第百九十九話 歌を作ろう
そして一時間半が経過。私達は劇場版悪なりを楽しみ、劇場を後にしました。
「遊、由紀ちゃん、次に行くわよ!」
「次ってどこよ?私聞いてないわ!」
映画を見に行く約束はしていましたが、その後の事は何も計画していませんでした。なので次と言われても、私には何が何だかわかりません。
「カラオケよ。遊の歌声を満足するまで聞かせてもらうわよ」
「・・・採点機能をオフにするならいいわよ」
あの騒動はカラオケの採点が発端でした。もう二度とあんな騒動は御免です。
「何度聞いても遊の歌声は最高ね」
「お姉ちゃん、次はこの曲を!」
「ちょっと休憩させてね」
カラオケボックスに入ってから、ひたすら歌わされていました。そろそろ限界なので、歌うのを中断して頼んだ軽食を摘まみます。
「遊、ロザリンドちゃんのキャラクターソングはあるけど、ナビィのは無いの?」
「まだ放送もされていないアニメなのよ、有るわけないじゃない」
友子の質問に呆れながら返事を返します。まだ放映もされていないアニメのキャラクターソングなんて、作成されている筈がありません。
「お姉ちゃん、アニメ制作前から作る場合もあるわよ」
由紀が言うには、大手が手掛けるヒット漫画のアニメ化等の場合キャラクターソング等を事前に作成する事もあるそうです。
「ねえ、私達で考えてみない?」
「面白そう。ここには楽器もあるし」
友子と由紀がとんでもない事を言い出しました。何故かこのカラオケボックス、ギターや木琴、竪琴にリュートまで置いてあるのです。噂では、特別室にはパイプオルガンがあるとかないとか。
「それはいいけど、二人共楽器演奏出来るの?」
「出来る訳ないでしょ」
「それはお姉ちゃんが担当と言うことで」
友子、胸を張って言う事ではないと思うの。由紀、他力本願は良くないわよ。
「で、どんな歌詞がいいかしら?」
主人公との掛け合い漫才が多いキャラなので、面白い歌詞が似合うと思います。
「「それもお任せで」」
思わず椅子からずり落ちました。曲も歌詞も私任せって、二人は何を担当するつもりなのでしょう。
「ナビィはアニメのオリキャラだから、どんな役か知らないのよ」
「だから、それを知っている遊に全部任せるわ」
そうでした。私のやるナビィは原作に居ない、アニメのオリジナルキャラクターなのです。なので、二人ともどんなキャラでどんな立場か全く知りません。
それはナビィというキャラクターの印象を声を演じる私が決めるという事であり、物語を左右する重大な事柄でもあります。
大袈裟に聞こえるかもしれませんが、同じセリフでも口調次第でイメージは全く変わってしまいます。
「そうね。私の思うナビィの感じだと・・・」
世界を救うためやってくる異世界人を張り切ってサポートしようと思ったら、本人全くヤル気なし。メインクエストを全くやらず、かと言って生産活動もあまりやらないマイペースな主人公にいつも文句を言うけどやる気が空回りしている残念な子。
そんなナビィを私なりに思い、歌詞を紙に書き出します。




