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第十九話 二度目のアフレコ

 ベテラン揃いの収録にアクシデントなど起ころう筈もなく、何事もなく収録は終わりました。私も何とかNGを出すことなく乗り切る事が出来ました。


「今日も打ち上げ行くか!」


「「「おーっ!」」」


 スタッフさんも声優の皆さんも、すでに飲みにいく気満々です。どこの収録現場でもこんな陽気な雰囲気なのでしょうか。

 私も参加を求められているのはわかりますが、明日も学校があるので遅くなりたくなかったのです。なので、心苦しいですがお断りすることにしました。


「すいません、明日も学校があるので私は失礼します」


 新人が行かないのはマズイかな?と思いましたが、毎回午前様は避けたいのです。飲み屋に中学生が入るというのも世間的に体裁が悪いですしね。


「えー、ユウリちゃん帰っちゃうの?」


「いいじゃない!」


 誘ってくれるのは嬉しいけど、こちらにも事情というものがあります。それに、中学生を夜間まで連れ回したとかマスコミに知られたら声優さんたちのスキャンダルになってしまいます。


「すいません、この子、まだ中学生ですから・・・」


 桶川さんが助け船を出してくれました。それを聞いた皆さんの動きが一瞬止まります。


「「「ええっ!中学生!」」」


「まぁ、四月から高校生ですけど・・・」


 皆さん、私がまだ中学生だと知らなかったようです。そう言えば、未成年だとは言いましたが具体的な年齢までは言っていませんでした。


「受験生なんだ!」


「じゃあ仕方ないね」


「勉強大変ね」


「この前、遅かったよな。叱られなかった?」


 皆私を心配してくれました。しかし皆さん、私を幾つだと思っていたのでしょうか。


「前回は大丈夫でした。でも、今日もはちょっとマズイので、申し訳ありませんが失礼します」


「桶川さん、早く送ってあげて」


「今度、早い時間に行こうな」


 皆は名残惜しそうに打ち上げに行きました。今回はお断りしましたが、出来るだけ参加をしたいと思います。


 送ってもらう車の中で髪を結びます。解したままだと、色々気を付けないといけないので大変なのです。


「皆さん、いい人達ですね」


「そうね。あの現場はベテランが多いから」


 桶川さんの答えに疑問を感じます。ベテランならば、新人を軽視したりするかと思ったのですが。


「声優ってね、熾烈なのよ。だから新人のうちは足の引っ張り合いみたいな所もあってね」


 限られた仕事を取り合うのだから、ある程度は仕方ありません。そういう事情は由紀から聞いた事があります。


「大変なんですね。そうすると、いきなり主役の私はかなりラッキーなんですね」


「そうね。でも、いくらチャンスが来ても、それを生かせるかどうかは本人次第よ。頑張ってね」


 ぽっと出の新人が、いきなり新作アニメの主役に抜擢される。端から見ればラッキーなのでしょう。しかし、それだからこそ嫉妬する人は増え風当たりがキツくなると思います。

 声優という仕事を続けるのなら、そんな悪意に晒される覚悟もしなければなりません。


 まあ、声優の仕事を続けるかどうかの決断の前に他の仕事が入るかという根本的な問題があるので、今考えても仕方のない事なのですけどね。


「着いたわよ。明日が楽しみね」


 車は待ち合わせたコンビニの駐車場に停まりました。明日は収録も無いですし、取材もなかったと記憶しています。


「楽しみって・・・何がですか?」


「雑誌と番組よ。奇遇にも、発売と放送は明日よ」


 そうでした。すっかり忘れていましたが、雑誌は明日発売で脳力試験の放送も明日でした。


 明日、もう一人の私であるユウリが世間の目に触れます。私だとばれなければ良いのですが。

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