第百五十六話 シックスセンス?
頑張って更新しました
記者会見は特筆する事もなく無事に終了しました。記者からは私とkukiが付き合ってるという言葉を引き出そうと執拗な質問が来ましたが、全て即座に否定しました。
挙げ足を取られたり曲解出来ないよう考えておいた回答をしたので、故意に継ぎ接ぎしない限り意図を歪めた報道は出来ないと思います。
僅かに解釈を変える事が出来れば、事実を大幅にねじ曲げて報道するのがマスコミです。それを防ぐためにかなりの労力を必要としてしまいました。
「はぁ、疲れました」
「上出来だったわよ。あの内容なら満点だわ」
控え室に戻ってきた私と桶川さんはへたりこみました。気の抜けない記者会見が終わり、二人だけの控え室に戻った途端に気力が尽きたのです。
しかし、母と鍛えた第六感が危機を告げました。この部屋に何かがありそうです。
「どうしたの、ユウリちゃん」
立ち上がり辺りを見渡す私を怪訝に思った桶川さんが質問しますが、私は答えません。人差し指を唇に当てて静かにするよう伝えると、バッグから水晶のネックレスを取り出します。
右手人差し指に鎖を絡ませ水晶を垂らすと、深呼吸して意識を集中しました。手には全く力を加えていないにも関わらず、水晶はゆらゆらと楕円形に揺れ始めました。
立ち位置を変えていき、水晶が示す楕円の長径が指す位置を特定します。
水晶は机に乗った黒いダイヤル式の電話を指向していました。特に変わった所のない黒電話を持ち上げると、底には四角い妙な機械がついています。
『ユウリちゃん、これって!』
『盗聴機ですね。帰りましょう』
盗聴を防ぐため筆談で会話をし、帰る事を決め部屋を出ました。他にも何があるか判らないので、すぐに車に乗り込みます。今日はもう仕事も無いので家に送って貰うことになりました。
「ユウリちゃん、盗聴機見つけたあれは?」
「これですか?ダウジングですよ」
赤信号で止まったのを確認して、右手に着けたままの水晶を見せます。走っている最中によそ見なんてさせられめせん。
「曲げた針金でやるのが知られていますけど、鎖にパワーストーンを付けてやるのが正統です」
「ユウリちゃん、本当に人間離れしてるわね・・・」
深く溜め息をつきながら溢す桶川さん。ダウジングくらい出来る人は沢山いると思うので、その発言は心外です。
「練習すれば出来ます。なくし物探したり便利ですよ」
「私は霊感とか超能力とかサッパリだから無理だわ」
投げ遣りに即答されました。私だって超能力がある訳ではありません。そんな便利な物が使えるのであれば、とっくにお母さんから模擬戦で一本取れています。
記者会見から一夜明けた翌日。朝御飯を食べに降りると由紀と友子がホットケーキを食べていました。
「おはよう、お姉ちゃん」
「遊、おはよう。バターにメープルシロップで良いかしら?」
友子が食べるのを中断し、私のホットケーキを用意してくれるようです。
「メープルシロップよりハチミツの方が好き。クローバーのやつでお願い」
同じハチミツでも、雑多な蜜を集めた物と同一の花の蜜を集めた物では味がまるで違います。そのぶんお値段もまるで違うのですが、うちの両親は安定した人気を誇っているので心配ありません。
「コケモモにリンゴ、サクラに仙桃・・・あった、これね。ハチミツだけで何種類あるのよ?」
冷蔵庫からハチミツを探しだした友子がぼやきますが、それを入手してくるのは私ではないので聞かれても答えようがありません。知らないうちに増えるので、私も把握していないのです。
「お父さんのファンに養蜂家がいて、毎年送ってくれるらしいのよ。いつの間にか増えているわ」
答えられる範囲で答えましたが、友子は納得していないようです。大方アムリタや仙桃、世界樹の花辺りが引っ掛かっているのでしょうけど、私にもこれ以上答えようがありません。
「友子はナチュラルにうちで朝食たべてるけど、どうしたの?」
「昨日の情報操作の結果を教えにと、これからの打ち合わせのために来たんだけど?」
情報操作というと・・・スキャンダルの件しかありません。私のために朝早くから動いてくれた親友に、自然と頭が下がりました。
「朝早くからありがとう。悪いわね」
「気にしなくて良いわよ。お礼はユウリちゃんの撮影会で十分だから」
何故でしょうか。猛烈にこの場から逃げ出したくなりました。私の中で何かが「逃げて!即刻逃げて!」と叫ぶと同時に、別の何かが「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」と繰り返しています。
私はどちらの声に従えばよいのでしょうか。どちらの声も由紀や友子の影響のような気がするのですが・・・
更新にあたって、一番苦労したのがサブタイ




