始まりは大洪水から
寝起きに書き始めました。
突然だが、僕は魔王だ。
ただ魔王と言っても世界を支配したいわけでもなけりゃ、勇者と戦っているわけでもない。まぁ生まれて数時間でそんな野望を抱いたり、勇者とエンカウントするわけもないけどね。
あっこの世界には、魔王は、一人や二人じゃなく、それはもう沢山いるらしい。そして厳密に言うと僕は魔王種であり、この世界で本当の意味の魔王として君臨しているものもいるらしいが、今の僕はそこいらの雑多な種族とたいして変わらないってさ。
ただ一つ、僕ら魔王種が他の種族と大きく異なる点は、母親がいるわけでも、分裂するわけでもなく、突如として地上に発生すること。その傍にダンジョンコアを携えて。
そう今日僕は、見知らぬ世界に転生し、一人の魔王となった。
なんでこんな冷静なのかって?
いやさ目覚めた時は、そりゃ焦ったよw大学に向かう道の途中の信号が青に変わって歩き始めたと思ったら、いきなり目の前に森があるんだよ?焦らないわけないよね〜びっくりしすぎて10秒くらい瞬きすんの忘れたもん。
でもいっちばん驚いたのはそこじゃない。
ちょっと落ち着いて、状況を確認した後なんだよ。
目の前はどこまで続いてんだよってくらいの森だし、自分の身体を見たらすっぽんぽんだし、血色は最高に悪いし、終いにゃ爪が刃物ばりに鋭くとんがってんだよ。そんで足元にボーリング玉くらいの怪しく光った玉があるんだよ。
わけわかんないっしょ?そう訳わからないんだよ。だからふて寝しよ!と思って仰向けになったの。
そしたら
ドラゴォオオオオオオン
横になった僕を、真っ直ぐ見下ろしてんの。すんげーでかい真っ赤なドラゴンが。
うん正直に言おう、チビってた。知らずしらずチビってた。そりゃもう無意識にチョロチョロっとチビってた。
そのまま5秒くらい経ったかな。やっと思考が戻って来て思ったよ。はい死んだぁ〜。だから諦めて目をつぶったんだ。
そしたらすごい澄んだ通る声でドラゴンが言った。
「漏らしながら寝るなぁあああ!なんかあるでっしょ!!怯えて喚くとかさぁ!ドラゴンだよ!ドラゴン!あの伝説のドラゴンが目の前にいるのに普通寝る!?」