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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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18話 華は匂えど棘


特に何か起きるでもなく。

止まる事無く時は過ぎて。

何だかんだと言いながら。


さらっと、一ヶ月が経過。


うん、本当にさらっとね。

異常事態なんて滅多な事で起きないから異常であり、常日頃から起きているなら其れはもう日常だと思う。

災害だって、起きないから天災とされるんだから。


そういう意味では日本って世界屈指の災害大国の一つだったりするよね。

代表格の地震・台風。

近年は雨や雷等も増えてて自然災害の被災率は大きく上昇していると思う。

でも、直面した経験が無い結構な割合の人数が普段は危機感を懐いていない。


“痛くなければ覚えない”という言葉が有る様に。

人間──生物という物は、経験を糧に成長する。

痛みを知らない者が本当に他人を思い遣れるのか。

現代の日本社会の抱え込む未発現なだけで根深い筈の問題は、社会性に潜む事に何れだけの人が気付くか。

“責任の所在”。

ただそれを押し付け合い、根本的解決・改革をしない“その場凌ぎ”な日本社会の体質は、既に世界の中で時代遅れだと言える。

故に、政治家に対して俺はこの言葉を贈りたい。

“経験を以て導くは先達、石頭で居座るだけは老害、自らを見詰め直せ愚か者”──と、遥か彼方より。



「……うん、今更だけど、外から見るって大事だな」



時代も、場所も、価値観も違う世界に生きるからこそ客観的に見る事が出来る。

──というか、日本文化の代表格に為った日本の漫画・アニメ等の数有る作品を政治家は知るべきだ。

様々な人間性が折り重なる仮想世界だからこそ判る、現代社会の問題解決案等は意外に多かったりする。

教科書が正しい?。

作った人間が間違っている教科書だったら?。

それでも正しいのか?。

それを“正しい”とすれば立派なパワハラだろう。

初等教育に漫画・アニメ等を観賞し、その世界観から議論させる。

そんな教育方法も有っても良いのではないのか。


大切なのは考える力。

命令に従うYESマンは、使い易いのだろうが。

それならロボットやAIが軈て可能にする。

と言うより、欲や感情等が無い分、人よりも優秀。

だからこそ、人間は自らが考える力を養う時代。

教育も、社会も、政治も、全てが変わらなくては。

遺すべきは伝統や技術。

悪しき慣習や常識は棄てて未来に踏み出さなくては。


頑張れ、日本。

今は遠き故郷を思い。

俺は空を仰いで願う。

どうか、今日よりも増しな世界(明日)に成る様に。


……まあ、異世界に生きる俺には関係無いんだけど。

時々は思う訳ですよ。

“国民”の為と言いながら国民の声を聞かない政治。

“恋姫の曹操”を見倣え。

これが本当の民を思い遣る政治というものだ。


そう、宅の華琳をだ!。

見なさい!、聞きなさい!、讃えなさい!。

宅の華琳こそが本物っ!。

世の紛い物よ!、刮目して己が愚かさを知れいっ!。




──とか何とか考えながら気付けば現実逃避している今日この頃です。



「────きゃあっ!?」



可愛らしい悲鳴を上げて、地面へと落ちた人数。

尻餅を付いたらしく右手でお尻を擦っている。

若干涙目なのは痛みよりも悔しさからだろう。

思い返す事──約1分前。



「──という勝負だ」


「成る程…判りました」


「相手は──何方だ?」



恒例と為った手押し相撲の説明を終え、待機している華琳達を見る。

いきなり俺が相手では色々可哀想だからだ。

──で、華琳達は見合うと華琳が首を小さく動かす。

膂力では羽の方が上だが、勝率では華琳が上。

その為、羽が相手になる。



「…では、私が」



羽を見詰めるが、その顔に“これなら勝てますね”と言いた気な雰囲気を感じ、準備に入った所で羽を見て視線で一言、伝えた。

「思い知らせて遣れ」と。


──その結果が、これ。

秒殺所か、真っ正面からの最初の一撃にて決めに来た所を透かし、踏み留まるも体勢の崩れた所に止め。

あっさりと敗北した。



「──とまあ、見た目より難しかったりする

因みに、羽よりも華琳が、華琳よりも俺が上だから」


「御兄様には私達も一度も勝ててはいないわ」



さらっと一言付け加えられ俺を見る目に驚愕とは違う色が浮かんだ気がしたのは多分、恐らく、気のせい。



「年齢も、体格も、膂力も関係無く、純粋に強くて、巧い者が勝つ…

それが手押し相撲よ」



──と、ドヤ顔で語るのは我が家の華琳(妹)様。

それは間違いではないが、正しいとも言えない。

だが、それを真に受けたか驚きながらも納得した。


その様子に、「既に勝負は始まっているわ」と言わんばかりの華琳を見て、俺と羽は顔を見合せると小さく苦笑を浮かべた。

ちょっとした心理戦だ。

実際には駆け引きが有る為絶対の正解は無い。

思考と行動の柔軟性を身に付ける事が目的なだけ。

本当に遊びの範疇。

だが、負けず嫌いが三人も集まれば本気の勝負に。

怪我にだけは気を付けて。



「…よしっ、愛紗!、私ともう一度です!」


「私は構いませんが…」



チラッ…と俺を見て確認を取る羽に頷いて返す。

特に拘りは無いからな。

それから華琳が歩み寄り、羽に声を掛ける。



「いいわね、愛紗?

梨芹(りせり)”に勝負の厳しさという物を、教えて上げなさい」



有無を言わさぬ迫力に羽が困った様に苦笑。

しかし、意図は判った様で華琳に頷き返した。


何やら既に、覇王の片鱗を見せる華琳を見ながら俺は胸中で静かに思う。

「やっぱり、生来の気質が王の才器なんだな…」と。

努力と環境で磨かれる事は間違い無いが、その才器は秀才では及ばない。

天才──生まれ持った天賦だけが本物なのだ、と。

そう、改めて思い知る。

秀才が天才に勝る。

不可能な事ではないが。

難しい事なんだと。




さて、先程出た名前。

“梨芹”とは新しく家族に加わった少女の真名だ。

少女とは言っても、年齢は俺と羽の二つ上で十一歳。

ただ、身長は羽と同じな為歳上という気はしない。

トータルの精神年齢的には俺が圧倒的に歳上だし。


──で、その少女の真名に俺は心当たりは無い。

つまり、オリキャラだ。

──と、思うだろう。

普通だったら。

だが、一人だけ居る。

一人だけ俺が真名を知らず原作に存在する者が。

そう、粥美味──ではなく“勇将にして猛将”という脳筋武将の華雄である。


魏から曹操、蜀から関羽と来れば──次は呉から。

軍師ポジなら周瑜か陸孫、軍将ポジなら黄蓋か甘寧が妥当な所だろう。

呂蒙と周泰?、曹操・関羽という存在と比べた場合に見劣りするからね…。

其処は仕方が無い。

二人共可愛いんだけど。

それは兎も角、流れとして“次は呉からか…”という予想を無視しての華雄。

まさかまさかの華雄。

原作では残念な扱いだけど何故か好かれる華雄。

彼女が、三人目である。


…うん、最初はね?、俺もかなり吃驚したんだ。

だって、華雄だよ?。

そりゃあ、原作はキャラの詳細な年齢設定だしてない状態なんだから、御都合な帳尻合わせが有っても今更可笑しいとは思わない。

何しろ、華琳が俺の歳下で俺と羽が同い歳だ。

気にしたら負けだもん。


華雄の話に戻すけど、別に華雄に隔意は無い。

原作での愚行はキャラ設定だろうから、ある意味では強制行動みたいな物。

だから、彼女自身に対する俺の評価は低くない。

ハムの人──じゃなくて、公孫賛と同じ様にね。


原作では字無し・真名無しという事で、馬鹿にされる様な表現が有ったんだけど現実(ここ)では有る。

あっ、字はまだだよ?。

余程特殊な立場じゃないと基本的に早くても十三歳で貰う事に為るらしいから。

勿論、俺達もまだだ。

真名の交換は例の如く。

俺は華雄の事は“雄”と、彼女は“若”と呼ぶ。

当初は“兄上”だったが、「いや、俺歳下だよ?」と言ってみたら…何故だか、真剣な表情で、「年齢では有りません、貴男の精神を私は敬うのです」と。

一瞬だけ、冷っとしたのは誰にも言えない秘密だ。

尚、華琳が猛抗議した為、主様→旦那様→若様を経て若に落ち着いた。

俺は跡目ではないのだが。

下手に話を蒸し返すと色々面倒臭いのでしない。

尚、「普通に恕でいい」と言ったら超照れられた。

普通に可愛いんですが。




そんな風に歳上の筈なのに同年齢以下に感じるので、原作のイメージからは遠い彼女なんですが。

負けず嫌いな事、武の才に長けている事、男勝りで、面倒見の良い姐御肌なのは健在みたいです。

羽とは違う意味で世話焼きだったりしますので。


そんなこんなの我が家。

現状では、雄は実力的には一番下なんですが、流石に二歳年長なだけあり精神は華琳達よりも落ち着いててしっかりしています。

でも、時折見せる可愛さや恥じらいが、原作の印象を良い意味でブレイク!。

ちょっとヤバいっす。


あと、羽と身長は同じ位の雄なんですが、原作と違い髪は長くて見た目は普通に美少女だったりします。

原作みたいに脳筋化前?の為なのか口調も違うんで、感覚的にはオリキャラだと思える感じです。

そしてそして、注目すべき点は雄の“武装”である。

原作ではスレンダーだった彼女の筈なんですが。

何という事でしょう!。

まさかまさかの関羽越えを果たしているのです!。

いえ、確かに現時点では、という話なんですが。

でもね、でもね、皆様。

今の羽のサイズって多分、原作の賈駆位は有るんだ。

その羽に、勝ってる。

うん、俺の原作知識が記憶違いじゃないなら今の雄は原作の華雄を越えてるね。



(──と言う事はだ

華琳も原作の曹操を越えて母さん級に至れるっ?!)



いやまあ、原作は原作。

現実は現実なんだけど。

やっぱりね、原作の知識が有ると色々と引っ張られる事が多いんだよね〜。


それでも、男の子としてはやっぱり気になる気になる気になっちゃうのよ!。

だって、男の子だもん!。

欲が出ちゃうって。


──まあ、そんなこんなを抱えていたとしても絶対に外には出しませんがね。

見栄とか風評とかじゃなく華琳(妹)に「最低…」って白く冷たい眼差しを向けて言われたら死ねます。

俺には扉の向こう側に行く決意は無いので、御褒美な方々の感覚はちょっと…。

でも、少しは判ります。

どっぷりと填まりたいとは思いませんけどね。




そんな感じで、一ヶ月。

羽も早い方だと思うけど、雄の順応力の方が上。

元々考え過ぎないからか、本当に早く馴染んだ。

宅だけの話ではなく。

村に対してもだ。

まだ気が早い話なんだが、雄には「宅の息子の嫁に」というのがチラホラ。

…え?、「華琳達には話は無いのか?」って?。

アハハハッ…オォウ、誰ヤ宅ノ妹二声掛ケトンノハ。

アァン、シバイタルデ?。

──状態になりますから。

ええ、有り得ません。

羽の方は俺が傍に居るのが原因かもしれません。

村の中では、羽は俺の嫁に認定されています。

…うん、まあ、本人も特に否定はしないんですよ。

俺としても拒否する理由は見当たりませんしね。

ほら、幼馴染みと結婚って一つの憧れですから。

現実的には難しいでしょ。


ただまあ、その時の華琳は非常に不機嫌ですが。

ええ、それはもう。

水銀レバー式起爆装置爆弾みたいにです。

少しでも間違うと爆弾する超危険な状態なんです。

だから、そう為らない様に頑張る俺は危機回避能力が特典(チート)もブーストし超成長中だったりします。

但し、女難関係専用という条件付きなんですか。

微妙な能力ですよね〜…。

──と言うか、そんな風な能力が有ると、女難を招き寄せそうなんですが。

“女難:EX”の能力とか要りませんよ?。

平穏無事:EXを下さい。



「無理です、御兄様」


「…ああ、判ってる

試してみただけだから」



絶妙なタイミングで言った華琳に答える。

思考とは関係無い。

ただ偶々初めて試みた事が無理だったというだけ。

決して心を読まれたという訳ではない。

…………ないよね?。


つい、じっと見詰めた俺の視線に華琳は首を傾げた。

うん、大丈夫そうだ。

良かった、本当に。

覇王に読心術とか…無双の予感しかしないもん。














         とある義妹の

         義兄観察日記(えいゆうたん)

          Vol.6
















 曹操side──




▼月△○日。

宅に新しい家族の華雄──梨芹が加わって一ヶ月。

愛紗の時と同じ様に彼女を“姉”と呼ぶ気はない。

だって、恋敵ですからね。

私に勝った時には…まあ、悔しいけど、仕方無いから呼んであげなくはないわ。


ただ、梨芹よりも愛紗ね。

梨芹は村でも人気の嫁候補なのだから良いのだけれど何故か愛紗は御兄様の嫁と思われている。

ええ、何故かしらね。

一緒に居る時間だったら、私の方が上だというのに。

何故、愛紗なのかしら。

本当に、村の皆は一体何を見て私達を判断したのか。

出来る事なら、じっくりと訊いてみいたわ。




そんな風に愚痴が綴られる事も少なくない私の日記。

言いたくても言えない。

そんな、自分自身ですらも持て余す感情を吐露する。

それだけで気持ちは違う。

綺麗さっぱりと無くなる訳ではないのだけれど。

モヤモヤと曇天の様に胸に溜まっていた暗い気持ちが少なく為ってくれる。

それは大きな違い。

自分でも理解出来るわ。

これを懐き続けていたら、私は潰れてしまうと。

だから御兄様には感謝ね。

尤も、私がモヤモヤとする原因は御兄様だけれど。

それは言えないもの。


そんな内心は一切見せずに普通に過ごす。

御兄様が考えた新しい漁の方法を試しに川に居る時、不意に御兄様が無言のまま私を見詰めてきた。

何か、物凄く真剣に。

正直、取り乱しそうな程に自分の鼓動が煩い。

頭の中も渦を巻くかの様に正面な思考が出来無い。

夏の日差しに照らされた時とは違った感じで、身体が熱くなってくる。

短く浅く為りそうな呼吸を気合いで堪える。

堪えながら、平静を装って「どうかしましたか?」と問う様に首を傾げる。



(私の意気地無しーっ!!)



直後、満場一致で心の中で小さな私達が叫んだ。

反論したいのに出来無い。

私の偽らざる気持ちが全て一言に集約されていた。



「いや、何でもない」



御兄様は小さく笑いながら右手で私の頭を撫でる。

“子供扱いされたくない”という思いと、“御兄様、もっと頭を撫でて下さい”という欲求が攻めぎ合う。

…まあ、御兄様ですから。

私を子供扱いしてはいない事は理解しています。

寧ろ、“頭を撫でられる”というだけで“子供扱い”といった風に捉えてしまう私の方が問題でしょう。


一度、御母様に相談した所「その時に感じた気持ちに素直に為ればいいのよ」と笑顔で言われただけ。

それが難しいから御母様に相談したのですけど。

…はぁ…本当に大変だわ。

こんなにも、心というのは儘ならない物なのね。

困ったものだわ。



──side out。



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