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第百三十四話 歌を歌おう

「由紀ちゃん、誘ってくれてありがとうね」


「友子お姉ちゃんには、内緒にしてた事に対して文句も言いたいけど・・・同志だし水に流すわ」


 私を挟んで会話を続ける由紀と友子。少し後ろを歩く両親に助けを求めようと振り返りましたが、視線を逸らされました。どうやら私に味方は居ないようです。


 今日は学校も仕事もお休みです。ゆっくりしようと思ったのですが、由紀に引っ張り出されました。


「お姉ちゃん、今日はユウリさんの歌声を堪能させて貰うわよ!ちなみに、拒否権はありません!」


 部屋に突撃してきた由紀に一方的に宣告され、最寄りのカラオケボックスへと連行される事となりました。友子には由紀が連絡したらしく、途中で合流しています。


 カラオケボックスで手続きを済ませ入室します。手慣れた手つきで友子が機械を調整し、家族プラス友子によるカラオケ大会が始まりました。


 友子と由紀がよく判らないアニソンを歌い、両親が演歌やポップスを歌います。私は飲み物を飲みながら、それを聞いていました。


「お姉ちゃん、そろそろ歌わない?」


「そうよ。遊の生声で聞きたいわ!」


 由紀と友子にリクエストをされました。元々ここに来た目的がそれだったので、最低一曲は歌わねばと思っていたので応えましょう。


「一曲位なら良いわよ」


 応じると同時に、友子が端末を操作して曲を入れました。曲はもちろん、私のデビュー曲です。ユウリの声色で、振り付け付きで感情を込めて歌い上げました。


「はぁ、やっぱり最高!」


「圧巻よねぇ」


 歌い終わると、由紀と友子がため息と共に呟きます。画面に採点結果が表示されました。自分では満足して歌えたのですが、何点取れるか少し楽しみです。


 数秒して画面に出た得点は・・・


100点


本人よりも上手くね?


 全国歌別ランキング1位



「さすがお姉ちゃん!」


「何でそんな点数出せるのよ?」


 称賛の眼差しを向ける由紀に、呆れる友子。両親は放心しているようです。


「いや、歌ってる本人だし」


「本人でも、100点なんか出ないぞ?」


「感情込めて歌ってたのに、最高得点ね」


 復活した両親からの突っ込みが入りました。


「感情込めると、リズムや音程が狂うのよ。そこに気を付けさえれば、感情込めても高得点出せるわよ」


「カラオケやらないのに、何でそんな事知ってるのよ?」


 カラオケはやらなくても、一応歌を出しているのです。それくらい自主的に調べます。


「で、次は誰が歌うの?」


 マイクを置いてステージを降ります。しかし、誰も次の曲を入れようとしませんでした。


「あの歌の後じゃ・・・」


「歌えないわよねぇ・・・」


 誰も歌おうとしません。点数なんか気にしなくとも、楽しく歌えれば良いと思うのですが。


「そうだ、お姉ちゃん、もう一回歌って!」


「そうだな、遊、もう一回頼む」


 由紀とお父さんに言われ、連続で歌うことになりました。二度目の採点結果も、やはり100点でした。

 その後、三回続けて歌うことに。同じ歌を連続で聞いてもと思うのですが、全員に言われては断れません。


 得点は、全て100点でした。


「ふわぁ、凄いもの見たわ!」


「毎回100点って、遊は本当に規格外ね」


「我が娘ながら・・・」


「とんでもない娘に育ったわねぇ」


 純粋にはしゃぐ由紀に、呆れる友子と両親。結局、もうカラオケは満足ということでお開きとなりました。店を出て、両親は仕事のため家に帰り友子と由紀は買い物に行くということで別れる事に。


「じゃあ、私も帰るわ」


 両親について帰ろうとしたのですが、素早く由紀と友子に両腕をホールドされました。


「お姉ちゃん、逃がさないわよ?」


「ユウリちゃんグッズの市場調査といきましょうね」


 そのまま両脇を固められ、駅前の繁華街に連行。アニメグッズの専門店や本屋さんをハシゴさせられたのでした。


 その頃、全国のカラオケ店では・・・


「ランキングトップ、100点だと!」


「しかも、5位までよ!」


 カラオケランキングは、ネットワークで全国のカラオケに表示されます。その上位5位が満点、しかも同じ曲となったのです。注目されないはずがありませんでした。


 そんな騒動は露知らず、私達はアニメグッズの専門店に入店していました。


「チェックに来て正解だったわね」


「ユウリさんブロマイド、新作が出ているとは知らなかったわ。ユウリさん肉声目覚まし時計も買えたし、次のお店も期待出来そうね」


 私のグッズを山ほど抱える由紀と友子。本人が目の前にいるこの状況で、その会話は勘弁して下さい。


「ねえ、お姉ちゃんは帰ってはダメかな?お姉ちゃんのライフはもうゼロよ・・・」


 涙目の私か必死に行った懇願は、二人の笑顔に封殺されました。

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