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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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     天へと向ければ


ちょっとした妊活相談が、何故か賊徒退治に。

いやもう、慣れたと言うか低難易度クエストを何度も強制受注されている感じで諦めてますけど。

彼奴等、本当に何処にでも出て来るよな、マジで。

「そういう時代だから」で片付けられなくはないが、それにしても可笑しい。


ゲーム内の無限に涌き出るモンスターとは違う。

賊徒を討伐すれば数は減り被害は減少する。

ただ、次から次に出て来る可能性は否めない。

それは仕方が無い部分だが賊徒に身を堕とすのは民。

分母が“民”とするならば分母を越えた分子の数とは“余剰”となる。

その溢れた分子が賊徒へと身を堕とす訳で。

分子の数が減れば必然的に減少する筈なのだが。

何故、減らないのか。

彼奴等は細胞分裂でもして増殖するのだろうか。

理解に苦しむ現象だ。


まあ、それは兎も角として後始末をしながら思うのは山中で出逢った少女。

そして彼女から聞いていた生存している可能性の高い別の少女の存在。

李典と楽進だ。

李典とは話はしたが本人が名乗った訳ではない。

楽進は本人が気絶する前に確認を取れた。

原作で彼女が負った傷痕を正確には覚えてはいないが賊徒の頭との戦いで負った傷痕は全身二十七箇所。

ただ何れも致命傷ではない辺りは彼女の才能の片鱗が現れているからだろう。

それでも、俺が来なければ出血多量で死んでいた。


“イベントクリア”という意味でなら、間に合ったと喜べるのだろうが。

正直、素直に喜べない。

彼女達を含め村の生存者は十一人だった。

二百人は居た中、十一人。

僅か5%の生存率。

低いと取るか高いと取るか難しい所だろう。

だが、そんな事は兎も角、コンテニュー(遣り直し)の出来無い現実を前にして。

最善だったのか。

嫌でも考えてしまう。

「愛紗達も居れば…」等の“たられば”も含めてだ。



(…まあ、考え過ぎてても仕方無いんだけど…

それはそれとして、于禁は居なかったな…)



生存者の中にも、死亡者の中にも、彼女は居ない。

行方不明者は確かに居るが全て焼死体の身元不明者と人数が合致している事から逃げ延びた可能性は無い。

また焼死体の中に李典達と近い年齢の女性も居ない。

つまり、あの村には彼女は居なかったという事だ。


ただ、居なくても不思議に思う事は無い。

“違い”は有るのだから。

この時代、彼女が生き残る可能性は確かに有る。

だが、ゲームの様に都合の良い事は起きない。

これは厳酷な現実。

彼女に軍将と成れる才能が有るのだとしても現時点の彼女は平凡だろう。

原作の初登場時点の彼女も設定よりは弱い筈だ。

それが現実となれば彼女は生存出来る可能性は低い。

“守られて”無事なだけ。

だから、既に死亡している可能性も有り得る事だ。




そんな“異なる縁”を前に商人の住む町を後にした。


発つ前に目覚めた李典とは改めて話す事が出来た。

二人は俺より一歳下らしく現在は十二歳。

歳の近い者は二人だけで、その為必然的に一緒に居る時間も多かったそうだ。

うん、于禁は居なかった。

三羽烏としては物足りない感じはするけど、能力的に不可欠な人材ではない。

正直、居ても居なくても、何方でも構いません。


そして、さらっと時は経ち二ヶ月後の定期交流。

真っ先に挨拶に遣って来た商人の顔を見て、察した。

もうね、半泣き状態で俺に頭を下げてくるんだもん。

判らない訳が無い。

取り敢えず、奥さんは妊娠出来たみたいです。

まあ、そうは言ってもまだ不安は残るだろうからね。

色々と助言はしといた。

ある意味、奥さんが無事に出産し終えるまで気を抜く事は出来無いからね。

だからまあ、関わった以上無事に産まれて欲しいから予定日が近くなったら俺が特別に滞在する事を約束。

…え?、華琳達?。

まあ、今回は予め予定して動けるからね。

全員で御出掛けします。

ああ、勿論、商人に負担は掛けませんとも。

俺一人分は依頼料としても皆の分は違いますから。

前回の華琳が特例だった。

それだけの事です。

兄は甘やかしませんので。



「はは、は初めまして!

わ、わわ私はっ、ががが、楽進と申しましゅっ!」


「緊張し過ぎやろ!

あ、徐恕はん、こないだは御世話為りました

其方の皆はんは初めましてウチは李典て言います」



ガッチガチに緊張しまくりはわあわツインロリの様に噛んでいる楽進。

意外にメンタル豆腐系だし原作の彼女よりも自然体な感じがしなくもない。

寧ろ、この少女さが残った楽進って可愛いな。

ハグしちゃいたい。

華琳達が居るから、絶対に遣りませんけどね。



「ああ、久し振りだな

楽進も元気な様な何よりだ

…それで今日はどうした?

態々俺に礼を言う為だけに付いて来たのか?」



ちょっと意地悪では有るが華琳達からの変な威圧感に堪え切れそうにないので、さっさと本題を切り出す。

何と無く予想は付くが。

自分の口から言ってしまう事は避けるべきだ。

言質を取られるのも同然な迂闊な真似はしません。


我に返って緊張が和らいだ楽進は李典と顔を見合せ、頷き合うと俺を見詰める。



「御願いします!

どうか、私達を貴男の弟子にして下さい!」


「住み込みで頼んます!」



楽進は普通だったのだが、何気に図々しい事を言った李典に対しては呆れつつも先に条件を出しておく事の重要さに気付けている点は個人的には高評価。

冷静に物事を見られる事は中々難しいからね。





「ほら、脇が甘いです!」


「痛あっ!?、ちょおっ!?、愛紗“姐さん”手加減!、手加減してやーっ!」


「安心しなさい、真桜

忍の本気の指導に比べたらこの程度は児戯です」


「ちょっ、ホンマにっ!?

師匠って鬼なんっ!?」


「亡き老師も同類でしたよ

だから、大丈夫です」


「……な、何がなん?」


「“死なない限りは”十分鍛練の範疇という事です」


「い、イヤァアァア──」



コントの様な遣り取り。

それを懐かしく思いながら目の前の弟子を見る。

座禅を組み瞑想をしながら氣を練り、循環させる。

ただそれだけの鍛練だが、最初は本当に苦労する。

それを無意識(常)と出来る域には時間が掛かる。

仕方が無い事だ。



「“凪”、量が増えたぞ

焦らずに、じっくりとだ」



そう言うと返事はしないが増加した氣が抑え込まれ、指定した量の範疇に収まり僅かに加速していた流れも元の循環速度に戻る。

凪──楽進は賊徒の頭との戦いを経て、氣を知った。

正確には限界を越えた先の死線ギリギリまで踏み込み越えなかったから、生きて戻って来られた。

老師が生きていたのなら、「その経緯は褒められた事ではないのぉ…」と言って渋い顔をした事だろう。

何しろ、邪法だからな。

とは言え、凪自身意識して遣った訳ではない。

だから責めはしない。

勿論、注意はするけどね。


弟子入りを志願した二人。

断る理由は少なかったが、可能性は無くはなかった。

ただ、二人は他の生存者と違って微妙な年齢だった。

最年少は5歳の男の娘。

…ん?、誤字じゃないよ、マジで“男の娘”ね。

衝撃的でした。

その子は商人の知り合いの所に養子に入ったけど。

その子が二人より年下で、二人の直ぐ上の者は今年で十七歳だった。

つまり、他の八名は全員が働き口が見付けられた。

しかし、二人は難しい。

勿論、「養女に…」という話は有ったそうだが。

二人は“一緒の”道を選ぶ事にして、俺に弟子入りを希望してきた。


素養は有るから問題無い。

それに加えて、故郷の村を失った二人の行き場の無い気持ちも理解出来た。

だから、弟子に迎えた。

まあ、“真桜”──李典が俺の事を“兄さん”と一言言った瞬間に、周辺気温が20℃程下がったが。

それは置いておこう。

もう、終わった事だし。

…うん、本当にマジでね。

どうして“こう”育ったか判らないんだよねぇ…。




それは兎も角として。

氣を知った凪は基礎体術を教えながらも、氣に重点を置いて指導する。

半端なままで万が一の時に使ってしまうと危ないし、最悪は命を落とす。

特に凪の場合は、既に一度“踏み込んだ”事が有る為余計に危うい。

だから、先ずは氣から。


対して真桜は、みっちりと基礎鍛練から入る。

氣に関しては、土台となる基礎が出来てからだな。

まあ、愛紗に梨芹に恋と、豪華な講師陣が居ますから原作以上になれる筈。


何気に張遼が加入するまで曹魏陣の長物の使い手って李典だけだからね。

李典自身、腕を磨くのにも難しい環境だった筈。

張遼を慕ってるのは単純に“同じ方言を使うから”が理由ではないんだろう。

実力が上で、自分を先へと導いてくれる存在だから。

李典は張遼を慕う。

その証拠に于禁は張遼とは親し気な描写は無い。

飽く迄も仲間、力量の上の上下関係に思えた。



(…それにしても、今後はどうしていくかな…)



二人を含め、基礎は全員に身に付けさせるけど。

その先の個人技に関しては慎重に為らざるを得ない。

原作通りの武器に対しての適性が高い事は判ってる。

華琳も愛紗も梨芹も恋も。

全員が長物向きだからね。

寧ろ、剣主体の面子が一人二人欲しくなる。


それはそれとしてだ。

超極秘プロジェクト・DN──“脱・脳筋”は順調に成果を見せている。

特に梨芹と恋は違うよ。

原作みたいな勝手な行動は遣りませんから。

そう、俺は勝ったんだ。

脳筋(呪い)は解けた!。


──ゴホンッ…失礼。

御恥ずかしい所を。

まあ、愛紗達三人は原作に沿った感じで行くけどね。

華琳は万能型だからね。

そういう方向で継続する。

問題は凪と真桜だ。

真桜は親が大工だった様で手先が器用だ。

“絡繰り”技師にしたいが現状では、技術的に確立は成されてはいない。

それを俺が指導していくか自主性に任せるのか。

其処が悩ましい所だ。

武としては重槍士としての方向で行くつもり。

馬超・趙雲の様な軽槍士の戦い方には天賦が要る。

それが真桜には無い。

だが、パワータイプでなら十分に見込みが有る。

きっと、彼女の螺旋が天を衝く日が来る筈だ。




一番悩ましいのが凪だ。

原作では体術一本の凪だが氣頼みの近接戦闘だけでは心許ないと思っている。

体術無双も不可能ではないだろうけど、其処に至れる保証は無いんでね。

俺としては手札を増やして体術メインでも臨機応変に戦えるオールラウンダーに育て上げたいと思うんだ。

いえね、体術って全武術の土台な訳ですよ?。

その体術が頭抜けてる凪は一点特化している者達には“同条件”では及ばずとも“総合力”でなら勝てると俺は思うんですよね。


ほら、公孫賛って原作では普通・器用貧乏・影薄いの代表格だけど、バランスは随一と言われるでしょ?。

二次でも公孫賛強化物って結構納得出来るしね。

だけど、楽進の強化方向は氣関係が殆んどだよね?。


そこで私は考えた訳だ。

「あれ?、実は楽進ってば公孫賛並みにチート化する可能性有るんじゃね?」と思い付けば、無理の無い、納得出来る強化案。

プロジェクト・K−1。

女の中の女達、出て来いや──ではない。

楽進“くノ一”化。


甘寧・周泰が隠密系だけど楽進に二人の様に隠密系の技術等を修得させたならば──最強くノ一の爆誕だと思いませんか?。

性格的に暗殺とか嫌う様な気がしなくもないんだけど周泰が出来るんです。

楽進にだって出来る筈。

何方も真っ直ぐな良い娘な訳ですからね。

…え?、甘寧?、彼女は…ほら、生き死にが常の中で育ってますからね。

その辺りの覚悟と言うか、躊躇いは無いでしょう。

勿論、無益な殺生はしない真っ直ぐな女性ですし。


とまあ、そんな訳で楽進を魔改ぞ──ゲフゲフンッ、原作よりも強化してみたい衝動が有る訳で。

悩んでいる訳ですね。

二度と無い機会だし。

遣らずに後悔したくない。

とは言え、当事者の意志を無視しては遣りません。

梨芹達とは違いますから。

氣の基礎が身に付いたら、凪には可能性の一つとして話してみようと思う。

でもね、似合うと思うの。

灰髪にエロ(くノ一)衣装の黒は映えると。

だからね、短剣・短刀術も仕込むつもりです。




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