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第百四十五話 文化祭にむけて

 警察を出た私達は、予定していた観光名所に寄る事をせずに館林のホテルに行きチェックインしました。一ヶ所ならぱ寄る時間があったかもしれませんが、どうせならばゆっくりと見たいので次の機会を待つことにしました。


「ユウリちゃん、もう話題になってるわよ」


 携帯でニュースを見ると「声優のユウリさん、ひったくり犯とカーチェイス」のタイトルがありました。


「早いわね。警察から情報が出たのかしら」


「結構人が集まっていたし、そちらからかもね」


 犯人を逃がした現場では、野次馬がかなりいました。その人達がネットに書いた可能性が高いです。


「目的(話すネタ作り)は達したし、明日に備えて早寝しましょう」


 翌日は予定通り、分福茶釜の茂林寺をレポートしました。狸の像が沢山あり、その台座に詩が書かれていてとても楽しめました。


しかし、一番驚いたのはお土産屋さんです。木彫りの動物像を売っているお店屋さんで、可愛いものが多くて楽しめました。そんな店内の端に、丸太が1本立っていたのです。結構大きくて、床から天井まで伸びていました。


 木彫りの店だから立ててあるのかな、と思っていました。お土産に小さな狐の木彫りを購入して店を出ます。ふと振り返り土産屋さんを見ると、屋根から木が生えていました。あの丸太は、店内から屋根の上まで貫通して生えていたのです。


 店内から屋根を突き抜けて木が生えている土産屋さん。話すネタが一つ増えたのでした。


 無事仕事を終えて帰宅。リビングで落ち着くと、騒々しい足音を響かせて入ってきた由紀の襲撃にあいました。


「お姉ちゃん、大捕物したって本当?無事?怪我は無かった?」


 ペタペタと身体中をまさぐられます。心配をかけてしまったのは理解していますが、少々大袈裟ではないでしょうか。


「どうしたのよ、一体?」


「どうしたって、電話しても出ないんだもん。心配するわよ!」


 由紀の言葉に携帯を確認すると、確かに不在着信が山のように入っていました。由紀にお母さん、友子からも入っています。


 移動前の仕事からマナーモードにしていて、解除するのを忘れていたようです。そのため着信に気付けず、事件と仕事で確認もしていませんでした。


「ごめんね、心配かけたわね」


「お願い聞いてくれる?」


 由紀の頭を抱いて髪を撫でます。上目遣いでおねだりをされめしたが、無条件では頷けません。


「内容次第ね。仕事に支障をきたしたり、正体ばれるような願いはダメよ」


「もちろん!お姉ちゃんの邪魔になるようなお願いはしないわ」


「できる範囲ならいいわよ」


 心配させてしまいましたし、たまには付き合ってあげるべきでしょう。秋葉原に付き合うとか、その辺りならば良いのですが。


「じゃあ、決まったらお願いね。どれにしようかな」


 どれだけお願いの候補があるのでしょう。少し早まったかもしれません。


 翌日、登校の際に合流した友子にも謝りました。由紀の状態から友子からもお願いを言われるかと思ったのですが、冷静に対応されました。


「遊なら無事だと思ってたわよ。やーさんを集団で相手して無傷なんだから、素人のひったくり程度相手にならないわ」


 と軽く言われてしまいました。信頼されていると見るべきですが、少々寂しいと思ってしまうのは贅沢ですね。そんな私の内心を他所にHRが始まりました。


「今日のHRは文化祭の出し物を決まるぞ。やりたい物を言ってくれ、後で多数決で決めるから」


 次々に出し物の候補が挙げられました。お化け屋敷に喫茶店、演劇のテンプレ系。仮装大賞やクイズ合戦のイベント系や何もやらないという意見まで出ました。


「店員がお化けのコスプレした仮装喫茶はどうでしょう?」


「それなら喫茶店と仮装とお化け屋敷が出来る!」


 そんな誰かの思い付きで仮装喫茶に決まってしまいました。仕事の都合であまり参加できない私は、出し物の内容には全く口出ししません。


「よし、では担当や当番を決めよう」


 クラス委員が必要と思われる役目を書き出していきます。男子は女子にメイド服を着せようと、女子はそれを阻止しようと白熱した論議を展開しています。


「遊、あなた準備とか参加出来るの?」


「家の都合で難しいのよ」


 文化祭の前後は結構仕事が詰まっていました。授業に出られるように配慮してくれているぶん、放課後はほぼ予定が詰まっていたのです。


「由紀ちゃんに聞いたんだけど、うちの文化祭1日目にユウリとして来るのよね」


「桶川さんが私も参加出来るように配慮してくれたの。二日目は他校の文化祭に行くから出れないけど」


 答えを聞いた友子はニヤリと笑いました。ろくでもない事を考えてる時の表情です。


「仕事終わったらユウリのまま教室に顔出してね。そうしたら準備やシフトから抜けられるように交渉するわ」


 返事をする間もなく友子はクラス委員の方に走って行ってしまいました。どんな交渉をするのかは知りませんが、クラス公認で抜けられるのであれば助かるので任せます。


 やがて役割分担やシフトも決まり、皆は今日から資材の確保等に向けて動き出しました。そんな中、私と友子は準備への参加を免除されたため早々に下校します。


「一応どんな条件を出したのか教えてくれる?」


「遊がユウリちゃんにコネを持っていて、桶川プロの手伝いを条件にクラスに呼ぶって言ったわ。今日はその交渉に私と遊で行ってくるって言ったら諸手を上げて賛成されたわよ」


 交渉に友子も行く事にしている辺りちゃっかりしています。今日は仕事は無かったのですが、友子を連れて事務所に顔を出すとしましょう。

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