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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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   犬の導くが如く


白霞山に埋没している仙残鋼の発掘の為に向かい、真桜と入念に下調べをした情報を元に作戦会議。

人員──俺と妻達のみですが──を惜しまず投入し一日で作業を完了させられる様に準備。


先の下調べから十日後。

白霞山で夫婦の共同作業が実行されました。

まあ、流石に全員参加では有りませんでしたが。

取り敢えず、無事に仙残鋼は発掘、回収しましたし周辺の自然環境への影響も殆んど有りません。

多少の地形の変化は避けられませんでしたが。

それでも、考えられる中では最小限の範囲。

十分な出来だと言ってもいいと思います。


ただですね、違う問題は有りまして。

今回も加工方法の手掛かりは有りませんでした。

ええ、ぶっちゃけ、宝の持ち腐れです。

利用出来無かったら、場所を取るだけの粗大ゴミと変わりませんからね。

リサイクル出来る可能性が有るなら。

粗大ゴミの方が増しでしょうね。

尤も、腐敗や劣化の心配は要らなさそうな仙残鋼は所有していれば孰れは価値が出るでしょう。

そう、加工方法さえ見付かれば!。


…まあ、その手掛かりの手掛かりすら見付からない状況だから困ってるんですけどね~。

こればっかりは、どうしようも有りません。



「どうぞ、子瓏様」


「有難う、頂くよ」



そう笑顔で御礼を言えば、嬉しそうに笑う少女。

まだ十歳にも満たないのだが、しっかりしていて。

昔の華琳達を彷彿とさせる。

それだけに将来が楽しみでは有るのだが。


違う意味での期待(・・)が籠った眼差しには…。

正直、どう反応したらいいのか判りません。


…え?、「散々誑し込んだ奴が何を今更…」と?。

いやいや、華琳達は特別ですから。

「原作キャラだから」とかいう事ではなく。

各々に惹かれ合い、様々な事情が絡んでの事。

そして、何より──俺はロリコンでは有りません。

ロリコンでは有りません。

大事なので二回言って置きます。


それはまあ?、今は五歳以上で十歳以下だったら、十年後には立派な成人女性ですから。

その時になら、ロリコンには成りません。

ただ、年下というだけですから。


例えば、三十代後半の女性が、二十代前半の年下の男性と結婚しても、ショタコンとは言いません。

しかし、二十代前半位の女性が十歳前後の男の子に手を出したら、これはショタコンです。

仮に、二人に愛が有ろうともです。


つまり、幼いから駄目なんであって。

年下が駄目な訳では有りません。


──と言うか、それを言い出したら、人類史なんてロリコンで出来ているとさえ言えますからね。

権力の有る男が若い女性を娶り、子を産ませる。

そう遣って社会と歴史は作られてきたのですから。

其処の解釈を間違ったら見当違いの話です。


──という話は置いといて。

今、俺が居るのは顔馴染みの商家。

老師の墓参りに行った後、今では考えもしなかった程に長い付き合いと成っている商家を訪ねている。

ええ、昔、妊活サポートをした御夫婦の所です。

あれから三人の子供が出来、夫婦仲も円満。

旦那さんも御酒は控え、健康状態も改善。

目出度し、目出度し──と行きたい所なのに。

彼等の長子・長女の嫁入り話が絶えません。

他人事ならアドバイスもしますが。

俺の所に、ですからねぇ…。

此処にも教祖の布教は及んでいる訳です。



「子瓏様、御待たせしました」


「ああ、其処は気にしないでくれ

急に訪ねたのは此方なんだ

寧ろ、急に来て済まないな」


「子瓏様でしたら何時でも歓迎致します」



「そうですね?、貴方?」と。

続く奥さんの台詞が聞こえそうな笑顔を向けられ、旦那の方は苦笑するしかない。

この奥さんも立派に信者なのだから。


それはそれとして。

こうして訪ねているのは付き合いからだけではなく定期的な情報収集の為だったりする。

宅の隠密衆は優秀だ。

ただ、彼等彼女等は一般人として市井に溶け込み、普通に生活をしながら情報収集や情報操作を行う。

それが強みでは有るのだが。

一方で正体を明かせないから得難い情報というのが有る事も否めなかったりする。

まあ、この辺りは仕方の無い事なんだけどね。


その収集の難しい情報を得る方法として。

こうして俺や華琳達が彼方等此方等に出向く。


様々な付き合いや関係を築きながら、それを上手く利用して情報収集や情報操作をする。

露骨には遣らないけどね。


今、欲しいのは仙残鋼の加工方法の手掛かり。

その糸口を掴む為に。

時間が有れば、足を運び、話をしている訳です。

流石に、そのまま言う事は有りませんけどね。


近況報告や世間話、家族の話等々。

有り触れた話題を振りながら上手く誘導。

そして、然り気無く訊きたい事を持ち出す。



「まだ一歳だが、子供は直ぐに大きくなる

子育て・子守りという点では、然程は心配する事は無いんだが…娯楽という意味では難しくてな

俺達自身も子供の頃は色んな話を聞くのが楽しくて心待ちにしていたのが懐かしい」


「そうですね、その御気持ちは判ります

私も昔読んだ恋物語等は今でも覚えていますから」


「ああ、そういう記憶は大人になっても強く残る

だから、俺達も大事にしたいと思ってはいるが…

問題は──その数の方だ」


「…数、ですか?」


「まあ、その…何と言うか…ほら、宅は子供の数が一般的な家庭の比じゃないからな…」



そう言えば、二人は「あ、あー…」と納得。

「それは大変ですよね…」という苦笑で返す。

言葉にされても困るので、その方が楽だ。

勿論、これは俺達の関係性が有っての話。

決して、一般的な対応ではない。


それで、子供が多くて何が困るのか。

話す手間が掛かる、という事ではない。

一番困るのは誰に何を話して聞かせたのか。

それが判らなくなる事。


例えば、学校の授業内容の様に年齢毎に使う話題を決めて割り振ってしまえば楽なのは確かだ。

どの兄姉弟妹も同じ時期に同じ話しを聞くのだから将来的にも「そう言えば、あの話って…」と共通の話題として懐かしんだり出来るので悪くない。

まあ、上の兄姉からネタバレされる弟妹が出てくるという、あるあるネタも起きそうだが。

それはそれで、また盛り上がるネタになるだろう。


ただ、弊害として、その話の好き嫌いや興味の有無という面では融通が利き難くなる。

其処を崩してしまうと特別扱いになる。

それは当人には嬉しい事だけど、他の兄姉弟妹には面白くはない事だったりする。

そんな小さな満足や不満、優越感や劣等感が後々に大きな溝や対立に繋がると考えると悩ましい。


だから、俺は子供達に話して聞かせる場合は複数で一緒に聞かせようと思っている。

そうすれば、同じ話を聞いても個々の受け取り方が違っている事を子供達自身が話して理解出来るし、それが御互いの事を理解する材料の一つにもなる。


少なくとも華琳達は、そうだったからな。

遣り方の一つとしては、悪くはないと思っている。


──という我が家の教育方法は置いといて。

肝心な話をしないとね。



「まあ、書物の類いなら買い集めて保管していれば読み聞かせてもいいし、子供達自身が読める年齢になれば好きに読めるから大丈夫だ

ただ、昔話や伝承の類いは脚色されたり、諸説有るという事も珍しくない

それが面白いんだが…話す方は何れを話したのかを覚えていないといけないからな…

そういう意味では、その手の色んな話を今の内から集めていかないと在庫が無くなる」


「切実な話ですね」


「ああ、数少ない俺の親としての見栄でも有る

それで、何か面白そうな話は無いか?

知っている話でも、実際に聞いてみたら知っている話とは微妙に違いが有ったりするからな

それはそれで面白いから話題として使えるし」



そう言って納得させ、二人に話を聞かせて貰う。

自分の為に、という訳ではなく。

しかも、子供達の為に、というのは意識を逸らす。

一度、納得してしまえば怪しむ可能性も低いし。

抑、そんな話自体に重要な価値が有るだとは普通は考えもしませんからね。

皆、あっさりと話してくれるものなんです。




そんな訳で暫く御邪魔して話して。

二人の子供達も参加していましたが…脱落。

ええ、我が子ではなくても子供の寝顔というのは、本当に可愛くて癒されるものですよね~。



「ん~~~………知っているのは、これ位ですね」


「いや、十分参考になった、有難う」


「こんな事で良ければ、いつでも御越し下さい」



無理に粘って聞き出そうとはしません。

それを遣ったら怪しまれますからね。

寧ろ、暫くしてから、また訪ねた時に意味が有る。

「この前の事ですが…」と彼等が自主的に彼方此方伝手を使って話を集めてくれたりもしますから。

果報は寝て待て、という事です。


寝ている子供達を起こさない様にして退室。

娘さんの嫁入り話が出ない内に退散しましょう。

俺にとっては聞きたくない類いの話なので。


──と言いますかね、こう遣って各所を訪れる度に俺への嫁入り話が出てくるとね。

どうしても、教祖の後宮計画が着々と進行しているとしか思えません。

そして、考えたく有りませんが…。

二十年後には………いや、早ければ、十年後には。

教祖だけに限らず、信者達に押し切られて。

後宮を作られてしまう。

その未来が、近付く足音が聴こえてくる。

そんな今日この頃だったりします。


…男だったら、一度は夢見る事かもしれませんが。

今のままでも十分なんですけどね。

──と言うか、俺よりも妻達の方が時代の寵児には相応しい考え方してるんですよね~。

まあ、当然と言えば当然なんですけど。

だって、どうしても俺の根幹は現代日本人なので。

その価値観だけは中々変わらないんですよ。

戦争や政治的な価値観は変わり易いんですけど。

尤も、これも個人的な事なんですけどね~。



「──あっ、そう言えば…子瓏様、御存知ですか?

皆様が老師様と暮らしておられた“龍天山”…

その奥の“霊静谷”には踏み入った者は二度と帰る事は叶わない、と云われている場所が有ります」



別れ際、見送ってくれていた奥さんが、不意に思い出したのか、そんな話をした。

──とは言え、具体的な話は無く。

飽く迄も、その程度の事。

子供を立ち入らせない為の脅し話か。

或いは、躾で言う様な「悪い子は…」的な話か。

その辺りの事の様な印象を受けなくもない。


ただ、其処に住んでいた俺達が聞いた事が無い話。

そして、そんな謂れは何処からも聞かない。



「…それは初耳だな

そんな危険な場所が有るという話は聞いた事が無い

老師も何も言わなかったが…」


「私も初めて聞きました」


「私も亡くなった母方の祖母から聞いた話です

この町の者の多くは村が出来てからの移住者なので知らなくても当然だと思います

老師様も確か、後々住まわれたのでしたよね?」


「ああ…そうか、だから知らなかったのか」


「そうだと思います」


「しかし、それなら老師に一言忠告する者が一人は居ても可笑しくはなさそうだが…」


「それは先住していた者の多くは飢饉で一度離れ、戻って来た者は居ないからだと思います

その場所を離れれば、そういった言い伝えも自然と失われていってしまうものなのでしょうから…

私の祖母も幼少期に離れたまま亡くなりましたし、私も生まれ育ちは違う町ですから

私が知っていたのも偶々、祖母が話してくれた事が有ったからですし、正直、子瓏様と先程の様な話をしていなければ思い出す事も無かったでしょう」


「成る程な、それなら納得だ

今は立ち入り禁止にしているから大丈夫だろうが、話の真偽を確かめ様とする者は出そうだからな

その話は伏せておいてくれると助かる」


「はい、判りました」



「不要な犠牲者を出さない為に、ですね」と。

二人が勝手に納得してくれる様な言動をしてから、背を向けて別れる。


そして、再び山に戻る。

本格的に調べてみるのは後日、という事になるが。

取り敢えず、少しだけ調査はしておく。

飽く迄も、軽くですから。

「二度と帰る事は叶わない」と云われる以上は。

迂闊な真似はしません。

挑むのなら、準備万端で。





 張角side──


不幸な事というものは誰にでも有るもの。

だけど、それに気付かず、「私だけが…」と思い。

勝手に悲劇の主役に成ってしまった様に思う。


それが、どんな事で有るにしても。

誰しもが一度は経験した事の有る思い込みで。

思考狭窄による勘違い(・・・)なんだけど。

その時は、全く気付かないから困る事。


ただ、そんな不幸を経験してゆくからこそ。

何気無い日常というものが如何に幸せな事なのか。

それを知る事が出来るのだと。

そう思う事が出来る様に。

どんな不幸にも、その意味が有るのだと。

今なら、そう思う事が出来る。


まあ、そう言うだけなら簡単なんだけどね。

不幸というのは、幸せとは違って判り易いのに。

一度、「なんて、私は不幸なの…」と思うと。

どうしても、その不幸が特別な様に思えてしまい。

結果、自分勝手な不幸感に囚われてしまう。


不幸だと感じる事は本当に厄介なもので。

その考え方さえなければ生き易い筈なのに。

私達は幸不幸の価値観に拘って生きている。

ある意味、これも囚われているのでしょう。


しかし、それ故に知り得る事も確かに有ります。

特に、一人では得られない幸せというものは。

怖くなる程に強烈だと思います。


不幸だと感じる事が強く、多い程に。

人の心に甘く、切なく、満たす様に染み込み。

決して失いたくはない。

そう思わせるのですから。



「忍様~、私のも、おっきな方ですよね~?」


「それはそうだが…いきなりな話だな」


「ちーちゃんがね~、「姉さんより愛紗様!」って言って憧れてるの~っ!

もうね、プンプンなの~っ」



そう言いながら忍様の前で自分の胸を揉み寄せる。

確かに愛紗様よりは小さいけど~…。

でもでも~、ちーちゃんよりは全然有るし~。

──と言うか、ちーちゃん、それは無理だよ~?。

愛紗様みたいには成れないと。

お姉ちゃんは思うな~。


──なんて考えていると。

忍様が私の手に重ねる様にして胸に触れる。

こうして触られているだけで身体が熱くなるのは、それだけ忍様を求めているから。

それを、忍様を愛し、忍様に愛されて知った。


孰れは、ちーちゃん達も忍様の妻になるんだけど。

もう少しだけ、お姉ちゃんとして自慢出来る。

勿論、二人も妻になれば嬉しいんだけどね~。

今はまだ、少しだけ優越感を味わいたいかな~。



「おっきな方が忍様は好み?」


「そんな事は無いが……手応えが有るからな~…

そういった意味では、大きいと愉しめると思う

それが好みかって言うと違うんだけどな」



苦笑しながらも正直に答えてくれて。

「胸だけじゃないぞ?」と言う様に。

掌が私の御尻を鷲掴みにする。

そのまま強く抱き寄せる様にして。

「さて、休憩は終わりだ」と身体を弾ませて。

私は仰向けになった忍様の上で滑る様に踊り。

漏れ出す声を口移しする様に唇を求める。

少し冷静になってしまうと物凄く恥ずかしくて。

そうして誤魔化す。



──side out



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