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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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   呆気無く儚い


“女三人寄れば姦しい”とは上手い表現だろう。

個人差は有るが、概ね女性は話好きだと言える。

“井戸端会議”という言葉が有るが、其処に男性が含まれるイメージは先ず湧かないと思う。

勿論、話好きな男性も世には沢山居るだろう。

いや、寧ろ咄家や吟遊詩人等は男性のイメージだ。

そういった点で言えば、老若男女問わずに話好きな者は少なくはない、という事なのだろう。

進化により“言葉”を獲得した人間らしさの象徴と言えなくもないと個人的には思う。



「──初めまして、皆様

私は黄叙、字を子礼、真名を璃々です

まだまだ未熟ですが、宜しく御願い致します」


「初めまして、私は曹操、真名は華琳よ

貴女達が御兄様の素晴らしさを理解してくれた事を本当に心から嬉しく思うわ

これからは御兄様の妻として、共に支え合い、高め合って行きましょう、璃々」


「はいっ、華琳“姉様”!」



無事──かは微妙だが、取り敢えず会談は終了し、予定していた通りの会食の場へと移動した。

…まあ、俺主体の予定通りじゃないんだけどさ。

それを愚痴愚痴言ってても仕方が無いので切り替え当面の問題等に取り組もうと考えている訳です。


そんな俺の傍では華琳達が自己紹介し合っている。

それは構わないし、良い事なんですがね。

のぅ、愛妹さんや?。

然り気無く、黄叙──璃々を義妹化しているのは、どうにか為りませんかな?。

世の中では、洗脳とも呼びまする事ですぞぇ?。

……為りませんか、そうですか……はぁ~……。



「また新しく、熱心な信者が増えたな」


「言うな白蓮……それとも、それは振りか?

このまま君を連れ去って綺麗に奏でたいと?」


「なぁっ!?、なな何を言ってんだよ昼間っから!」


「ああ、そうだな、やっぱり夜の方が良いよな」


「そういう事じゃァンッ!?、ァあっ、ばっ、馬鹿!

何処に指を──んんっ!?、ま、み、耳はアッ!」






白蓮の羞恥盛り、甘く秘かな蜜の香り添え。

八つ当たりと裏切りへの仕返しと愛を込めて。

…うむ、程好い柔らかさと弾力が食感を楽しませ、ほんのりとした酸味は──恐らくは檸檬かな。

シンプルな印象の見た目に対し、深みの有る味。

しかし、懐かしい家庭的な安心感も与えてくれる。

いやはや、何度でも食べたくなりますなぁ~。



「馬鹿っ、鬼畜っ、外道っ、色魔っ、忍っ」


「そんなに誉めるなよ、精一杯に張り切るぞ?」


「これ以上入るかっ!」



会話が弾む皆の意識の隙間を擦り抜ける様に白蓮と“本の少しだけ”姿を眩ませていました。

…ん?、「いや、絶対にバレてるだろ」と?。

ええ、バレてるでしょうね、俺達は主体ですから。

でも、その辺りを察して忖託してくれますから。

だから、気にしなければ問題は有りません。

「問題有るだろ!」という白蓮の抗議は俺の耳には届く事は無いでしょう。



「いやはや、何とも仲睦まじい事じゃのぅ

その様子では御世継ぎの心配は無用そうじゃな」


「ああ、心配無い、子作りなら俺に任せろ」


「ちょっ!?、率直に言う事じゃないだろっ?!」


「──だそうだが、どう思う、華琳?」


「身も心も御兄様に委ねれば万事解決です

子孫繁栄、間違い無しでしょう」


「言い切ったっ!?、いや、確かに子供の心配だけは必要無いだろうけどさっ!

──って、何言ってんだ私いぃぃっーっ!!」



側に来た黄蓋の何気無い一言から始まったコントは白蓮の自爆と赤面というオチで終わった。

ただ、自分で言って置いて何だが子作りに関しては無駄に自信が有ったりします。

ええ、避妊してなかったら、今頃は全員が妊娠中の状態だったでしょうからね。


でもな、華琳?、俺が話を振った訳だけど其処まで言い切られると逆に恥ずかしくなるんだ。

そして何より、然り気無く信仰を広め、その序でに信者が増やそうとしない。

黄蓋達は大丈夫そう……でもないかもなぁ…。

原作の姿を知っているから油断は出来無い。

まあ、それでも俺は負けませんけどね。



「はっはっはっ、実に頼もしい事よのぅ

出来れば、儂等も御情けを頂きたいものじゃな」


「あー…その“御情け”って言い方は止めような

確かに世の女性の立場が低いし政は男社会だから、そういう言い方が生じたんだろうけど…

女性を格下──下手すると道具扱いしてるみたいで嫌なんだよ、俺としてはな」



そうは言っても直ぐには切り替えられない事だ。

華琳達の様に幼い頃から俺の価値観に倣っていたり流琉達みたいに時間が有れば問題無いんだけど。

華琳達の年齢から上の女性の場合、染み付いている価値観だから大変なんだよね。

…まあ、最中に出て萎えるって事は無いけどさ。

そういう時は言葉を選ぶ余裕も無い分、率直な望みとしてだから俺も男として嬉しいし。


つまり、男に媚び、擦り寄る様にして言う女性達の自分を卑下する言葉に聞こえる状況が嫌な訳。

勿論、生まれ育った環境の違いも有るんだけどな。

俺達の場合は義母(かあ)さんを始め、周囲に居た女性達が基本的に強かったのも良い意味で影響した。

だから、世の中の価値観に合わせ過ぎず、外れないという絶妙な線を引き保つのも中々に大変だ。

…ん?、「お前にコンプライアンスを気にしている言動なんて無かっただろ?」ですと?。

いやいや、滅茶苦茶コンプライアンス大事にしてるMr.コンプライアンスでがすよ、(アッシ)は。



「っ…ほぅ…御主は変わっておるのぅ

じゃが…成る程のぅ

だからこそ、御主を中心に女達は集う訳じゃな」


「俺が意図して中心に居る訳じゃないけどな

気付いたら、こうなっていただけだ」



会話の先を読む様に華琳達が俺に抱き付く。

嬉しいけど、恥ずかしいから止めて下さい。

…白蓮と致してなかったら、ヤバかったかもな。



「何、御主が真に英雄だからこそ、女達は群がる

その血を、その種を授かり、次代に繋ぎ、育む事は女として生まれた者の誉れであり、誇りよ」


「…お前は恋愛感情は気にしないのか?」


「夫婦仲が睦まじい事は良い事じゃよ

ただ、恋愛感情(それ)に振り回されて状況が見えなくなる様な事だけは考え難いのぅ…

尤も、それは儂自身の今の立場故の意見じゃ

一般家庭の娘であれば、恋愛重視も結構、構わぬ」


「…賛成はし難いが、理解は出来るな

血筋や家柄に伴う責任は否めない事だからな

放棄するなら兎も角、我が儘を言うだけなのは何も理解していない自らの愚かさの露呈に他ならない

ただ、自分が親の立場になると難しい話だが」


「まあ、そうじゃろうな…

しかしじゃ、その両方を満たす事の出来る男なら、女であれば放っては置かぬ

違うかのぅ、白蓮殿?」


「一々私に振るなって!」


「はっはっはっ、初々しい事で何よりじゃな

まあ、こうして笑って居られるのも御主達の御陰…

改めて礼を言わせて貰いたい」


「気にするな、此方には此方の事情も有ったからな──って、あっ……」



言ってから失言に気付いた白蓮が固まった。

俺達は遣ってくれた白蓮を見ながら溜め息を吐く。

黄蓋の話の運び方が上手かったのは確かだろうが、白蓮が気を抜き過ぎていたのも要因だろう。

全く…今夜は迂闊な口を教育しないといけないな。

フッフッフッ…覚悟しておけよ、白蓮?。


ブルッ!、と身震いする白蓮の事は放って置いて。

目の前の猛禽類の様に鋭い視線を向ける黄蓋達へと意識を向けて思考を切り替える。



「秘匿する理由は解っておるが、こうして共に歩む事となった今、話しても構わぬだろう?」


「…まあ、言いたい事は俺達も理解はしている

しかしだ、政治に於いては物事の真実と事実が常に同じである必要は無い

寧ろ、それが異なる事の方が多いのが現実だ

察しているだろうが、璃々に口止めしたのは俺だ

その理由は少しでも外部干渉の可能性を消す為だ

例え、韓玄が民から嫌われているとしても、韓玄の謀略を俺達が暴き、阻止したと知られれば…」


「……璃々や儂等の立場を悪くする、か…

だが、それは御主との婚姻で解決する話じゃろ?

民は良き主君を迎えられる事を喜ぶ筈じゃ」


「結果的には同じ様でも過程の違いで印象も変わる

俺達としては故安県には自立して貰いたかったから関与した事実は伏せたかったんだよ」


「故安県の自立を希望していたのは忍だけだけどな

私達は、こうなるだろうって思ってたから」



復活して何気無く口を挟んで来た白蓮。

「…おい、誰の所為でバレたんだ?」と問い詰める様に睨めば顔を逸らし外方を向く。

全く…実際には俺と一緒で踊らされていた癖に。



「こうして知られてはしまったが、公言は厳禁だ

お前達も璃々の立場を悪くしたくはないだろ?」


「勿論、その様な事は儂等も望んではおらん

…しかしじゃな、儂等としても、多少の“旨味”が欲しいのが本音かのぅ…」


「…本音、というなら率直に言ったらどうだ?」


「確かにのぅ…なら、率直に言うとするか

儂等は──いや、儂は御主の子種が欲しい

図々しく御主の妻に、とは望まん

ただ、儂が一人の女として望む子を成す相手には、御主以外には考えられぬのでな」


「率直過ぎるだろ…」


「御主が言えと言うたじゃろうに…

まあ、儂は男は知らぬが、女として魅力が無いとは思わぬのでな、好きにしてくれて構わぬぞ?」



そう言って、現状では俺が知る限り、最大・最狂の双矛を突き付けてくる黄蓋。

両手で自慢の巨峰を無造作に持ち上げ、揉み握り、揺らしてくれる出血大サービス。

それを「好きにしていい」と言われれば、男ならば思わずガン見して喉を鳴らしてしまうだろう。

そして、側に居る彼女や妻に怒られるのが御約束。

しかし、この徐子瓏、この歳で爛れた生活を伊達に送ってはおりませぬ。

梨芹・愛紗という我が家のツートップで鍛え上げた胆力を舐められては困りますなぁ、ハッハッハッ!…………デ、デカッ……。



「────御兄様?」


「俺を相手に望んでくれる事は光栄だな

だが、子供を作るだけ作って後は放置する、という無責任な真似は俺には出来無いんでな

もしも、本気で俺との子供を望むなら、その生涯を俺と共にする覚悟を、先ずは示して貰いたいな

その時は嫌だと言っても絶対に離さないけどな」


「──っ……そ、そうか…

それが御主の意思ならば尊重するとしよう…」



口から出任せではなく、俺の本音を伝える。

真剣な表情で、結構恥ずかしい台詞だが。

今だけは気にしない事にする。

例え、後々の黒歴史となろうと構わない。

絶対零度の華琳の視線から逃れられるなら。


いや~、危ない危ない、危なかったな。

一瞬、マジで意識を持って行かれ掛けたわ。

軈て“魔乳”の魅惑・蠱惑の御乳様、半端無い。

俺なんかより余程、御神体としての価値が有るよ。

……そうか、万が一にも華琳の布教が成功したら、俺も対抗して布教すれば良いんだ!。

いや、良い訳ないんだけどな。

何馬鹿な事を考えているんだろうな、俺は。

…それだけ動揺したって事だな。

…恐ろしい乳だ、黄蓋…。



「…まあ、俺も男だから黄蓋の様な魅力的な女性に求められるのは男として嬉しい事だ

だからこそ、一人の男として、一人の女性として、互いに理解した上で向き合いたいと思う

本当に、本気で俺との子供を望んでくれるのなら、しっかりと繋がりを確かな物にして行こうな」


「………のぅ、白蓮殿?

この徐恕という男は本当に実在しておるのか?」


「あ~…まあ、信じられない気持ちは判るけどな

ちゃんと実在してるから

…と言うか、その内これでもかと実感するって…」



黄蓋に苦笑しながら答えた白蓮。

ぼそっと呟いた一言は俺には聴こえていますよ。

因みに、白蓮さんや、それは何方の意味です?。

まあ、何方にしても白蓮の言う通りですけど。


だからね、華琳さん?。

他の人に気付かれない様に尻を抓らないで下さい。

御互いに氣を使って攻防しているから地味に痛みが効いていますから、マジで。

黄蓋の巨峰に嫉妬するだなんて…全く。

沢山可愛がって上げますから、覚悟してなさい。

「約束ですからね」と言う様に微笑む華琳。

可愛過ぎます。














         とある義妹の

         義兄観察日記(えいゆうたん)

          Vol.15

















 曹操side──




△○月●日。

故安県の内部に火種を感じた白蓮の頼みで御兄様が極秘裏に処理に向かう事になった。

御兄様なので全く問題は有りませんでした。

……いいえ、御兄様の女装は危険でしたね。

もう少しで私は「御姉様」と呼ぶ所でした。

御姉様な御兄様が相手なら“百合”も有りです。


それは兎も角として。

流石は御兄様、あっさりと黄叙を落としたました。

恐らくは黄忠もでしょう。

ですが、御兄様は自らの関与を秘します。

意図は判りますが、それでは問題の先送りです。

ですから、今回は私が以前から準備していた手を惜しまず使う事にしました。

その事を御兄様には看破されたら……。

…激しく攻める御兄様、嗚呼、私は£ゐξξゑゐ£






「此処で切るには惜しい手だったんじゃないか?」


「そんな事は無いわ、愛紗

御兄様の情報操作と管理技術は本当に凄いもの

此処で動かなかったら、故安県を手に入れる為には数年の時を必要としたわ

御兄様は大胆不敵だけれど、それ以上に慎重よ

穏達の事も有るから、早い方が良いのよ」



会食の最中、御兄様は白蓮を連れて消えている。

氣で探れば何処に居るのかは判るけれど。

私が探っている事を感知されるので遣らない。

…まあ、何を遣っているかは言わずもがなね。


私は黄叙──璃々達と会話を終えて一息吐く。

其処に話し掛けてきた愛紗と話している。

私が動いた事は、あっさりと御兄様に看破されて、「遣ってくれたな」と苦笑しながらも怒りは無く、頭を強く撫でる掌から誉めてくれていると伝わる。

その瞬間の私の歓喜の度合いは言葉に為らない。

出来れば、そのまま御褒美も欲しい所だけれど。

私は空気は読めるので口には出しません。



「御兄様は私達に害が及ぶ可能性に関しては物凄く敏感で躊躇無く対応されるわ

だけど、御自分に対する害意や悪意には端から見て驚く程に、意外にも無頓着なのよ」


「………そうだったか?」


「ほら、愛紗ですら、そう思うでしょう?

でもね、それは当然と言えば当然なのよ

愛紗も知っている通り、御兄様は強いわ

それこそ本気なら単身で天下統一を成し得る程に

御兄様を傷付ける事は出来ても、致命傷を与える事なんて私達でさえ至難な事でしょう?」


「それは……まあ、確かに…」


「だから、御兄様自身も無頓着なのよ

ただ、御兄様は優しいけれど優し過ぎでもあるわ

勿論、敵や悪党に対しては容赦も慈悲も無いわ」


「ああ、その点に関しては昔からだからな」


「御兄様はね、線引きが極端なのよ

大事・無可否・不要と分かれているわ

私達は大事、民は無可否、賊徒等は不要、とね

大多数が無可否で、だからこそ、隙も多いのよ」


「……私には逆に思えるが…」


「愛紗は愛紗のままでいいわ

これは私の役目、私が遣りたい事だから」



そう、御兄様の優しさに突け込んで群がる悪女(害虫)達を駆除するのは私にしか出来無い事だもの。



──side out



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