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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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90話 立ち上る煙に


よく「田舎暮らしに憧れて…」という話を聞く。

それは単に慌ただしく忙しない都会の生活よりも、のんびりとしたペースで生活したい。

そういった意味で言う人も少なくはない事だろう。

もう少し、考えを膨らませたならば。

自分のペースで生活し、農業をしながら自給自足。

趣味や特技を活かしながら悠々自適に日々を送る。

そんなセカンドライフを思い浮かべるのでは。


ただ、それは現代の話。

古くは、“田舎に戻る”というのは敗北者や都落ちといったマイナスのイメージの付いた時代も有る。

都会に出て成功する。

そんな理想や野心や希望を胸に上京。

だが、多くの者が厳しい現実を突き付けられる。

その為、実際には圧倒的に脱落者の方が多い。

──にも関わらず、「上京しよう」と考える若者は後を絶たないというのも現実である。


それは、一握りの成功者に自分は成れる。

その可能性は平等に有る(・・・・・)と思う為。

そして、テレビや雑誌等で見る華々しさに憧れ。

足下が見えなくなってしまっている為だろう。

“飛んで火に入る夏の虫”と言うべきなのか。

「人間は知性に溢れている」と言う者も居るが。

その割りには、灯火に近寄り燃える虫と大差の無い知性しか持ち合わせてはいないとも言える。

或いは、自然界の摂理を守る動植物以下か。

何にしても、人間程、愚かな存在は他に居ない。


ただ、その愚かさを、理解出来るのも人間だけ。

だからこそ、自らの愚かさに気付くべきだろう。


誰かに合わせる、という生き方は楽だ。

集団社会で有る人間の生態系の中では、調和を乱す存在というのは嫌悪され、弾かれてしまうもの。

しかも、多くの人々は過度な変化は嫌う傾向が強く人間という種は保守的な性質が強いと言える。


しかし、その状況を打破しなくてはならない。

そういう状況に置かれた時。

本当の意味で、人間社会は真価を問われる。


田舎暮らしをしたい。

そうは思っていても、簡単には出来無いのが現実。

何処に移り住むのか場所を探さなくてならず。

その場所に何を求めるのか、で条件は違ってくる。


しかし、便利な場所は結局は都会に近い。

不便な場所である程、都会から遠くなる。

「その間が丁度良い」等と思うのは単なる妄想。

本気で田舎暮らしを考える人は、不便でも良い。

寧ろ、都会から遠くなる事を望むのだから。


勿論、そう話す事に正否や良し悪しは無い。

それ自体には他意は無いのだろうし、本音だろう。


ただ、よくよく考えてみて貰いたい。

都会で暮らしている人々を支えているのは地方。

つまり、都会から見た(・・・・・・)田舎である。

都会で大規模な農業が出来るだろうか?。

畜産業は?、漁業は?。

場所も無いのだから、出来る可能性は低い。


それなのに、都会は田舎を見下す。

まるで自分達が社会を動かし支配しているかの様な愚かな傲り振りを、胸を張って見せる。

その滑稽さに気付かぬ愚かさは失笑するに等しい。


真に社会を支え、無くてはならないもの。

それが、地方産業である。

農業に始まり、畜産業・漁業は生活の要。

電気が使えなくなれば不便だが、人は死なない。


医療機器を必要とする人々にとっては死活問題だが元々は存在しなかった技術でもあり、自然摂理上は死は必然であり、延命は本来は不要な事でもある。

その為、それは人間だけの問題なので省くとして。


人間も食物連鎖とは切っても切れない関係。

それなのに地方産業は下に見られている。

都会を、社会を、国を支えているのは地方産業。

どんなに画期的な技術を開発しようとも。

食料がなければ飢え死にしてしまうのが必然。

──であればこそ、地方産業にこそ国の、社会の、人々の力と理解が必要不可欠ではないのだろうか。


地方産業が活性化し、地方経済が向上すれば自ずと社会や国の経済も向上し、活性化する。

その為には、一時的に都会が廃れてしまおうとも。

最優先で注力するべきではないのだろうか。


何より、自給自足こそが人間の獲得した叡智。

大規模なコミュニティを形成する必要は無い。

一つの家庭、一つの家族、或いは一族。

そんな小規模のコミュニティで生活が成立する。

その為に人類は知識と技術を得たのではないのか。


集団社会が悪いという訳ではない。

しかし、その集団的な社会性を優先するがばかりに人々は自分達の首を絞めているのも事実。

それから逃れる為の手段が、田舎暮らしならば。

社会は今一度、原点回帰するべきではないのか。


立ち止まる余裕も。

振り返り、戻る勇気も。

拓く為に、破壊する決断も。

個人という事だけではなく。

社会という大きさでも必要な時なのかもしれない。

より良い未来と、社会を築いて行く為には。

時として、大きな決断・方向転換も必要だろう。



「──────何、これ……滅茶苦茶美味しい…」


「シャオ、こんなの初めてっ!」


「はわわわっ、口の中に広がる優しく上品な甘さ…

でも、しつこくなくて喉越しも良いです!」


「うっめぇーっ!、何だこれっ!、御代わりっ!」


「猪々子、少しは落ち着いて食べられぬのか?」


「そう言いながら星も御代わりしてるじゃない」


「蓮華様、これは仕方が有りませぬ」


「そうだって、蓮華様も御代わりしてるしさ」


「こ、これは……そうね、仕方が無いわよね」


「──という訳で、忍、御代わり!」



纏める様に言った雪蓮の一言で一斉に差し出される空っぽに為った御椀。

見事なまでに綺麗に食べてあるな。

まあ、作った方としては嬉しい事なんだけどね。


今、皆に振る舞っているのは“御汁粉”です。

ええ、そういった食文化が無いと初見では食べる事自体を躊躇いますよね。

だって、黒いんですから。

しかし、その匂いを嗅げば興味は高まります。

だって、甘いものが嫌いな人は少ないですからね。

それは実際にデザート・スイーツという専門分野が確立されている事からも立証されている事です。

可愛いは正義、甘いは幸福。

つまり、メイド喫茶は世界平和への第一歩っ!。

──いや、流石に冗談ですけどね。

メイド喫茶は商売ですから利益が絡むので。

…まあ、利益が絡まなければ。

猫カフェなんかも同じく平和への架け橋でしょう。

可愛い物と甘い物は人の心を優しく包み込むので。


──なんて事を考えながら、御椀を手渡す。

甘い物を食べて喜んでいる姿は年相応の女の子達。

到底、つい最近、死合っていたとは思えません。

まあ、それは宅の方も同じなんですけどね~。



「御兄様、この“甘酒”というのは良いですね

御汁粉も美味しいですが、また違う優しさです」


「まあ、ちょっと贅沢な物だけどな…」



御汁粉と共に振る舞うのが甘酒。

日本酒──とは言えなかったので、“清酒”という呼び方の方で試験的に醸造していた副産物。

一応、酒精は無いに等しいので子供や妊婦も安心。

何気に甘酒って優秀ですからね。

一年を通して供給出来る様にしたいものです。

個人的にも何方等も大好きな物なので。


甘酒が贅沢品なのは、米が主食である為。

それを酒に使う事や、甘味にする事は贅沢な訳で。

余裕が無ければ、民から大顰蹙物です。

宅は農業や漁業・畜産業に力を入れてますからね。

その御陰で、こういう事も出来る余裕が有ります。

余裕が無かったら流石に俺も遣りませんよ。


そんな御汁粉と甘酒ですが、子供達は年長組のみ。

流石に生後半年経っていない子供達には駄目です。

別に害が有るっていう訳では有りませんけど。

刺激が強いですからね。

離乳期に入るまでは控えます。

贅沢慣れされても教育上、良くは有りませんから。


庶民ではなく、生まれながらに人の上に立つ身。

だからこそ、その価値を理解しなければならない。

それが当たり前だと思う様な愚者にはしません。

如何に多くの人々が携わり、成されているのか。

それを理解し、尊ぶ事が出来る様に。

親として、人として、施政者として。

子供達に教え、導き、伝えていかないといけない。


何しろ、教育の原点は家庭に有る訳ですからね。

家庭内の価値観や道徳観は本当に重要です。

学校では社会性や社交性と知識を学ぶのであり。

人間性は主に家庭で養われ、育まれるものです。


だから、子供の人間性に問題が有る場合は、家庭に問題が有る事は間違い有りません。

その理由は様々ですが。

どんなに幸せに満ち溢れている家庭であろうとも。

それが本当に人間性を育む事にとって適した環境と言えるのかは難しい所なんですよ。

ええ、本当にね、子育てって大変なんです。

しかし、だからこそ、遣り甲斐も有ります。

だからこそ、子育てを通し、親も学び成長する。

子は親を映す鏡。

我が子は自分を映す鏡です。

子を叱り、怒る前に。

自分自身の言動や態度を振り返ってみましょう。

其処には子供に悪影響を与えた自分が居る筈です。

誰か、ではなく、自分が。

何よりも子供に影響を与える存在な訳ですからね。


そういう意味では、“反面教師”とは上手く言った皮肉だと思いますよ。

ただね、これは自分達を正当化する言葉ではなく、鑑みて反省しなければならないという事です。

その辺りを取り間違うと大変な事になります。

自分に都合の良い解釈や受け取り方をし易いのが、人間という生き物ですからね。

其処を自省し、自律出来る様に成れれば。

本当の意味で、大人に成ったと言えるでしょう。


まあ、年齢的には俺達なんて本来は子供の範疇。

まだまだ身勝手で自分勝手な年頃なんですけどね。

やっぱり、背負っているものが有ると違いますし、そういう立場だと認識していると変わります。


そういう意味では、一般的ではないのは当然。

だから、その辺りの認識の誤差や齟齬が難しい。

それを子供達に如何に理解出来る様にするか。

その為の創意工夫や試行錯誤も親の頑張り所。

名家や名門等に代々伝わる教育方法が有ったりする理由というのが、よく判ります。


ただ、それでさえも時代や社会情勢に合わせながら変化させてゆく必要性が有りますからね。

そのままを遣れば良いという訳では有りません。

常に誰しもが必要に迫られる事です。

だから、他人の真似ではなく、自分の子供達と向き合って考える事が大事になってくるんです。

他所は他所、宅は宅。

他所の子供と、宅の子供は同じでは有りません。

親も違えば、家も違い、立場等も違います。

当然と言えば当然の事なんですけどね。


それを理解しながら、他人に合わせようとする。

足並みを揃える、息を合わせる、という意味でなら必要な事では有りますが。

子育てに関しては、本当に他人事なんですよ。

だから、気にするべきは常に自分達と我が子達。

その認識を持てるか否かが肝心だと思うんですよ。


尤も、こういう考え方も、宅の物な訳で。

決して他人様に推奨したりする訳では有りません。

飽く迄も、宅の場合は、ですからね。

ただ、それを参考にして貰う分には構いません。

自分達だけでは気付けない事は判らなかった事。

そういった事を知る事で、変わる切っ掛けに出来るという一面では役に立ちますからね。



「こういう父親ってさ、探しても居ないよなぁ…」


「そうだな、私達が言うのもなんなんだが…正直、子供達が羨ましくもある

勿論、優先度で言えば妻である方が絶対だがな」


「私だけですと不安も有りますが、皆も居ますし、何よりも旦那様が頼もしいですからね」


「安心してポンポンと産めるというものよのぅ」


「その前に沢山可愛がって頂かないと…」


「やれやれ…忍も大変ですね…」


「そういう私達も他人事では無いのですけどね」



──と、絶対に聞こえているのが判っている上で、出産した妻達が催促する会話をしています。

いや、気持ちには応えたいし、応えますけどね。

今はまだ幽州制覇の途中だって事忘れてません?。

まあ、しっかりと遣る事は遣ってる訳ですけど。


幽州制覇が成ったら………子作り大作戦ですか。

もうね、側室問題さえ出て来なければ良いです。

妻達となら、直ぐにでも頑張れますから。

側室は勘弁して。





 顔良side──


“人生の転機”と言えば良い印象を持つでしょう。

しかし、必ずしも良い事が起きる訳ではなくて。

少なくとも、私達にとってはギリギリの状況下での苦渋の選択だった事は否めません。

ただ、それでも、その選択は間違ってはいなくて。

今、良かったと思える事は確かです。


それもこれも、全ては忍様の御陰です。

如何に苦渋の選択だったとは言っても。

忍様以外の人物が相手であれば、今は無かった。

それ所か、私達だけに関わらず、民も破滅していた事でしょうから。

本当に…忍様には感謝してもし足りません。


そして、私達に忍様の恩情──と言うと、忍様から怒られてしまうかもしれませんが。

忍様との子供を産み、家と血を残す事が出来る。

それは私達の置かれていた状況から考えると本当に奇跡にも等しい幸運だと言えます。

忍様は「それは御前達の決断の結果だ」と仰有って御謙遜されますが、普通は有り得ませんから。


もし仮に運良く、家を残せたとしても。

その相手は有力な家臣や地元の名士が相手。

忍様と、という事は先ず有り得ません。

だから、忍様には本当に感謝しています。


勿論、感謝だけではなくて。

私自身、心から忍様を御慕いしています。

その為、今日を何れだけ心待ちにしていた事か。

情勢も有るので仕方が有りませんが。

雪蓮さんに先を越されたのは…正直、不満でした。

まあ、彼女の気性等を考えると納得も出来ますが。

それはそれ、これはこれですからね。

理屈と感情の納得は別々なんです。



「──ンッ、ンんっ…ぅンンッ、~ッ、ンッ!」



座った忍様の足の上に跨がる様にして腰を下ろし、抱き合う様にして唇を──口内を貪る様に。

客観的に聞けば引きそうな程の鼻息の荒さも。

今は気にする所か、それにすら興奮を感じて。

忍様に突き上げられているのか。

私が自分から跳ねているのか。

よく判らなくなっています。

正直、どうだっていいんです。



「ンッ、ン゛ぅん゛ンッ、ンンーーーーッッッ!!!!」



四度目になる放たれた灼熱の猛り。

それ奥へと受け入れながら、私も大きく達します。

もう早々に数える事は止めました。

そんな事を気にしてはいられません。

忍様に求められる事が本当に嬉しくて。

忍様を求める昂りが抑え切れなくて。

少しも離れたくはないんです。



「ぢゅ…んっ…忍様ぁ………ん…熱いですぅ…」


「大丈夫か、斗詩?」


「はい…ですから…んっ…もう一度…」


「ああ、続けるぞ」



そう言って弛緩している私の御尻を両手で掴み上げ五度目に向けて動かし始めて下さる忍様の首に腕を回して抱き付きながら幸せを噛み締めます。



──side out



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