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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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23話 董理及ばずとも


世の中には“フラグ”だと明確に判る事柄が有る。


例えば、授業で注意をされ次に同じ教師の授業の時、不意打ちで当てられたり。

例えば、落ちていた財布を見付けて拾い上げた瞬間に持ち主が来て“泥棒”扱いされてしまったり。

例えば、数量限定の商品を並んで買おうとしていると空が曇って雨が降り出し、自分の直前で最後の一つが売れてしまったり。


──とまあ、そんな風に。

「…あれ?、これは…」と直感的に嫌な予感がすると何故か当たってしまう。

皆さんにも、そんな経験が有りますよね?。

さて、其処で今回、当社が御紹介致しますのが、危機察知能力を鍛える画期的なトレーニングマシン!。

その名も“ジョナン君”。

これを使えば正面な感性の持ち主なら見る見るうちに危機察知能力が向上。

「予知能力者か?!」なんて驚愕の声が聞こえそうな程顕著に効果が現れます。

ですが、一つ御注意を。

この“ジョナン君”は一度使用を始めると永久機関を搭載している為、停止する事が出来ません。

当然ながら、当商品に対しクーリングオフ制度は適用不可能に為ります。

それでも、御買い求め頂く御客様には今回だけ特別に送料無料・手数料当社負担・分割払いの利息無し!。

更に更に!、今だけ特別に持ち運びに便利な軽量型の“ミニ・ジョナン君”までセットに致します!。

当社限定オリジナルモデルですから、今だけ!。

そして、気になる御値段、ななっ、何と何とっ!。

特別価格、9980円!。

本来、市場小売り希望価格39800円の所を今だけ9980円っ!。

一万円を切る大特価!。

ですが、数に限りが有る為大変申し訳有りませんが、先着一万名様、一万名様に限らせて頂きます。

危機察知能力トレーニングマシン“ジョナン君”に、御出掛け先にも携帯可能な“ミニ・ジョナン君”。

更に、もしもの時に備えた終身型保険を御付けして、特別価格、9980円!。

先着一万名様限定です。

それでは!、御電話番号は──という所で目が覚め、それが夢だと気付いたのが今朝の事だった。


妙に懐かしい、元気一杯の商品紹介が見ていて面白く買う気は無いのに少しだけ「…買おっかな?」と心を揺さ振ってくる絶妙過ぎる話術・プレゼンテクを前に葛藤させられた事は一度や二度ではなかった。

買って商品が届いてから、「…何で買った、俺…」と落ち込んだのも今となれば懐かしい思い出。

ちょっとした笑い話だ。

彼は言った。

「認めたくないものだ」と若気の至りを指して。

あれはきっと、通販番組のプレゼンテクに遣られた、沢山の同志への激励。

「既に済んだ事に悩むな、同じ過ちを繰り返さない為の投資だと思え!」と。

そう伝えたいのだと思う。

…本当かは判らないけど。


ただ、通販番組は魔性だ。

見てしまうと魅入られて、買ってしまう。

もしかしたら、夢魔の亜種なのかもしれないな。




──なんて、事を考えつつ目の前の現実に向き合う。



「お、御願い致します…

商品等は全て持って行って頂いて構いません

何卒、命だけは御助けを…

どうか、御願い致します」



そう言って、土下座をする見た目に五十代後半辺りの男性が居るのだが…実際はまだ三十代半ばらしい。

老けているというよりも、苦労し過ぎなんだと思う。

だって、略白髪だもん。

禿げてはないけど。



「何だ何だ…孺子ばっかで女が居ねぇじゃねぇか!

糞っ!、最悪だ!」


「まあ、そう言ぅなって、見ろよ?、確かに孺子だが器量は上玉だ、売っ払えば結構な値が付くぜ?」


「……確かにな」



そんな事を言いながら身を寄せ合って一ヵ所に固まる俺達を見てている男達。

その視線に、怒気と殺意が盛り盛りと湧いてくる。

ただ状況が把握し切れてはいないから大人しくする。

取り敢えず、お前達も気を落ち着かせない。

殺気が駄々漏れだから。


記憶の糸を手繰り、現状に至った経緯を思い出す。

切っ掛けは二日前。

とある村を発った俺達だが途中で踞っていた御婦人を発見し、声を掛けた。

「御婆さん」と言いたいが前世の感覚的に言うのなら間違い無く“美魔女”だと言われるだろう女性。

髪こそ白髪だが艶は有り、綺麗に手入れがされている事からみて裕福な家柄だと直ぐに判断した。

それだけに周囲を警戒し、近付いた訳だけど。

その御婦人、一人旅らしく道中で腹痛に襲われ、歩く事も出来無くなったそうで取り敢えず、なんちゃって家庭の医学な診断を試み、用心の為に持参をしていた腹痛に効く“らしい”薬を飲ませ、俺が背負って次の街まで歩いて行った。


何故、薬が効く“らしい”のかと言うと、村の人達は飲んで治ったと言ったけど宅の家族は服薬に縁が無く飽く迄も“そういう評判”でしかなかったんです。

──あっ、因みに薬自体は食べられる野草・薬草図鑑にて得た知識を参照して、俺が作ってみた物です。

「…それ人体実験じゃ…」とか言うのは無しで。

他に確かめる方法が無い為仕方無く遣った事です。

其処に他意は有りません。

役に立って、喜ばれた。

その事実が全てなんです。


それは兎も角として。

御婦人も街に着く頃には、体調が良くなっていた。

御礼を言われ、笑顔で応え別れようとしていた所に、御婦人の孫娘らしい少女と多分、御家の関係者だろう文系っぽい細身の男性達が駆け寄ってきて、御婦人が俺達に助けられた事を話し「では、我が家まで一緒に来られては如何ですか?」という話に為り、御婦人の家の有る街まで一緒に行く事に決まりました。


──で、その移動手段が、商隊に同行するという物。

…うん、正直に言うとね、こんな事に為る様な予感が思い切りしてました。

言い訳に為るんだけど。

そんな気がしてた。

伊達に、数える程度だけど厄介事(イベントフラグ)を回収してないんで。




でもね?、家族会議の結果三対一で「馬車が良い」に決まったんです。

ええ、俺以外が歩くよりも馬車を選んだ訳です。

別に責めはしませんが。

「この辺りは賊も少なく、安全に往き来出来ますよ」なんて言われても、それは十回中九回が無事という事なだけで、十回中十回無事だった訳じゃないでしょ。

その一回に当たる事だって有るんだって思わないと。

…まあ、平和ボケしている元・日本人の俺が言っても説得力は低いんだけど。

だからこそ、判るって事も有るんだからね?。


でもまあ、これで華琳達も“商隊と一緒”って事は、餌の側に居るって事だって判ってくれたかな?。

“急がば回れ”って事だ。


──とまあ、そんな感じで昨日は無事だった事も有り俺も油断して昼寝してたら賊徒に襲われてました。

…護衛の兵士?、そんなの「この辺りは安全です」と言ってる人達が雇ってる訳無いじゃないですか。

……あー…いや、居るには居るみたいですね。

あっさりと武器を捨てて、降参してますが。


…はぁ〜…仕方が無い。

此処で俺達の荷物まで全部奪われる訳にはいかないしちゃちゃっと片付けるか。



「此処は任せた」



そう言い俺が立ち上がるとと華琳達は直ぐに自分達が何を遣るべきかを理解し、御婦人達を囲んで三角形を作る様に動いた。

見た所、数は四十程。

実力は一対一なら華琳でも余裕で倒せる程度。

油断さえしなければ楽勝な相手だと言える。


いきなり立ち上がった俺に気付いた数名が此方を見て「何勝手に動いてんだよ、この糞孺子が!」みたいな視線を向けてきたんで軽く先程の俺の家族に対しての言動の件も含めて、顔面に右ストレートを贈る。

「べぶじっ!?」とか奇声を上げる事無く吹っ飛ぶ姿を見送る事無く、茫然とする残りを拳蹴にて撃破。

一撃必殺ですが、何か?。

吾輩のマックス・チートな此のショタ・ボディを侮り舐めるでないわっ!。


──というノリは兎も角、馬車から降りて外に出る。

あ、今更なんだけど俺達が乗ってる馬車ってRPGに多い王道の幌馬車ね。

だから、其処から飛び出た嚔の魔神じゃない仲間達の姿を見て賊徒達が注目する中で──俺、登場。

こう、世紀末覇王風に態とゆっくり動いて見せる。

右手でネクタイ──は無いから袂を弛める様に開き、面倒臭そうに息を吐く。


荷台の縁から飛び、着地。

ザサッ…と鳴る草の音が、急に静まり返った中に一際大きく響いた。




賊徒達の怪訝な表情を含め周囲を見回し、敵を確認。

馬車の直ぐ側で土下座して命乞いをしていた男性──商人の無事も確認。

護衛は……放って置く。

死にたくなかったら自分の事位は守って下さい。



「……おい、糞孺子…

中で何があっびゃばっ!?」



賊徒の一人が威圧する様に堂々と近付いて来たんで、挨拶代わりに右上段蹴りを贈呈して退場して貰う。

まあ、正確には“跳び”が付くんだけどね。

それは仕方が無い。

腐っても大人の体格。

此方は子供なんで。

如何に身体が柔らかくても海賊の王者を目指す青年の様には身体は伸びない。

だから跳ぶしかない。

現実は世知辛いよね。


それは置いといて。



「──さて、堕ちた屑共、命が惜しいなら失せろ

今なら見逃してやるから」



そう超上から目線な態度で視点は低くても言い放ち、互いの立場を明確にする。

すると、「おい、巫山戯んじゃねぇぞ、糞孺子っ!」といった感じで武器を取り攻勢に為る賊徒共。

頭だろう髭面の男も此方に数歩近付き、剣を抜く。


…何で、こういう奴等って判り易い容姿なんだろ。

俺だったら、身形を整えて商隊に潜り込んで内側から襲撃するけどな〜。

その方が安全だし、人質も有用な相手を選んで捕れて降伏させ易いだろうに。

本当、馬鹿だよな〜。

…まあ、そんなのだから、賊徒に身を堕としてるのは言うまでも無いんだけど。



「…満場一致で死刑、と…

それじゃ、殺りますかね」



教育的死導をしてあげる。

…ん?、誤字じゃないよ。

教育して、殺すんだから。

死ぬ前に「自分の間違いが選択肢を誤った」って事を理解出来るだけ増し。

先の数名は、それでさえも出来無かったんだから。

本の僅かにでも“生きる”事の意味を考えられるなら無駄な人生じゃなかったと思えるでしょ。

あ、でも、自殺は駄目ね。

結果としては同じ死だけど“生きる為に抗った”末の死に意味が有るんだから。

其処が肝心なんです。




──という感じで、終了。

…え?、「戦闘シーンって何処行った?」。

いやいや、一方的な蹂躙劇自分で語るって恥ずかしいじゃないですか〜。

まあ?、途中で逃げ出そうとした連中や、商人の人や護衛の人達を人質に捕って助かろうとした馬鹿共には慈悲安楽な一撃死ではなく手足の骨を砕いてから少し自分の言動に付いて反省を促してから、でしたが。

良い娘は真似するな。


──という感じで、戦闘の後始末を終わらせます。

流石に俺一人だと幾らかは時間が掛かるんで、護衛の人達にも手伝って貰った。

何か、物凄い怯えられてる気がしたけど…それは多分気のせいじゃないね。

うん、俺が彼等の立場なら同じ様な反応をするね。



「御兄様、御疲れ様です」


「其方も御苦労さん

熊を相手にしてる方が断然大変だったけどな」


「御兄様ですから」


「……誉められてる?」


「はい、勿論です

私の御兄様が、あの程度の下賤な輩に遅れを取る事は考えられませんから」



──と、屈託の無い笑顔で俺を誉め千切る華琳。

そんな風にされたら、兄は調子に乗ってしまうぞ?。

それはもう、ハッスルしてハッスルしまくるよ?。

近隣一帯の賊徒という賊徒全てをサーチ&デストロイしまくっちゃうよ?。



「御兄様なら出来ます

私は御兄様に何処まででも付いて行きますから」


「──よし、任せろ

この世の悪という悪を全て我が拳で討ち砕こう」


「駄目ですから!

──と言うか、貴男は先ず落ち着いて下さい!」


「俺は落ち着いている」


「いえ、全く落ち着いてはいませんから

取り敢えず、彼方で事態を茫然と見ている皆さんへの説明を御願いします

…華琳に任せると、貴男は英雄に為りますよ?…」



その愛紗の小声の一言で、俺は我に返り、現実と向き合う事に。

仕方無いが“遣らかした”感は半端無かった。




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