね。


「あの声でロザリンド役やってくれるんだ。楽しみだなぁ」


 どうやら、由紀の持つロザリンドのイメージと、私の声は合っているようです。


「イメージに合っていた?」


「うん!お姉ちゃんもそう思うでしょ?」


 返されると、答え辛い質問ですね。自分で自分の声に合格出すなんて出来ません。


「私はわからないわ。由紀程入れ込んでないし、絵も付いてないと想像できないわ」


 それも偽りのない感想です。私がその小説を読んだのはアフレコをやった当日ですし、絵に合わせて声を入れましたが完成した物は見ていません。


「そっか、お姉ちゃんは初心者だから仕方ないか。もっと精進しなくちゃね」


 何を精進しろと言うのでしょう。それが何であれ、出来れば遠慮したいところです。精神的に疲れた私は、早々に就寝しました。


 翌朝。学校に行くと、数人が昨日の脳力試験の話をしていました。教室に入った私を見ると、話に混ぜようと手を振っています。


「北本さん、昨日の脳力試験見た?昨日優勝した子、可愛かったわね!」


「新人の声優でしょ?」


「春からのアニメでデビューみたいよ」


 自分の噂話を聞くのがこんなに恥ずかしいと思いませんでした。でも、概ね評判は悪くないようなのて安心しました。


「遊、昨日の脳力試験を見た?」


 自分から話さない私に話しかけてきたのは、私の数少ない友人の一人で岡部友子。セミロングの黒髪で、ルックスは良いのですが、由紀同様アニメや漫画、声優さんが大好きという残念少女です。


 オタク系の話も平気で出来るので男子に結構人気があり、何で私の友人をやっているかは大いなる謎です。


「昨日は面白かったわね、最後までもつれて。優勝した声優の人も可愛かったし、あれはやらせじゃないかな」


 確かに、優勝争いが最後までもつれ勝ったのは番宣に来た新人声優。出来すぎだと自分でも思うけど、あれは真剣勝負の結果なのです。でも、それを言うわけにはいきません。


「そうね、ちょっと出来すぎよね」


 不自然に思われないよう無難に答えます。すると、その話をしていた別の数人がこちらに合流してきました。


「北本さんも見たの?あれは出来すぎよね」


「しかも、司会の朝霞さんが相手役やるアニメの番宣で来たのよね?」


「パズルのピースは填まったって感じ?」


 そう思われても仕方ありませんが、実際はユウリがあの番組に出ることが決まったのは収録の数分前。出来レースを仕組む暇はとてもありませんでした。


 しかし、視聴者は勿論あの収録に見学に来ていた人達さえそんな事は知りません。経過と結果だけ見れば、作られたシナリオによる出来レースと思われるのも仕方ないでしょう。


 隠謀論とは、こうして出来ていくのですね。教科書では学べない事を実地で学べた朝でした。

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