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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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   尊き息吹きかな


二度有る事は三度有る。

主に悪い事が続く場合に用いられる事が多いが。

別に、そうと決まっているという訳ではない。


ただ、人は良い事よりも悪い事の方が強く残り。

良い事は些細な事だと直ぐに忘れてしまうが。

悪い事は些細な事でも中々忘れはしないもの。

だから、そういう方向で使われる事が多くなるのは必然的であり、仕方が無い事だと言える。



「うん、妊娠してるな」


「ほ、本当ですかっ?!」


「俺が、そんな嘘を言ってどうするんだ」


「あはは…そうですよね

うん、そうですよね…えへへっ…」


「良かったな、斗詩」


「うん!、有難う、稟」



そう付き添ってきた稟と笑顔を交わし自分の御腹を愛おしいそうに優しく撫でる斗詩。

とても御目出度くて、何度見ても感動的な場面だ。


しかし…何故なんだろうか。

それを斗詩が遣っていると「食べ過ぎか?」なんて言って揶揄いたくなってしまうのは。

……うん、天然な斗詩だからだな。

原作の劉備より、ピュアっピュアなんだもん。

ちょっとね、意地悪したくなるんですよ。

原作の覇王様じゃ有りませんけど。

まあ、そんな斗詩を自分の色に染めていくのもね、ちょっと楽しいし、嬉しいんです。

何より背徳感が物凄くて──斗詩が可愛いんです。

ええ、もうね、原作みたいに苦労し過ぎて、何処か疲れたOLさんみたいな感じだったのに。

宅の斗詩は女子校育ちの御嬢様な女子大生。

そんな感じなんで、色々と新鮮です。

本当にね、良い育て方(仕事)してますね~。


──という話は置いといて。

華琳の妊娠に続き、一昨日、桔梗の妊娠が確定。

そして、今日は斗詩が、という訳です。

良い事が、慶事が続くって良い傾向ですよね~。


──って言っても、現実的な事を言うのならば。

皆と順番に調整しながら子作りしてるんですから、妊娠するのは当たり前なんですけどね。

うん、そんな不粋な真似は致しませんとも。

俺は空気が読める男なんです。

ミスター・エアーリード!。

……滅っ茶弱そうですね。

必殺っ、エアーブレイクッ!。



「判ってるとは思うけど、気を付けてな」


「はい、大丈夫です」


「「……………」」


「ほ、本当に大丈夫ですから!」



斗詩の返事に思わず稟と顔を見合わせてしまう。

別に揶揄おうとした訳ではない。

俺だけなら兎も角、稟もですからね。

ええ、つまり、本当に不安になったんです。

だって、こういう時の斗詩って天然さんですから。

ちょっとした勘違いを遣らかしそうなんです。



「…稟、悪いけど頼めるか?」


「はい、私にも良い予習(・・)になります」


「ふ、二人共酷いですよー!」



斗詩の抗議は受け流し、稟は斗詩を連れて退室。

この二人の関係がね、時々、原作の孫策と周瑜に、或いは劉備と関羽と被るんですよ。


まあ、孫策──雪蓮と絡めば誰でも苦労しますが。

それは口には出しませんとも。

しつっこく、雪蓮が根に持つでしょうからね。


そんな事はさて置き。

桔梗と斗詩の妊娠なんですが。

華琳は兎も角、斗詩や桔梗は早い気もするかと。

でも、二人の立場上、悠長にはしていられませんし後継ぎが出来る事で政治的な影響力も高まります。

だから、特に意識して、という訳ではなく。

然程珍しくはない事だったりします。


それだけ後継ぎの存在というのは重要な訳で。

如何に後継ぎを産んだ女性が権力を持つのか。

その理由というのが、この立場になれば判る。


ただまあ、それなのに一般的な女性の妊娠・出産に対する補助や支援の低さは問題なんですが。

勿論、宅の遣り方では、きっちりと政策に盛り込み予算分配や専門部署も設けて有ります。

アレやコレやと一纏めにして押し付けられた感じが否めない前世の役所みたいな事は遣りません。


まあ、アレはアレで効率化を図った結果なんだとは思いますけどね。

結果的に、逆に手間が増えたり、面倒だったり。

経験してみなければ判らない事なんですが。

それを改善しようとしても、一度思い切って壊し、一から見直して組み立て直す。

そうすべきなのに、手間を嫌って遣らない。

これを職務怠慢と言わずして何と言うべきなのか。

──という事を、毎回毎回、待たされながら思って長い長い待ち時間を無駄に費やしていました。


いや、本当にね、利用者が数人しか居ない状況でも時には二~三時間も待たされるんですよ?。

「只今、担当の者が席を外しておりまして…」って言い訳にすら為ってないでしょうが!。

一体、何の為の総合施設(・・・・)化なのか。

職員全員が(・・・・・)対応出来無いなら、まるで無意味。

それなら個別に部屋を割り振って仕事をしなさい。

それなら確実に、其処に行けば居る職員が対応する事が出来る様に為っている訳なんですから。

それで対応出来無いなら、役所としては機能不全。

存在する価値すら無くなりますからね。


公費──人件費・維持費・管理費等々。

諸々の費用が無意味に流れ出ているだけ。

はっきり言って捨てているのと同じです。

…いや、捨てた方が増しでしょうね。

それを誰かが拾って使えば消費になりますから。

この場合は本当に無駄な訳なんで。


そういう所を前世の政治家は見直しもしない。

本当にね、何の為に政治家を遣っているのやら。

宅に居たら即解雇、即鉱山送りにしてますよ。

そういう使い方をした方が民の為に成りますから。

ええ、本当にね、前世の政治家の存在する価値って何だったんでしょうね。


まあ、今となっては他人事なんですけどね。

俺自身、そういう立場に今では居る訳ですが。

そんな連中を知っているからこそ、己を正せます。

自分自身で難しいなら、側に人を置きます。

そう遣って、力を合わせて臨んでいます。


一人だけでは必ず偏りが出て来ますし、出来る事に限界は有ります。

でも、二人なら偏りは減り、出来る事も増えます。

勿論、一緒になって落ちてしまえば無意味ですが。

それも結局は自業自得。


自らを律し、御す事が出来無ければ、過程は違えど到る結果に大差は有ります。

どんな形だろうと、破滅は破滅ですからね。

そう少し考えれば想像出来る事を。

想像し、自省・自重したり、踏み止まる。

その有無が、政治家には常人よりも求められる事を強く自覚し、自負し続けなければならない。

それが出来無い者に民の未来を背負う資格は無い。

それが、政治に携わるという事なんですから。



「──っていう顔をしてるわね」


「…え?、マジで?」


「マジでよ──と言うか、貴男って、そんなに悪い前世を送ってはいなかったわよね?

其処まで世の中に不満が有ったの?」


「いいや、そんな事を考える程にまでの興味だとか関心ですらも無かったな

まあ、世の中に──社会に不満が無かったって言う事は嘘でも出来無いけど」


「それが?」


「今の人生になってから、だな

立場が変わったし、社会も変わった

だから、以前では見えているのに(・・・・・・・)見えなかった(・・・・・・)事や気付きもしなかった事、考えもしなかった事…

そういう様々な事に意識が向く様になった

そう言う御前だって俺と大して違わないだろ?」


「ええ、そうね…」



そう肯定しながら複雑そうな顔をする咲夜。

物事というのは立場や立ち位置によって、見え方や感じ方や考え方が異なってくるものだ。

それは主観的・客観的という簡単に分類出来る様な単純な事ではなくて、とても複雑なもの。


どんなに似ている立場であろうとも。

どんなに似ている状況であろうとも。

どんなに似ている経緯であろうとも。

どんなに似ている条件であろうとも。

それらは、決して、全く同じではない。

何より、自分と他人とでは、その時点で異なる。

最初から違う以上、絶対に同じである訳が無い。


そう考えれば、変化により価値観や考え方が変わるという事は、とても自然な事であり。

環境や社会に適応するという意味でも必然的な事。

だから、何も可笑しな事ではないし。

誰にでも有り得る事でしかない。


ただ、それを何も知らない、知ろうともしない者が身勝手な言い分で批難する事が有る。

それが人の社会にのみ存在する特有の差別意識。

どんなに正論や理想論を口にしようとも。

その考え方自体が既に差別意識を伴っているのだと言っている本人は気付きもしない。


差別というのは、人の社会の骨格である。

その事を、先ず理解し、向き合う事が大事。

その上で、社会的な問題である人種差別や性差別の問題に取り組まなければ結局は何も解決しないし、何一つ変わる事も無いのだから。


──と、思考が無駄に重い持論を語り出したので、そのまま御退場願います。

気持ち好く、彼方の独壇場で喋ってて下さい。



「まあ、アレだな、情報社会になって便利になった一方で生じた情報過多による思考障害(・・・・)

一つの事を知ろうとすれば、昔は順を追って学び、他の事を知りながら求めていた事に辿り着く

それが、検索すれば直ぐに出てくる様になった

便利だけど、その過程が省かれた事で、人は自分で考える為の知識や学習力、導き出す為の思考力等を自ら放棄していく事にも繋がっていった訳だからな

不便だけど、自分で考える力を養うのなら

俺は前世の社会よりも、今の社会の方が良い」


「……そうかもしれないわね

文明は、技術は、確かに人の生活を豊かにするわ

けど、その一方で人自身を豊かにする訳ではない

飽く迄も、それは対外的な(・・・・)事よね」


「ああ、結局の所、どんなに進歩しようとも精神や道徳心というのは植え付けたりは出来無いものだ

刷り込みや洗脳、強制学習を是とするなら別だが…

少なくとも、俺は自分が遣られたいとは思わないし子供達や孫達にも遣らせたくはない

それは家族に限らず、民を含めてだ

そうまでして人を同一化したいなら、最早人として存在する理由すら無くなるしな

違いを否定する事しか出来無い社会の在り方こそが何よりも間違っているのであって、違いを持つ事が間違いではない

その事を社会全体が理解し、是とする事…

それこそが、正しい差別撲滅への道だと俺は思う」


「…ふふっ…きっと、長い長い道程でしょうね」


「ああ、それは確かにな

俺達の代では不可能だろうし、存命中も至難だ

だけど、俺達が何も遣らなければ何も残らないし、何も繋がりはしない

たった一人でも構わない

たった一人でも多く、その意志を持ってくれたなら

それは無意味でも、無駄でもなくなる

受け継がれ、繋がり、軈て実を結んでくれれば」


「その為にも、土を肥やし、耕し、種を蒔く、か…

本当、大変な人を愛しちゃったわよね…」


「今になって後悔してるのか?」


「まさか、後悔なんてしてたら、この子達に御腹の中からでも猛抗議されちゃうわよ、ね~?」



「本当にね、困った御父さんですよね~」と御腹を撫でながら話し掛ける咲夜。

その意味を深くは追及はしない。

墓穴ではないが、下手をすると黒歴史を掘り起こし俺が頭を抱える事になる気がするから。


…うん、もうね、宅の妻が華琳(教祖)の熱狂的な信者へと変わっていくのは止められません。

だって、愛すれば愛する程熱心になるんだもん!。

そないなん、どないせいっちゅうねんっ!。


──と言うかね、どう考えても我が子達が入信する絵しか最近浮かばなくなってきたんですよ。

いや本当にマジで。

あの教祖ってば、伊達に母さんや俺が英才教育にて育ててはいませんからね。

滅茶苦茶弁が立つし、人心掌握が巧いんです。

昔の、コミュ障だった貴女は何処ですか?。

最近は何処を探しても見付かりません。

………え?、御亡くなりになられました?。

そんなっ…そんな事がっ…………何て事だっ!。



「それこそ、自業自得でしょう」


「くっ!…言い返す言葉が見付からない、だと!?」


「はいはい、馬鹿遣ってないで其方の山を片付けて御昼を食べに行きましょう

今日は流琉が新作を用意してくれてるみたいだし」


「俺に任せなさい!」



人は食わずしては生きられず。

生きる為には食わねばならぬ。



 郭嘉side──


亡き愚兄の蛮行、一族を破滅させる業火。

それにより、私は生きている事すら許されない。

そうなるだろう、と。

そう覚悟を決めていました。


──ですが、現実というのは数奇なものです。

今も、こうして私は生きているのですから。


それ所か、到底有り得ないと思っていた女としての喜びや幸せを得る事が出来ています。

普通に考えれば、有り得ない話です。

…いいえ、寧ろ、作られた物語の中にしかない。

そういった展開だと言っても過言では有りません。


ですから、もしこれが誰かから聞いた話であれば、簡単には信じられない事でしょう。

寧ろ、出来過ぎですからね。

絶対に、疑う方が先に来ます。

だから、私自身、夢を見ているのかもしれません。


そう、思っていたのも、今では懐かしく思います。

本当に……何時からでしたか。

それすらも忘れてしまいましたが。

兎に角、考える事すらば馬鹿馬鹿しい程に。

あの人は厳しくて、優しくて──狡い方なんです。

ええ、本当にもう…とんでもなく狡いです。



「…っゥん……ちヂュッ……ヂュぢゅ……んっ…

…んむっ……こんな感じでいいのですか?」


「ああ、気持ちいいよ、稟」



そう言いながら私の頭を撫でる左手。

この手が、かなりの曲者なんです。

ええ、これで一体何れだけの女を誑し込んだのか。

……いえ、それは数えられましたね。

一体、何れだけの人を誑し込んだのか。

…………いえ、それは流石に遣っていませんか。

そうですね、決して無差別な訳では有りませんね。

狙った(・・・)獲物は逃がさない、でしょう。

…ま、まあ、私自身も、そうなのですが……ええ。

………これが、惚れた弱み、という事ですか。

…まさか私が、この様な事を…。

…自分から、こんな事をするとは…。

忍様に出逢う以前は思ってもみたせんでしたから。

人は、人で変わる、という事ですね。

……………何か違う様な気がしますが。

深く考えたら負けなんでしょうね。



「…しかし、この様な事が男性は良いのですか?」


「あー…まあ、女性には判り難い事だよな~…」


「全く判らない、という訳では有りませんが…

普通にしていた方が良いのでは?」


「それはそれ、これはこれ、と言うか…ん~…」



そう言って真面目に悩む忍様。

その様子が可笑しくて──つい、悪戯したくなり。

こっそりと続きを再開。

すると、ビクッ!とする忍様。

その際、僅かに漏れた声が………可愛いんです。

意外、と言うと反論する人が多いと思いますが。

それはほら、私を含め、忍様の妻には歳上が多く、出産経験の大半が歳上ですからね。

時折、歳下らしい年相応の表情を見ると可愛らしく思ってしまうのは仕方が有りません。

ですからね?、忍様…決して態とでは……。

ああいえ、全く意図が無かった訳では有りませんが決して狙っていた訳では……え?…。

あ、あの……忍様?…その御手柔ラぁあァアッ──



──side out



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