二百話 友子のバイト申請
「ここはこうした方が・・・」
「この方が面白そうよ!」
女三人、あれこれと言いながら歌を考えます。たまにはこういうのも面白いものです。
「ふう、こんなものかしら。遊、適当に曲を付けてくれる?」
「いきなりそんな事を言われて出来る筈無いでしょ?」
即興で曲を作れとか、素人に無茶を言い過ぎです。と言いつつもギターを弾きながら歌います。歌詞を考えながら曲も考えていたのです。何とか歌い終わり、二人から拍手を貰いました。
「遊、もう一度お願い。録画したいわ」
「お姉ちゃん、私も撮りたい。出来ればユウリさんの姿で!」
「歌うのは良いけど、格好はこのままね。防犯ビデオに残るでしょ?」
いちいち全ての映像をチェックしているとは思いませんが、用心するに越したことはありません。再び歌い、2人が携帯で録画しました。
「これ、ネットにあげたり他人に見せちゃダメよ」
「もちろん、誰にも見せないわ」
「お母さんとお父さんには良いわよね、お姉ちゃん」
「それは構わないわよ」
身内ならば構わないだろうと許可を出しました。そんなこんなしてきりも良いのでカラオケボックスから出ます。
「ちょっと早いけど帰りましょうか」
明日からまた仕事なのです。遅く帰って明日の仕事に支障を来すようなことだけはしたくありません。
翌朝、学校に行った私と友子は教室には行かず校長室へと直行しました。私だけでなく友子も桶川プロで仕事をする事になるので、その許可を貰わなければならないのです。
「岡部さんも休むと?」
「北本さんは仕事でしたが、あなたにもそれなりの理由がおありですか?」
公休以前にバイトの許可を取らなければならないので、どこで働く事になるのかを説明します。
「私も桶川プロで仕事する事になりまして。内臓ですけど」
「というと、あのスペース鎧武者ですかっ!」
友子の発言に対し、何の内臓かを即座に答える校長先生。何であれだけで正解できるのでしょうか。
「成り行きで私と遊がやるんです。今日もこの後打ち合わせで、イベント終了までやる予定です」
イベント終了までと友子は言いましたが、あの桶川さんがそれで済ませるとは思えません。まあ、今は言わないでおきます。
「そういう事なら、イベントの優待券二枚で手を打ちましょう」
「交渉成立ですね」
校長先生と友子は固い握手をかわしました。教育者ともあろう者がそれで良いのでしょうか?ああ、今更な話ですね。
「よし、これで大っぴらに学校休めるわ。行くわよ、遊!」
「友子、そんなに急がなくても」
打ち合わせは昼からなので、まだ時間に余裕があります。しかし、そんな事は友子の頭の中には無いようで、私は手を引かれるままに学校を後にするのでした。




