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内緒 二百二話 知ってる二人と知らない一人

「これ全部出てきた場所は違うけど、内容はほぼ同じだから」


 見たところかなりの量の書類なのですが、差出人が違って中身が同じとはどんな内容なのでしょうか。書類の山から一枚差し出されたので内容を読んでみました。


「これって・・・」


「謎の声優Xの問い合わせね」


 その書類は、某テレビ局から出された問い合わせでした。オラクル・ワールドの主人公役に心当たりはないかという内容です。


 桶川さんの許可を得て違う書類を見ると、芸能事務所から来たもので内容は同じでした。ざっと捲って目を通すと、出所こそ違えど内容は殆んど同じです。


「友子、業界でも手掛かりすら掴んでないのよ。素人が探すのは無理よ」


「だからやりがいがあるんじゃないの。絶対に探し出すわ!」


 止めても友子は決意を新たに意気込みます。その声優Xが目の前にいるのに真剣な表情で新たに決意表明をする友子は、どこか滑稽に見えてしまいます。

 あっ、桶川さん笑うの堪えています。友子は気付いていませんが、肩が微妙に上下しているのが私には見てとれました。


「手助けはしないけど応援するわ。友子、頑張ってね」


「ありがとう、遊。見付けたら一番に報告するわ!」


 哀れな友子を見かねて、応援すると言ってしまいました。それを見た桶川さんの我慢が限界を越えて爆笑そうです。


「友子、ユウリになるからちょっと待ってて。桶川さん、メイクお願いします」


 臨界点を越えそうな桶川さんを救うべく部屋のドアを開けると、桶川さんは無言で付いてきました。言葉も喋れないくらいピンチだったんですね。


 メイク室に入り鍵を掛けた途端、我慢の限界を越えた桶川さんは吹き出しました。


「ユ、ユウリちゃんも人が悪いわ。よくまあ平気でああ言えるわね」


「秘密を守るためには当然でしょ?演技も勉強したからあの位は朝飯前よ」


我慢する気を無くした桶川さんは、お腹を抱えて笑っています。そんな桶川さんを無視してユウリにチェンジしました。


「いつまでも笑ってないで、戻りましょう」


 いまだ笑いすぎで苦しそうな桶川さんを戻るように促します。本来来た目的のイベントの打ち合わせをしなくてはなりません。

 何とか平静を取り戻した桶川さんを連れて社長室に戻ると、待ちくたびれた友子は携帯で動画を見ていました。


「と~も~こ~」


「痛いっ!ちょっと、痛いわよ、洒落にならないってば!」


 後ろから手を回し、友子のこめかみを拳でグリグリと挟みます。手加減は心持ち少なめにしているので、悲鳴は半ば本物でしょう。


「その動画、人前で見ちゃ駄目って言わなかったかしら?」


「ここなら誰も居ないじゃない、セーフよセーフ!」


 半泣きになりながら言い訳する友子。グリグリはもちろん続行中で、少し手加減の割合を減らしてあげました。


「いつ誰が入ってくるか分からないのよ。今入ってきたのが私じゃなかったらどうなっていたかしら?」


「・・・ごめんなさい、気を付けます」


 自分の迂闊さを悟ったのか、素直に謝りました。私も鬼ではないので、反省する友子から拳を離して席につきました。

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