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第百八十一話 行き着く先は

 長かったような短かったような不思議な時間が過ぎ、漸くワゴン車は停止しました。周囲に人家は見当たらず、紅葉しだした木々を縫って道が続いています。


「ふうっ、やっと撒けたわ」


「それは良いんですけど、ここは何処ですか?」


 高速おいかけっこの末、現在位置が判らなくなりました。車窓の風景を見て何処を走っているのか把握するなんて余裕はとても無かったのです。


「心配いらないわよ。便利な文明の利器があるんだから。『はい、カーナビゲーション~』」


 有名なネコ型ロボットの声色を真似てダミ声で言う桶川さん。今は声優さんが代わってしまいましたが、ネコ型ロボットといえばあの人という印象が強いです。


「えっと、この辺で目につく物は・・・白糸の滝に鬼押出し園、浅間山ね」


「山荘立て籠り事件を思い出すわ」


 さすが土呂さん、刑事だけあって連想するのは有名な事件でした。


「桶川さん、私の記憶に間違いが無ければ、ここって長野県よね?」


「白糸の滝だけなら静岡県という可能性もあるけど、鬼押出し園と浅間山がセットで付いてくれば長野県でファイナルアンサーね」


 桶川さんも長野県という見解に異論は無さそうです。土呂刑事も頷いているので同意見でしょう。


「東京都内から埼玉県南部に移動するのに、どうして私達は長野県に居るのでしょう?」


「不思議ね。まさしく世界の七不思議だわ」


 誰かさんが暴走した結果だと思うのは私だけでしょうか。土呂刑事もジト目で桶川さんを見つめていますが、桶川さんはどこ吹く風と受け流しています。


「まあ、折角来たのだからお土産を漁りましょう」


 誤魔化すように叫びお土産屋さんを探し始めた桶川さん。少し車を走らせ、軽井沢の駅付近でお土産を買いまくりました。

 桶川さんと土呂さんは反対口のアウトレットパークに行きたがりましたが、そんな場所に行けば帰るのが何時になるやら予測もつきません。


「目と鼻の先なのに・・・」


「ああああ、看板を見るだけなんて!」


 後ろ髪引かれまくりの二人をなだめすかし、軽井沢インターから高速道路に乗りました。まずは藤岡ジャンクションから関越自動車道に入る事を目指します。


「富岡製糸工場、見たかったわ」


「今日は観光に来たんじゃないんですよ、自制して下さい!」


 世界遺産を観光したがる二人を諭し、帰る事に専念させます。これ、年齢的に考えたら立場が逆なのではないでしょうか。

 苦労の甲斐あって川越インターに到着。国道を伝って無事我が家に帰り着く事が出来ました。家族へのお土産を手に車を降りて家に入ります。


「ただいま、お土産あるよ!」


「お帰りなさい。お土産って何?」


 嬉しそうに飛んできた由紀が紙袋をひったくります。その包装紙を見た由紀は怪訝そうな顔をしました。


「ねえ、お姉ちゃん。これ、軽井沢のお土産よね?」


「少なくとも鳥取のお土産じゃないわね」


「今日、軽井沢でロケでもあったの?」


「ううん、都内での記者会見だけよ」


 由紀の頭の上にクエスチュンマークが浮かんでいるのが見えるようです。まぁ、反対の立場だったら私も同じような反応したでしょうけどね。

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