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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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    お勧め物で


予定通り、と言うか。

或いは、想定した範疇、と言うべきか。

白蓮の妊娠が確定し、紫苑・梨芹・祭の順で三人も妊娠が確定していった今日この頃。


嬉しそうに御腹を撫でる四人の姿に理解しながらも不満というか、嫉妬というか。

華琳達の無言の要求には苦笑するしかない訳で。

まあ、取り敢えずは気絶するまで愛します。

………うん、まあ、いつも通りですけどね。



「──はぁ?、今何て言った?」


「せやからな、師匠、ウチの初めてを貰ったって」


「…………」


「熱は無いで?、あと、夢とちゃうから」



無言のまま左手を自分の額に、右手を真桜の額へと当てて熱を測ろうとすると直ぐに切り返す。

この辺りの反応の早さは流石だと言える。

いや、何が流石か意味が判らないんだけどな。


先日の穏の件も有り直ぐに咲夜を疑ってしまうが、アレは穏の気持ちも考慮しての事だ。

少なくとも、目の前に居る真桜とは違う。

勿論、嫌われているとは思わないが。

俺と真桜の関係は師弟・兄妹・家族。

…あと、序でに仕事仲間・友人的な感覚だ。

だから、その中に俺は恋愛感情は懐いていないし、真桜が懐いている感じもした事が無い。

上手く隠している、という可能性も無いに等しい。

何しろ、昔から真桜は隠し事が下手だからな。


兎に角、先ずは事情聴取──いや、情報収集だ。

現状で「判った、任せろ」とは言えない。

そんな軽いノリでは出来ません。



「…何がどう転べば、そんな結論に到るんだ?」


「ほら、ウチも十五歳に成ったやろ?」


「ああ、この間、祝ったばかりだからな」



宅では誕生日を祝うのは普通の事。

しかし、世間一般では極めて珍しい事です。

世間では、地位や権力の有る家の、跡取り息子等の限られた子供の、五歳・十歳の時位で。

十五歳の時は成人した事を祝う。

なので、基本的には十五歳までです。

宅の場合、俺が昔から遣っていて慣習化してるし、咲夜も誕生日パーティーを知る側だからな。

大々的に遣りさえしなければ、反対意見は無い。


因みに、啄県に来てからは乳牛を見付けてきた為、生クリームたっぷりの俺特製誕生日ケーキが今では誕生日の主役の楽しみになっています。

尚、俺は生クリームの好き具合は普通より下なので俺の時には華琳達が特製饅頭を作ってくれます。

勿論、小豆から餡を作ってね。



「今までは未成年やし、師匠達の保護下に居るから良かったんやけどな…

成人したら、見合い話とか急に出てきよって…

言い寄る男も日に日に増えとるんよ…」


「モテまくりで選り取り見取りだな」


「師匠やないんやから止めてんか」


「いや、俺だって漁色はしてないからな?

寧ろ、華琳達だけで十分なんだが…」


「あー、はいはい、今のはウチが悪かったわ~

せやから、それは置いといて…

ウチもな、結婚願望が無い訳やないんやけどな?

けど、まだ結婚する気は無い

──っちゅうか、家庭に入る気が無いんよ」


「あー……それでか…」


「流石、師匠やな、察しが良ぅて助かるわ」



誉めて押し切ろうとする真桜に呆れる。

だが、真桜の意図は理解出来た。


この世界での女性の社会的地位は低い。

その為、結婚すれば家庭に入るのが常識だ。

それは地位や権力の有る身分だろうと変わらない。

一種の“暗黙の了解”だとさえ言える。


そういう意味でも宅は珍しい夫婦・家庭だ。

そして、それが当たり前の環境で生活している為、真桜にしてみれば「何でウチが今の仕事止めてまで家庭に入らなあかんねん!」と言いたい訳で。

そういった鬱陶しい外野を黙らせて、仕事に専念が出来る現状を維持したいが為に。

真桜は俺に抱かれ、「ウチは師匠の妻やからな」と胸を張って言える既成事実が欲しい訳だ。

短絡的と言えば短絡的だが。

確かに、他の遣り方だと時間も手間も掛かる。

対して、この方法だと直ぐに実行が可能。

勿論、本当に俺の妻に為らないと意味は無いが。

俺の場合、華琳達も居るから、時々関係を持てば、「数が居るからしゃあないな」で十分に筋は通り、子供も急ぎはせず、仕事も継続可能。

つまり、真桜にとっては最高の物件な訳だ。

…何か、夫婦関係が契約更新の手続きみたいだが。

まあ、ある意味では、男女の仲を繋ぐ要素としては比重が大きい事なのは確かだけどな。

だからこそ、“色衰えて、愛緩む”なんて言葉とか出来てくる訳なんだから。


ただ、それはそれ、これはこれだ。

真桜の状況や意図は理解は出来る。

多分、華琳達も大して反対はしないだろう。

寧ろ、「関係を持つ事で男と女を意識する様になり恋愛へと発展する事も有り得ます」なんて言って、俺に真桜を抱かせようとする可能性が高い。

そういう遣り取りをする場面が容易く思い浮かぶ。

……まあ、それ位に逞しいからこそ、俺も華琳達の好きな様にさせて遣れるんだけどね。



「…はぁ…真桜、お前は良いのか?

俺が言うのも何だが、女性の初めては特別だぞ?

価値観は人各々だからさ、其処まで重要は視しない女性も居るとは思うけど…」


「あんな、師匠?、ウチかて馬鹿やないんやで?

仕事は止めとぅないし、家庭に入るんも嫌やけど、それでも誰でも良ぇっちゅう訳やないで?

…まあ、その…何や…凪や皆の事を見とるから…

ウチも結婚するんなら師匠が良ぇと思っとるんよ

………自分でする時は師匠を想ってるんやで?…」


「……それは言わなくてもいい情報だと思うが…

…まあ、それは少し意外では有るな

正直、真桜が俺を性的対象として見ていたとは…」


「………何やろな、事実を言っとるだけなんやけど妙にウチが淫乱な様に聞こえるんわ…」



真面目な話をしている筈なのだが。

俺と真桜、二人だけで話しているとネタっぽくなり緊張感や真剣さが職務放棄して出て行く様な。

そんな感じがしてならない。

いや、本当に真面目な話なんだけどね、これ。


あと、真桜は「淫乱な様に…」って言ってるけど、原作(ゲーム)李典(自分)の事を知ったら何て思うんだろうな。

于禁の時もノリは軽かったけど、李典は…ねぇ…。

いや、あの場合は覇王様にも問題が有ったけどさ。

それでも、あんな初めては……ねぇ…。

まあ、「ゲームだから」、何ですけどね。

“注意!、これは現実では犯罪です”だもん。

其処を忘れてはいけません。



「…ほんで、どないなん、師匠?」



それまでの軽かった態度は一変し、不安そうな顔で俺を上目遣いで見てくる真桜。

「…ウチの事、貰ってくれるん?」と言いたげな。

潤み、揺れている眼差しは……卑怯だと思う。

こんな顔をされては、男として、愛妹兄(しんし)として。

断るという選択肢は皆無になるのだから。

…まあ、真桜は可愛いし、美味しそうに育ったし、御互いに知っている仲だからな。

かなり抵抗感は低いと言える。

…ええ、既に凪に手を出していますからね。


それでも、きちんと本人の意志を確かめないとな。

このまま、なし崩しで関係を持つのは個人的にだが避けたいのが本音。

華琳とは…まあ、仕方が無かったけど。

アレは俺が待たせ過ぎたし、避け過ぎたからだし、ある意味、自業自得だからね。



「俺の妻に為る、その意味は判ってるんだな?」


「…師弟の関係でも、兄妹の関係でもない…

男と女の関係に為るっちゅう事やろ?──ぁ痛っ!?

ちょっ、何で今ので叩くんっ?!」


「当たり前だ、このボケ娘

いいか真桜?、師弟である事も、兄妹である事も、全てが俺達の関係を成している一部だ

それは無くせはしないし、無くしてはいけない

これまでに紡ぎ繋いだ絆という絲に、新たに恋人・男女、そして夫婦という絲が加わる

より強く、より大きく、結われていく…

過去を切り捨てたり、関係が変わる事じゃない

俺の妻に為るというのは、全てを引っ括めて自分を俺に晒し、打付け、その逆も含め、共に在る事だ

だから、お前には覚悟は有るか?

俺の妻に為る、その覚悟が」


「──っ…………」



真っ直ぐに、真剣に、決して上辺ではなく。

真桜を一人の女として見た上で、向き合い、問う。


俺だって男だから、真桜の様に可愛い娘を妻にする事が出来るのは素直に嬉しい。

ただ、だからこそ譲れない事も俺には有る。

極端な話、真桜の意図している事は原作の三主君が天の御遣いに対して提示した利用方法と同類。

それを覚悟の上で提示・承諾するなら構わない。


そういった見方をしてしまうからこそ。

原作とは違っても、こういう世界だからこそ。

俺が唯一、結婚の条件としている事だ。



「………言い方や動機は軽率やったかもしれへん

けど、ウチの気持ちは本物や

ウチは師匠を──()はんの事が好きや

他の誰かと、なんか考えとぅもない…

せやから、今直ぐやのぉても構わへん

その気になったら──っもぅん?」



暫しの沈黙の後、真桜が気持ちを真っ直ぐに示す。

それを理解出来無い程鈍くは無いし、経験も有る。

だから最後までは言わせない。

それ以上は必要無いし、其処からは男の責任。

男が応えて魅せる場面だ。


真桜の唇に右手の人差し指を優しく触れさせると、言葉を遮り、静かに顔を寄せる。

同時に左手を真桜の腰に回して抱き寄せる。

今の雰囲気による緊張も有ってか、ビクッと身体を小さく跳ねさせる真桜。

その反応が無意識であるが故に微笑ましく。

いざとなると驚いている自分の反応に対し羞恥心で顔を赤く染めている真桜の初さ。

普段とのギャップに男心も悪戯心も擽られる。

勿論、此処では遣らないけどね。



「今夜、部屋に来い、皆には俺から話しておく

知ってると思うが、俺は独占欲が強いからな

色々(・・)と覚悟して置けよ?」


「──っ…わ、判っとるって…」



そう言う真桜の額にキスをし、「お前は俺の(もの)だ」とでも言う様に“唾を付ける”。

マーキング行為にも思えるが、似た様なものだ。


早足で俺の執務室を出て行く後ろ姿を見送りながら「さて、どう可愛がろうかな」と考えている辺り、俺も華琳達に染められているのだろうな。

それ自体は別に嫌ではないが。

全員を平等に愛していると時間が足りない。

朝チュンを容易く通り過ぎてしまう。

翌々日の朝チュンでなら成立するけどね。

こればっかりは特典(チート)でも解決不可能な問題。

俺の妻関係の数少ない悩みの一つです。



「それは兎も角、仕事を終わらせないとな」



啄郡を獲て、安定した収入源を確保出来た。

しかし、その分、責任の有る仕事が増大した。

まあ、其処は仕方が無いんだけどね。


それよりも、人材という点での悩みが増えた。

現状の規模なら大して気にはしない事なんだけど、将来的には幽州を獲る予定な訳だからね。

今の内から将来を見据えた人事・育成は不可欠。

華琳達は稀有であり優秀だけど、“俺の妻”という事が良くも悪くも影響する。

老若男女問わないが、華琳達とは違う柱が必要だ。


だが、その為にも華琳達の様な人材が先に必要。

つまり、原作キャラの様な稀有な面子が。



「猫耳・鼻血・腹話術に、はわあわ、不幸…

だけど、一番欲しいのは眼鏡美人な貴女…」



つい、「嗚呼、優秀な貴女が居てくれたなら…」と考えてしまうのは仕方が無いと思う。

だって、あの我が儘虎娘を御してる訳ですからね。

正直、人間性も含めて軍師では一番欲しい人です。

勿論、女性としても魅力的ですしね。

まあ、彼女ではなくても軍師が一人は欲しい。

穏は“御嬢様”成分が強め、呂蒙は見習い段階。

華琳が居るけど、華琳の負担が大きいからな。

原作の曹操みたいに背負い過ぎない様に気を付けて注意しておかないと。



「…にしても、世の中は面倒事が山積みだな…

一つ砂粒が抜け落ちただけで崩れ始める均衡…

平穏な日常は“砂上の城”って事か…」



周辺地域に散って情報収集をしてくれている隠密の報告書──竹簡を読みながら溜め息を吐く。

一難去って、また一難。

そんな一難がゴロゴロ転がっている世の中。

一難のバーゲンセール所か、飽和状態。

それだけに自分の責任の重さが判る。


ただ、少しは楽がしたいです。

平和を下さい。





 李典side──


日が沈み、夜の帳が空を包み込んで。

言われた通り、師匠の──忍はんの部屋に来た。

この日の為に用意しておいた勝負下着や夜着。

凪達にも色々と助言を貰って来たんやしな。

心の準備も万全、無問題やっ!。



「──まっ、待ってぇなっ、アカンッ!、ウチッ、んンッ、ホンマに無理ィイッ、アァッ!」


「そう言う割りには真桜の身体は貪欲だけどな?

さっきから「全然足りへんって!、もっとやで!」って催促してきてるんだしさ」


「むっ、無駄に真似が上手いわァンッ!?、ソコッ、アカンって、今アカンッ、アカンからァアァッ!、そんナにしたラァッ、ウチ可笑しなるゥウッ!」


「フフッ、可愛い真桜を、もっと見せてくれ…」


「ぁアッ、ヤッ、優しい言い方の癖に、はっンッ、げし、過ぎやろっ、アホォオッァアアッ!!」



準備?、そんなもん、何の役にも立たへんわ!。

何やねん、これっ!、忍はん滅茶苦茶やっ!。

もう自分でシてる時と全然ちゃうし!。

自分でシてる時は程好く加減出来るんやけど。

忍はんにシて貰ぅてるから加減出来へん。

しかも、それが自分でするより凄いからアカン。

加えて、忍はんの言ぅてる通りや。

口では何ぼ「無理や」言ぅてても本音では真逆。

「もっと、もっとシてや」と望んでいる。


ただ、今のままやと自分が壊れそうで怖い。

その不安と恐怖心が溺れる事を躊躇させる。






「──あら、遅よう(・・・)、真桜

どうだったのかしら、初夜の感想は」


「………アカン、アレは無理や…

ウチ、もう忍はん無しでは満足出来へんわ…」


「ふふっ、ええ、そうでしょうね」



一夜で陥落したウチを見て可笑しそうに笑う華琳。

せやけど、それは揶揄ってる訳やない。

「だから言ったでしょう?」という先達としての、先に溺れてしまっている女としての笑顔。


…まあ、実はウチの置かれた状況は華琳達によって意図的に作り上げらとった訳で。

それは関係の変化を怖れ、悩んどったウチの為。

ホンマはな、かなり前から忍はんを好きやったし、抱かれたいとも思っとったんやけど…。

中々、自分では踏み出せなんだウチは皆と一緒には祝言を挙げられへんかった。

それを悔やんだからこそ、皆に相談して。

…まあ、そういう流れに為った訳やね。



「ただまあ、祝言は暫く待って頂戴ね

色々と都合の問題も有るから」


「それは判っとるし、構わへんよ

今は公式には妻やないままの面子も必要やしな」



そう言って華琳に笑い掛ける。

ウチは急がへんし、仕方無い事やしな。

それに、今暫くは夫婦より恋人で居たいしな。



──side out



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