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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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33話 悪戯な運命


梨芹と一線を越え、歳上・同年・歳下と三階級制覇を成し遂げた今の俺はWHA(世界ハーレム協会)の史上最高のセクサーだろう。

──痛っ!?、ぁちょっ!?、石は止めてっ!、生卵!?、臭っ!?、腐ってるよっ?!、せめて新鮮なのをっ!。

心の中で位は馬鹿なままで居させて下さいっ!!。


──とまあ、精神の安定を頑張って調えています。

いや、本当に大変なんで。

華琳達は仲が良いから変に危険な事は無いんだけど。

残り半数の恋達は違うから気付かれない様にするのは色々大変なんです。

ただね?、ハーレムっぽい感じだけど、違うから。

一見、勘違いしそうだけど本当に違うから。

…それはまあ、三人の事は好きだし、本気だけど。

十五歳で婚約者三人とか…色々精神的に重いっす。

「可愛い婚約者三人も居て贅沢な事言うな!」と言う奴が居るなら言いたい。

「幸せに出来る保証も無く三人と付き合えるか?」とマジで言いたい。

本気で、真剣だからこそ、色々考えるんです。


──という感じで一週間。

隙を狙っては華琳達三人とイチャついてますが何か。

だって仕方無いじゃない。

可愛いんだもん!。

“誘われて”断るなんて事出来ませんよ。

男が廃りますから!。

………うん、御免なさい。

かなり強がりました。

本当は流されて喰われ掛けギリギリで喰い返しているというのが実情です。

だって二人きりじゃないと普通は躊躇うよね?!。

華琳なんて特に積極的で…兄は堕ちる寸前ですぞ。

さあ、姫、後一押しですぞ──って、誰だ、その俺。

爺やっぽい、其処の俺。

裏切る気かっ?!。

…え?、何?、「儂は姫の幸せが第一じゃ、御主の事なぞ知った事か、馬鹿め」──って、自分に言うか、この糞爺な俺めっ!。


──なんて自分割れしてる場合じゃないんですよ。

目の前には深々と頭を下げ感謝を示している女性。

着ている服は薄汚れていて貧しさを感じさせるのだが本人自身は矛盾する様に、非常に豊満な肉付き。

着ているだけに等しい様な薄く地味な生地だからか、尚更に強調されている。

見た目、首輪や鎖を付けて整えれば立派な奴隷コス。

何か可笑しい表現だけど。



「危ない所を助けて頂き、本当に有難う御座います

私、司馬防と言います

その…御礼を致したいのは山々なのですが何分御渡し出来る物も御座いません…

ですので、わ、私の身体を御好きに──」


「──ちょっと、話し合う必要が有るかな、うん

彼方、行こうか?」


「は、はいっ…

は、初めてなので…あの…出来れば…や、優しく…」


「うん、今は黙ろうな?」



華琳達から冷たい眼差しを向けられながら、助けた亀──ではなく薄幸美少女を連れて二人だけで離れる。

…え?、何で“二人きり”なんだって?。

はははっ、疚しい事なんて無イデスヨ?。




事の始まりは既視感の有る御約束な真桜イベント。

一昨日に発った村で聞いた話らしいが、真桜は笑顔で「実はな?、この先に有る“布ヶ山”の奥には百年前“黒夜叉”っちゅう盗賊の根城が有ったらしいんや、其処には今も発見されずに眠る莫大な財宝が…」等と有り勝ちな噂を口にした。


勿論、誰も本気にしてなどいませんよ。

「またか…」と慣れた様に一つ息を吐いてから真桜の話に耳を傾けています。

“慣れて”いますから。

最初は二人が家族に為って二週間程経った時の事。

地形利用の勉強をした際に真桜が言った“宝伝説”が切っ掛けで皆で探した。

直ぐ近くだった事も有って俺は暇潰し感覚だったが、その結果は深谷の主らしい体長10m級の大蛇。

容易く倒しましたけどね。

ただ、華琳の正論責めにて精神的に真桜が死に掛けた事も有って、「こういった気分転換も楽しいだろ?」なんて助け船を出したのが良かったのか悪かったのか俺には判らないが。

それ以来、真桜は、そんな話を仕入れてくる様に。

華琳は勿論、凪や愛紗さえ今では「はいはい…で?」という感じである。

慣れとは凄い事だね。


──とまあ、そんな感じで今回も結果は期待などせず山菜採り感覚で入山。

そしたら、近隣から流れて来たのだろう賊徒に追われ逃げている美少女が!。

ならば助けるのが男の性。

俺は決して悪くない。

そんな訳で賊徒達を一蹴し見事に救出しました。

──というのが経緯です。


華琳達から離れた所で俺は念の為に防音結界を張って会話の内容を隠す。

口の動きが判らない様に、木陰を上手く利用して。



「──で、誰だ、御前?」



佩いている直剣を音も無く抜き放ち、助けた美少女の喉元に突き付ける。

反応なんて出来無い速さ。

当然ながら、状況の理解に数瞬を要し──慌てる。



「まっ、待って下さい!

私は怪しい者では──」


「“不夜原 深咲”の姿と声なのにキャラトレースが下手過ぎるなんて怪しい奴以外に有り得るか、だろ?──“ロリ女神”様」



そう言った瞬間、驚きから完全に素に返って停止。

そして、見破られた事実に深く溜め息を吐きながらも両手を上げて降参ポーズ。

観念したらしく、苦笑。



「久し振り、元気そうだね

“与梨 貴斗”くん」



「正解だよ」とは言わずに敢えて、俺の前世の名前を口にする辺り、間違い無く俺を転生させたロリ女神。

あの性悪さが窺える。

一応、感謝はしているから直剣は下げてやるが、鞘に収めはしない。

少なくとも、信頼が出来る保証は何も無いし、現状で“味方”とも限らない以上油断は出来無いからな。





「それにしても、あっさり見破られたのはショックね

結構頑張ってたのに…」


「ロールプレイヤーの方に大いに謝りなさい

そんな“なんちゃって”が通用すると思うな、小娘」


「うわっ…あの時の会話、根に持ってたんだ?」


「遣られっ放しだったから今返しただけだ

あと、為り切れてないから俄ファンは騙せても、俺の眼は誤魔化せない」


「…本当に好きなんだね」


「俺の“嫁”だからな」



──不夜原 深咲。

“Blades cross Blood”に登場する敵キャラ。

主人公達と同じ年齢だが、過酷な生い立ちから世界を創り変え様とする少女。

…一応、少女な設定。

真っ直ぐで、不器用で。

だけど、誰よりも本気で。

有り触れた悲劇を無くす為走り続けた少女。

最後は騙され利用されても自らの理想を貫き通して、未来を託し散って逝った。

その生き様は主人公陣営を食う超人気振り。

二次物では救済物が多く、エロ物よりも泣き物が多い非常に珍しい存在。

新生児の女の子の名前人気ランキングでは同じ読みの“美咲”に代わり三年連続一位を獲得した程。

雪の様に白く、御尻を隠す長さの美しい髪。

青紫色の宝石の様な双眸。

日本人と白人の中間辺りの肌の色で、身長162cm、体重54kg、股下87cm、88/60/85、O型。

誕生日は──ごほん、つい熱くなってしまった。

いやはや、悪い癖ですね。



「──という訳だ」


「うん、何て言うか…

“折角だから、好きな娘の姿にしてあげようかな”と考えた浅慮な私を赦して」


「判って貰えたならいい」



寛大な俺は、俺の彼女への想いを軽んじたロリ女神を赦してやる。

彼女は俺の嫁だが、決して俺だけの嫁ではない。

彼女の生き様に心を打たれ人生が変わった人々は世に沢山居たのだから。

俺の嫁な彼女は一人だが、一人一人の彼女が在る。

そう、彼女は偉大だから。

だから、俺は赦す。

彼女ならば、赦すから。



「え〜と…と、取り敢えず生中三つと枝豆と鳥串で」


「セットが御得ですよ?」


「あっ、じゃあそれで

──って、違うし!

自分で遣ったけどっ!」



空気に堪え切れず、ボケに逃げたロリ女神に乗っかり付き合ってやれば、自分でノリツッコミして落とす。

あの時も感じてた事だけど結構軽いよな、此奴。

まあ、個人的な印象だけど嫌いではないな。

尤も、残念美人だけど。

遣るなら徹底しろ。

俺の嫁を穢すな、馬鹿め。





「──で?、何の用だ?

態々“実体”を使ってまで会いに来るなんて…」


「惚れてないわよ?」


「安心しろ、俺もだ

如何に見た目が嫁だろうと紛い物に日和はしない」


「凄い複雑なんだけど…」


「いいから、本題早よ」


「はいはい…まあ、簡単に言うとね?、この世界には“歪み”が出来てるのよ」


「……俺が来たからか?」


「ううん、その逆よ

その歪みを“正す”為に、貴男は此処に居るの」


「…………」


「…何よ?、その「げっ、マジかよ?、面倒臭ぇな…誰か別の奴遣れよ…」的な遣る気の無い、腐った魚の濁った様な眼は…」


「判ってるなら早い」


「貴男しか居ないのっ!」


「──だが、断る!」


「…私の事、好きに出来るとしたら?」


「あ、間に合ってます」


「ちょっとは悩めっ!

私、女神なのよっ?!」


「“彼処”に居ればな?

今は俺と同じ人間だろ?」


「────っ!!」



流石と言うべきか。

散々巫山戯ていても肝心な部分では女神らしい。

俺が“見抜いている”事を即座に理解するんだから。



「……はぁ〜……本当に、何時からな訳?」


「アンタしか該当する者が居ないって時点で、だな

“依り代”や見た目だけの“偽体”だったら一時的な降臨なんだろうけど…

態々、“転生”してるなら面倒な予感しかしない

だから、さようなら」


「逃がす訳無いでしょ?」


「嫌ー、犯されるー」


「棒読み過ぎるわよ…

せめて、本気で遣って」


「遣って良いのか?」


「……はぁ、私の負けよ」



再び降参だと両手を上げて溜め息を吐くロリ女神。

華琳達が一体“何方等”を信じるのか。

それは言うまでもない。

繋がりの深さ、長さが全然違うのだから。



「その歪みは、この世界を破壊するレベルなのか?」


「ええ…ある意味では命の根幹から歪めてね」


「…はぁ〜…貧乏籤か…

けどまあ、守るべき存在が有る以上は遣るけどな

でも、何でアンタまで?」


「貴男を導く為よ

まあ、私のミスで説明する前に送ったからね…」


「何だ、自業自得か」


「煩い、自覚してるわよ」






「──という訳でだ、彼女──司馬防も同行する」


「宜しく御願いします」


「いえ、判りませんから」



冷静に愛紗が切り捨てる。

戻って第一声が問答無用な言葉だったら当然だな。

俺でも同じ様に言うね。


…ただまあ、事が事だけに話せないんだよな。

俺だって詳しい話は後から訊くつもりだから。



「…司馬防、貴女に一つ、訊いてもいいかしら?」


「はい、何でしょうか?」


「貴女は御兄様の為に命を懸ける覚悟は有る?」



視線だけでも射殺せそうな華琳の本気の眼差し。

如何に女神だろうが相手は本物の英傑でもある。

“全く動じない”という事は有り得なかった。

ロリ女神──司馬防は息を小さく飲み込んだ。

だが、流石と言うべきか。

華琳の視線を逃げる事無く真っ向から受け止める。

「嘘偽りは赦さないわ」と端から見ている俺でも判る華琳の過去一の気迫。

それを受け、真剣に考えて司馬防は口を開いた。



「…助けて頂いた命です

粗末にするつもりは毛頭も御座いません

ですが、必要と有るなら…

私は全てを捧げます

私は、徐恕様に世界を導く可能性を感じています

その為ならば、惜しみ無く徐恕様に尽くしましょう」


「…御兄様、此処は彼女の意志を汲みましょう」


「……その心は?」


「御兄様の素晴らしさを、その在るべき姿を見抜いた彼女は同志です!」


「すまん、司馬防、今回の話は無かった事に──」


「──御兄様っ!?

何故ですかっ?!」


「当たり前じゃあーっ!

まだ諦めてないのか?!」


「当然です!、御兄様こそ世界を統べる御方っ!

ですから、今こそ御兄様が立つべき時なのです!」


「立たないからっ!?」



「此方は勃つけどな」とか下ネタを言いそうになるが気合いで飲み込む。

いや、訳の判らない空気に堪えきれないんで。

司馬防も吃驚してます。


──と、そんなこんなで、司馬防──咲夜(さくや)と真名を預け合う華琳達。

無事?、加入を果たす。

色々億劫になる俺を他所に世界は今日も廻る。





 司馬防side──


私は、“与梨 貴斗”──現在の“徐恕”を此方等に転生させた存在。

あの後、お祖父様と色々と話し合い、私自身が転生し“現界”する事で説明し、序でに不手際の謝罪と償いをするという事に決定。

いやね?、しつこく絡んで誘ってくる男がいるから、ウザくてウザくて…。

其奴からも離れられるし、個人的に“人の生”も経験してみたいって事も有って遊び感覚で転生した。


──直ぐに後悔した。

私は彼と同じ歳になる様に赤子からのスタート。

途中現界は世界に影響する可能性が高いので出来ず、彼とは違い特典も無い。

まあ、自我が有るから私の知識や経験が特典と言えば特典なのかもしれない。


だけど、どうにもならない現実というのは有る。

私は貧しい家に生まれた。

兄姉二人ずつに弟妹一人の七人兄妹の第五子・三女。

はっきり言って、奴隷だと思ってしまった位に以前と何もかもが違った。

同時に如何に以前の自分が恵まれていたのか。

それを思い知った。


それでも十歳に成るまでは家族で笑い、生きていた。

最初に兵士になると村から出た次兄の訃報が届いた。

次に、十一歳になった年に父が熊に襲われて死亡。

村人も十六人が犠牲に。

十二歳の時、幼馴染みへと嫁ぐ直前の長姉の急死。

そして爆弾が爆発する様に村に拡がった疫病。

十三歳の時、疫病が終息し生き残ったのは私一人。

村は実質的に終わった。


私は生き残りだと判ったら始末されてしまうと考え、半年間、山に身を潜めた。

しかし、見よう見真似程の武術では生き残れない。

だから、知恵を磨いた。

以前と今生、両方の知識と経験を活かして。

私は必死に生き抜いた。


それから誰もしらない地を目指して移動をし、助けた老夫婦と暮らす様に。

けれど、十五歳になった時村は賊徒に襲われた。

普通の猪が相手なら一対一でも狩れる程度の弓の腕も数の暴力には叶わない。

村は滅んでしまった。

唯一の救いは老夫婦が既に他界していた事。


再び一人になった私。

ただ、十五歳──此処では成人とされる年齢。

彼が、動き出す。

その可能性が有るならば、運命を信じよう。

私の使命を果たす為に。

ただ──それでも一つ。

もしも叶うのなら──私は世界を少しでも変えたい。


そんな中、また賊徒に遇い捕まり、犯され掛けた時。

私を助けてくれたのが彼。

出来過ぎな位に格好良く。

私達は再会を果たした。

…悔しいけど、一瞬だけど心が惹かれてしまった。


ただ彼の本心が判らない。

彼の本質が掴めない。

悪人ではないのだけど。

彼の見詰めている未来。

それを知りたいと思う。

共に歩いて、生きながら。



──side out。



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