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小説を読者のために書くという終わりの始まり

作者: はとさぶれ

私はかつてこのサイトで小説を書いていた。


それなりにブックマークもつき、ファンだと言ってくれる人もいた。


それをある日、全部消した。サイトも退会した。バックアップも取らなかったし、元データも消した。


私が自分のためではなく、他人のために小説を書いていることに気づいてしまったから。


最初は純粋に小説を書くのが楽しかった。

ブックマークや評価がつき、ランキングの隅にも載り、感想がもらえる。


何もかもが初めてで、本当に楽しかった。


でもいつからだろう。


「続きを書かなくちゃいけない」

「こんな話が望まれてるから次はこうして……」


楽しさが義務に変わっていった。


おかしな話だ。


私はただのアマチュアで稿料をもらっているわけでもないのに。


楽しいから書く。その基準がいつの間にか「どうでしょうか。面白いでしょうか。これでいいでしょうか」という卑屈なものに変わっていった。

誰かに面白いと思われなければいけないという強迫観念が私を支配していた。


すでに書くことは楽しくなくなっていた。


それでも読者の方は優しい言葉をかけてくれる。続きや新作を望んでくれる。


苦痛だった。


自分がもう書きたくない小説をいつまで書かなければいけないのだろう。

どうして他人のために涙をこぼしながら小説を書いているんだろう。


何かがぽきりと折れた。


私は黙ってサイトを退会した。そしていわゆる「読み専」になった。

何も考えず、気に入った小説を読むのは楽しかった。


サイトに戻ってきたのは見過ごせない理不尽を見たからだ。それをただしたかったからだ。

今ではここは私の心の澱の吐き出し場としても機能している。

だからもう、ここで小説を書くつもりはない。


長くなってしまったが、言いたいことは、もし少しでも誰かのために書いていることに気づいたら少し立ち止まってほしいということだ。


それが励みになるならそれでいいし、苦痛なら休んだ方がいい。


私のように、小説を書くという作業に嫌悪感を持つようになる前に。

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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しくて好きでやってた事なのに、いつの間にか「やりたい」が「やらなきゃ」になってることに気付くとポッキリ折れますよね… 趣味でやってたはずの音楽で似たような状況に陥ったのでよくわかります。…
[一言] 嫌悪感を抱きつつも、つづける人はいるのかも。 一応の答えが出ればそれもよし、答えが出ずにダラダラつづけるのもまたよし。 もちろん、やめてしまうもよしだけど。 チェーホフの『かもめ』、青空文…
[一言] 執筆のスタンスは人それぞれですね。 確かに多くの方に読まれたり、出版されている作品に関しては完結させないとと思うところはありますが、無理をしてまで書くモノでもない点には賛同します。
感想一覧
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