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第百二話 類(校長)は友(変人)を呼ぶ

お待たせしました。漸く一話書けました

 帰宅した私は、すぐにお父さんの書斎に向かいました。桶川さんから連絡がいっているとはいえ、いきなり外泊してしまったのですから説明をしないと。


「経緯は桶川さんから聞いてはいたが、大変だったな」


「桶川さん、仕事できそうな感じだったけど抜けてるのねぇ」


 きちんと連絡がされていたようで咎められる事はなく、逆に同情されてしまいました。由紀にはバイトで急な残業になり、帰りが遅くなるので雇い主の所に泊まると説明したそうです。


 翌朝、待ち合わせ場所に行くと友子が凄い剣幕で詰め寄ってきた。両肩をガッシリと掴むと、一気に捲し立てます。


「遊、昨日は心配したわよ!ここに来ないし、遊の携帯繋がらないし!家にかけたら休ませるって言うし、何があったのよ!」


「ちょっと落ち着いて。ここでは話し辛い内容なのよ」


 友子の電話を受けたのがお父さんかお母さんかは知りませんが、仕事で休むと言わなかったようです。


「ああ、そっち関連だったのね。じゃあ昼休みにね」


 いつまでも立って話していたら遅刻してしまいます。私達は駅に行き電車に乗り込みました。ふと、さっきの友子を思いだし口の端が上がります。


「どうしたのよ遊、いきなりニヤついて」


「何でも無いわよ」


 さっきの友子は、心から私を心配してくれていました。それを思うと、自然と顔が弛みました。変わらず微笑む私に、友子が顔を少し赤らめます。


「べ、別に遊を心配したんじゃないんだからね!」


 慌てて顔を背ける友子。


「友子のツンデレって、誰得なのよ」


 私は笑いを堪えきれず、クスクスと笑いだします。すると友子は赤い顔を更に赤くして必死に否定しました。


「ち、違うって言ってるでしょ!」


 テンパり気味の友子が声をあげます。結構人が多い電車内での会話です。周囲の人も聞こえていたらしく、少し笑い声が聞こえました。


「ツンデレ乙」


「ハアハア、萌えるわ!」


「罵って下さい!」


 周りに居たのは殆ど同じ学校の制服を着た生徒でした。その声の中に、何だか危ない声があったような・・・


 友子もそれに気付いたらしく、丁度最寄り駅に到着した電車から飛び出しました。


「ほら、遊、早く行くわよ!」


 私の手を引っ張って改札を駆け抜ける友子。福を呼ぶお札を争う行事かという勢いで走り、学校に到着しました。

 教室に入ると、いつもより早い時間になったせいか来ているクラスメートはあまりいませんでした。友子が勢いよくドアを開けたので、皆が一斉に私達を見ます。


「北本さん、昨日は家の用事でお休みだって?」


「北本さんの家って、何をやってるの?」


 四人が私の周りに来て話しかけてきました。少し怯えたような感じがするのは何故でしょう?友子の方には三人が話しかけています。


「友子、あんなに心配してたのにねぇ」


「友子のツンデレ、ご馳走様でした」


「くっ、生で見たかったわ!」


 先程の私と友子のやり取りを知っているようです。しかし、教室にいた彼女らが何故知っているのでしょう?


「ちょっ、何で知ってるのよ!」


 顔を赤くしながら聞く友子。問われた女子は、携帯を某先の中納言様の印籠のように掲げました。


「その場に居合わせた子からメールが回ってるのよ」


「萌えネタやユウリちゃん情報は、すぐ学校のHPにアップされるしね」


 学校のHPなんて代物があるのかと疑問に思っていると、私を囲う四人の一人が携帯の画面を見せてくれました。


「これだよ。アニメや声優の情報はかなりの量と確度で話題になってる。北本さん、知らなかったの?」


 何故高校のHPでアニメや声優の情報を載せているのでしょうか。普通は学校行事や校内での出来事、学校紹介を載せるのではないでしょうか。


 軽い目眩を覚えてこめかみを押さえます。考えてみれば、あの校長先生と教頭先生が仕切る学校です。普通と考えてしまった私が馬鹿なのでした。


「遊、あの校長と教頭よ?何があってもおかしくないわ。そう、購買でユウリちゃんグッズを販売していても、それは自然な事なのよ」


 脱力しながらも声の方に顔を向けると、友人に囲まれていた筈の友子が諦めろと言いたげな顔で立っていました。


「友子、あなた囲まれてなかった?」


 友子の席を見てみると、椅子には等身大のデフォルメ友子ヌイグルミが鎮座していました。


「はっ!いつの間に!」


「変わり身の術?!」


「まだ暖かい!そう遠くには行っていないぞ!」


 いきなりいなくなった友子に慌てるクラスメート達。我が親友ながら、この子を理解するのは不可能ではないかと思ってしまいます。


「あんなヌイグルミ持ってなかったわよね?」


「もちろん、鞄から出したわよ。こんな事もあろうかと、常に身代わりを用意してあるのよ」


 一体、どんなシチュエーションを想定してそんな物を持ち歩いているのでしょうか。それに、どう考えてもあのヌイグルミは学生鞄には入りません。

 とりあえず片端からツッコミをいれようかと口を開きかけたその時、友子の聞き捨てならない一言を思い出しました。


「・・・ちょっと、購買で何を売ってるって言ったの?」


 まさか、まさかと思いつつ確認します。空耳であった事を願いながら。

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