第二百二十三話 いつもの風景
「問題、今の俺のような状態を例えた言葉。両手に何?」
「彼岸花!」
朝霞さんの問いに即座に答えました。笑いが起きると予想していたのですが、周囲の皆は戸惑った様子です。
「何故に花ではなく彼岸花?」
「私も桶川さんも、見た目はいいけど中身には問題ありだからです!」
きっぱりと言いきると同時に大爆笑が起きました。品種を特定した理由に納得してもらえたようです。
「ちょっと、ユウリちゃんに問題あるのはわかるけど私はまともよ?」
「ハンドル握ると人が変わりますよね。2度も大暴走しておいて反論出来ます?」
まともな人は暴走して長野や茨城まで走ったりしません。桶川さんは反論出来ずに悔しそうです。
「ぐっ、それを言われると・・・」
「はっはっは、朝霞さんもユウリちゃんも楽しいねぇ。やはり声優よりタレントが向いてるよ」
笑いながらやってきたのは、この番組のプロデューサーさんです。視聴率が好調なこの番組を手掛けた人なので局内での地位は高いそうなのですが、偉ぶらない気さくな良い人です。
「ユウリちゃん、タレントに転向しない?君ならすぐに冠番組を持てるよ」
「評価してくださるのは嬉しいのですが、私は声優を続けたいと思っていますので」
活動して1年足らずの新人を見込んでくれたものです。そもそも、ここまで知名度が上がった原因はプロデューサーさんがこの番組に起用してくれたからだと思うのですが。
「まあ、このまま出演してくれれば俺としては文句ないんだけどな。来年もよろしく頼むよ、良いお年を」
手を振って歩いていくプロデューサーさん。彼も忙しい筈なのですが、態々と挨拶に来てくれたようです。
「ユウリちゃん、そろそろ行かないと。朝霞君も、早く!」
「遅れたらまずいな。桶川さん、ユウリちゃん、一緒させてもらうよ。それでは失礼します」
共演者やスタッフさんに断りスタジオを出ました。出る間際に「リア充爆発しろ!」との声が聞こえたのは気のせいということにしておきます。
「はい、そこでユウリちゃん出て。2人で少しトークね」
無事にイベント会場につき、リハーサルを進行中です。トークはフリーが多いし、大体の流れを掴むだけだから難しいものはありません。
「そこでプレゼント抽選ね。引くのは各自1回で」
恙無くリハーサルは進み、無事に終了しました。殆どフリートークなのはイベント進行の怠慢だと感じたのは私だけでしょうか。




