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第二十一話 由紀と雑誌

 そして翌朝。由紀が化粧の事を追及してきたけど、軽くかわすことができました。両親も私が化粧をしたと聞いて興味を持ったようだったけど、敢えて無視をしました。更なる追及を防ぐため、早めに学校へ。


 授業は何事もなく終わり、放課後に。学校を終えた私は、一度家に帰り本屋に行ってみました。インタビュー記事が載った雑誌は平積みになっていて、目立つ位置に積んであります。

 一冊を手に取り、パラパラとめくります。私の記事を見つけて見てみました。


 結構大きな写真入りで載っていました。反射的にページを閉じ、本を戻します。乱れた呼吸を整えると雑誌をそっと置きました。


 結構、いえ、かなり恥ずかしい。恐らく、今の私は耳まで真っ赤になっているでしょう。こんな所を知り合いに見られなくて本当に良かったと思いました。


「お姉ちゃん、どうしたの?」


 突然の声にビックリし振り向くと、由紀が立っていました。写真の羞恥で、周囲への警戒が疎かになっていたようです。


「由紀・・・脅かさないでよ」


 心臓が鼻から飛び出るかと思ったわ。えっ、口からじゃないかって?鼻と口は繋がってるんだから、気にしてはいけません。


「普通に声かけただけだよ?」


 由紀は私のところに来ると、問題の雑誌を手に取ります。私は雑誌から逃げるように数歩後退りました。


「私はこれを買いに来たんだけど、お姉ちゃんは?」


 言い訳を考えますが、咄嗟には上手い内容が思い浮かびません。こんな所で由紀に会うなんて想定外です。

 ここはアニメ・声優関連のコーナーなので、下手な言い訳はできません。思い浮かんだ中で、一番無難と思われる言い訳を使いましょう。


「少しはこういうのも見てみようかと思って」


 泥沼にはまりそうな気もしますが、このコーナーの前に立っていた以上アニメと無関係な言い訳なんて無理がありすぎます。しかも、雑誌を見ていた所を由紀に見られていた可能性もあるのです。


 言い訳を聞いたとたん、由紀は嬉しそうに顔を輝かせました。少し後悔しましたが他に良い言い訳が無かった以上、あれがベターな対応だった筈です。


「本当、お姉ちゃん、帰ったらこの雑誌一緒に見ようね」


 雑誌を持ち、嬉々としてレジに向かう由紀。一緒に見るのは苦痛だけど、あの子の嬉しそうな顔を見たら嫌とも言えません。出来れば私の記事だけは勘弁してほしいけど、無理でしょうね。


「お姉ちゃんお待たせ。早く帰ろうよ」


 浮かれた声で私を呼ぶ由紀。そうですか、そんなに楽しみですか。はしゃぎながら歩く由紀と対照的に、私は重い足取りで家へと歩きます。


「お姉ちゃん、早く見ようよ」


 先にリビングに入った由紀がせかします。しかし、諦めの悪い私は時間稼ぎを実行しました。


「その前に、制服着替えてきなさい。シワになるわよ」


 時間稼ぎとはいえ、言った事は正論なので由紀は渋々着替えに部屋へ向かいました。

 時間稼ぎしても意味ないですけれどね。わかっちゃいるけどやめられない。

 どこかで聞いたことのあるようなフレーズが頭に浮かびます。


「着替えて来たよ!」


 コント番組の早着替えかと思いたくなる程の早さで着替えてきた由紀は、ソファーに座り隣に座るようにせかします。私は二人分のコーヒーを入れて、由紀の隣に腰かけました。


 パラパラと解説しながらページをめくる由紀。結構先輩声優さんの事がわかったので、これはありがたかったかもしれません。


 そして、もうすぐ私の記事です。覚悟をしたつもりでしたが、身内と共に私の記事を見るなんてハードルが高すぎます。もっとも、由紀はユウリが私だなんて夢にも思わないでしょう。


「あ、ちょっとトイレ。一人で見ていて」


 私はトイレに駆け込みました。もちろん、私の記事を見るのを回避するためです。

 私の記事を見終わっている事を願って、般若心経を唱える事十回。さすがに見終わってるだろうとリビングに戻りました。


「あ、遅かったね。続き見よ」


 我が妹様は、律儀にも先に進まず待っていました。般若心経ではなく、コーランにするべきでしたか。お釈迦様には私の願いが届かなかったようです。

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