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第百八十話 帰るまでが記者会見です

 会見を強引に打ち切った私達は、無秩序に質問を叫ぶ記者達を会見場に残し控え室へと引き上げました。


「つ、疲れたわ」


「私は桶川さんのお陰で楽だったわ。質問全て引き受けてくれたから」


 他人のプライバシーに関わる事なので、ちゃんと責任のある大人である桶川さんに対応してもらいました。遊は私だという突っ込みはスルーさせていただきます。


「ユウリちゃん、楽できたのなら私を癒してっ!」


 抱きつき、私の胸に顔を埋めてくる桶川さん。万が一こんな場面を撮影などされたら、どんな記事を書かれてしまうでしょう。


「ちょっ、桶川さん、止めて下さい!」


 引き剥がそうとしましたが、腕を背中に回して抱きついている力が強く離れません。首を小刻みに振って抵抗する桶川さん。胸に与えられる振動で、力が抜けてしまいそうです。


「ユウリちゃん、桶川さんとはそういう関係だったの?」


 生暖かい目で見る土呂刑事。柔らかそうだし私も揉んでみたいなんて恐ろしい事を呟かないでください。


「私はノーマルよ!桶川さんを引き剥がすの手伝って!」


「うーん、あと二十分」


 胸に顔を埋めたまま寝起きの悪い女子高生みたいな事を言う桶川さん。この姿を見て日本でも最大級の芸能事務所の社長だと誰がわかるでしょうか。

 結局、桶川さんの宣言通り二十分が経過するまで私は胸をいじり倒されました。


「くすん、もうお嫁にいけないわ」


「大丈夫よ、私がもらうから」


 よよよ、と泣き崩れる私を桶川さんが励まします。

まあ、嫁入りどころか恋人すらいないのですけどね。


「桶川さんも女でしょ。報道陣も引き上げたでしょうし、そろそろ帰りましょう」


 車に乗ってホテルを出ました。もう仕事は無いので家に送ってもらう予定だったのですが、予想外の事態が発生してしまいました。


「二台付いてくるわね」


 バックミラーを確認した桶川さんが呟きます。どうやら帰らずに残っていた記者がいたようです。


「どこの社か分からないけど、私に挑戦しようなど十年早いわ!」


 桶川さんがアクセルを踏み込むと、ワゴン車は弾かれたように加速します。それを見た後ろのセダン二台も慌てて加速しました。


「桶川さん、落ち着いて!」


「道交法色々と違反してますよ!」


 私と土呂刑事が叫びましたが、そんな事ではスイッチの入った桶川さんは止まりません。


「大丈夫、お巡りさんに捕まらなければ無事故無違反でいられるわ。警察に知られなければ良いのよ!」


 否定したい理論ですが、否定出来ない事実でもあります。それに、記者を引き連れたまま帰るわけにはいかないので桶川さんに任せるしかありません。


「私、警察官なんだけどね」


 警察に知られなければと言う桶川さんですが、後部座席に乗っている土呂刑事は列記とした警察官です。

 そんな土呂刑事の呟きも無視しワゴン車は車列を縫い、加速し、信号をギリギリで渡ります。カーブをドリフトで駆け抜け後続車を引き離していくワゴン車の中で、私と土呂刑事は事故らないように祈る事しか出来ませんでした。

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