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第百七十九話 記者の目的

「お疲れ様。面白かったわよ」


 桶川さんに出迎えられ、控え室の椅子に腰をおろします。正体がバレないかと緊張していた為、かなり消耗してしまいました。


「今日の仕事はこれで終わりよね」


「それがね、いくつか突発で取材が入ってるのよ。例の件の発端がユウリちゃんと遊ちゃんを共演させようとしたことだから、それでコメントが欲しいみたい」


 一般人である北本遊が取材に応じないので、ネタを得るためにユウリのコメントを欲しいというマスコミの圧力をかわしきれなかったそうです。とはいえ、希望するマスコミ各社と個別にインタビューを受けていたら時間と労力の消耗がバカになりません。


「桶川さん、先程の会場を借りる事は出来ますか?」


「会見にして一気に話した方が楽ね。幹事社に聞いてみるわ」


 桶川さんは携帯を取りだし、会場を借りる為の交渉を始めました。その横で土呂刑事は頭に手を当てて小刻みに動かしています。


「頭が痒いわ。これ、どうにかならない?」


「冬も近いとはいえ、暖房ついてますから。我慢してもらうしかないですね」


 カツラを着けている土呂さんは、頭に汗をかいてしまって痒くなっているようです。髪の長い私も同じような経験をしたことがありますが、こればかりは我慢するしかありません。


「話はついたわ。準備が出来たら呼びに来るそうよ」


「ありがとうございます」


 これで面倒な取材が一気に終わります。本日二度目の会見が始まるまで、三人で雑談して過ごしました。

とは言っても、その殆どは土呂刑事による朝霞さんに会えた事への感動と感謝の独白だったのですが。


「ユウリさん、準備が出来ました」


 幹事社の方が呼びに来たので会場に向かいます。会場に入るのは私と桶川さんだけです。土呂刑事は会場入口で待機してもらう事になりました。


「ユウリさん、お疲れのところをありがとうございます。では、質疑応答を始めたいと思います」


 幹事社のあいさつから会見は始まりました。集まった記者は質問の権利を得るべく我先にと挙手をします。


「ユウリさん、襲われた方とはお会いになりましたか?」


「いいえ、会ってはおりません。しかし、事務所を通してお見舞いはしてあります」


 自分自身には会えません。自分で自分へのお見舞いを事務所を通して行うというのも変な話ですが、カモフラージュの為に必須な行動です。


「その方に取材を申し込みたいのですが」


「相手は未成年の一般人です。取材は控えていただいた方が宜しいかと。それに、我が社が直接関係している訳ではないので私達に橋渡しを頼まれてもお受けしかねます」


 取材の仲介は、桶川さんがキッパリと断りました。こんな感じで会見は進んでいきましたが、殆どは取材の仲介依頼でした。何度断ろうとも同じ依頼を繰り返す記者達の思考回路は理解不能です。


「え~、同じような質問が繰り返されていますので、これで会見を終わらせていただきます」


 断っても同じ依頼を繰り返す記者達に業を煮やした桶川さんが強引に打ち切りました。この記者達、北本家に突撃してきたりしなければ良いのですが。

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