第二百二十話 日常への帰還
「ただいま、今日も疲れたわ」
車を降りて新幹線で帰った私達は、東京で報道陣の待ち伏せを食らいました。命拾いし気が抜けた私は、変装もせずに新幹線に乗っていました。
それに気付いた乗客がツイッターに書いて、それを見た報道陣が張っていたのです。
車内でそれに気付けた私は東京に着く前にお手洗いで軽く変装し、離れた車両まで移動してから降りました。
気配を殺す技能も使い、マスコミに捕まる事なく新幹線乗り場から離脱する事に成功しました。事務所は完全に包囲されているらしいし、軽い変装でもバレないと分かったので電車を乗り継いで帰宅し今に至ります。
「お帰りなさい。今日はどこまで行ってきたの?」
前回の件で被害を体験したお母さんが迎えてくれました。真っ直ぐ帰れなかった事を言う前に寄り道先を聞いてきます。
「今回は桶川さんの責任じゃなかったんだけどね」
もちろん運転手さんの責任でもありません。誰かは知らない幽霊が悪いのです。
「これは・・・小田原ね。お疲れ様でした」
土産の内容から旅行先を推察したお母さん。干物と蒲鉾は明日の朝食になりそうです。
夕食を食べてゆっくりとお風呂に入ります。部屋で台本を読んでいたらお母さんが麦茶を持ってきてくれました。
あの時、気付くのが遅かったら私達は何処に連れていかれたのでしょう。無事に日常へと帰ってこれた事を実感し、少し涙ぐんでしまったのでした。




