第百九十三話 事件解決
「遊、例の事件だけど解決したわよ」
つけたままになっていたテレビを見てみると、スーツを着た男性の会見風景が映し出されていました。
「・・・我々警察は一般市民を狙った犯行を憂慮し、治安を破壊する武器流通ルートを壊滅させるため、指定暴力団○○組を一斉に捜索、その組織を壊滅させました。その過程にて大量の余罪が発覚し、関連する捜査は現在も続行しております」
かなり大きな暴力団を丸ごと一つ壊滅させたみたいです。カラオケで高得点を出した女子高生がテレビ出演に誘われただけの話が、ここまで大事になると誰が予想出来たでしょう。
「残党も残さず逮捕してるから、もう安心していいわよ。私の友人達も協力してるし」
笑顔のお母さん。その友人達の素性、知りたいけど知りたくないです。どう考えても、普通に暮らしていたら縁も所縁も持てないような人達なのでしょう。
「ありがとう、お母さん。色々と動いてくれたんでしょう?」
「母親が娘のために動くのは当たり前よ。着替えてきなさい」
何事もなかったかのようにキッチンへ向かうお母さん。赤い広場のある国や納豆に似た名前の条約機構の情報部を動かすのは当たり前に出来る事なのでしょうか。
呆れながらも部屋に行き着替えます。着替えてリビングに戻ると、由紀が座っていました。
「お姉ちゃんお帰りなさい。校長先生に事件の事を聴かれてたんでしょ」
「違うわよ、それはすぐに済んだの。その後オラクルワールドの主人公について尋問されてたのよ」
普通、そちらに関して聞かれたと思うわよね。校長先生と教頭先生、あれさえ無ければ本当に尊敬出来るのに。
「そっかぁ。でも、お姉ちゃんも知らないのよね?」
探るような目で見る由紀。この子も謎の主人公の正体を知りたがっているので、機会があると質問してきます。
「ええ。知ってるのは本人と監督だけじゃない?朝霞さんも春日部さんも知らないって言ってたわ」
完璧なポーカーフェイスを保ちつつ答えます。嘘をつくのにも随分と慣れたし、芝居をかじった経験も活きています。
「わかったら教えてね、絶対よ!」
「監督の許可が降りたらね。一応守秘義務があるのだから」
不満そうに口を尖らせる由紀。でも、これは社会人としての常識であり守らなければならない義務なのです。例え相手が可愛い妹でも、秘密を共有出来る親友であろうともそれを崩すつもりはありません。
「話は変わるけど、お姉ちゃんの事件、全国規模になったわね」
「ちょっ、私が犯人みたいな言い方しないでよ。大事になったのは認めるけど」
武器を供給したのが全国規模の暴力団で、全ての事務所を一斉に捜索したから日本中で大捕物が展開されました。きっかけはいたいけな女子高生一人に対する拉致未遂。それがこんな大事件になるとはねぇ。
・・・そこ、「いたいけな女子高生って誰?」なんて言わないように!




