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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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16話 春の梢に彩り


時は〜♪、流れ〜て〜♪、季は〜巡〜る〜♪。

軈て〜♪、出逢う人へ〜、糸を〜手繰〜る様に〜♪。

静か〜に、夢を抱いて〜、育み〜なが〜ら〜♪。

導い〜て行〜くよ〜♪。


星の光を〜結んで〜空に〜描き〜出そう〜♪。

明日へ〜と続く〜道を〜、迷わない〜様に〜。

そう〜、上を〜向いて〜、流れてく〜涙が〜足下を〜崩さな〜い様に〜♪。

辛くても、苦しくても〜、哀しみに負けずに〜♪。

明日(まえ)へ、踏み出せ、その一〜歩〜を〜♪。


何時か〜、き〜ぃっと〜、振り向い〜た時に〜♪。

笑って、話せ〜る思い出に変わる様〜に〜♪。

精一杯に〜、生〜き〜て〜行〜こ〜う〜♪。




──どうも、念唱系歌手のジョー★ジョ〜です。

すみません!、嘘です!、だから物は投げないで!。

男の下着を投げ付けるとか嫌がらせじゃないかっ!?。

せめて女性物にしてっ?!。

いや別に、そういう趣味は俺には有りませんけどね。

正直、下着泥棒と盗撮犯の気持ちは理解出来ません。

個人の性癖だから、当然と言えば当然だけど。

俺は生身の女性にしか興味有りませんから。


さて、関羽が家族と為って半年が経ちました。

ピリ付く事も有りますが、華琳とも姉妹・朋友として仲良くなっています。

時には結託して俺を攻めるという程度には。

ええ勿論、返り討ちです。

“兄は強し”ですから。

簡単には負けませぬ。



「──こら、動かないの」


「ごめんなさい」



現実逃避から思考の深海へ旅行したら無意識に身体を本の少し動かしてしまい、怒られてしまった。

…え?、「一体誰にだ?、というかどんな状況だ?」ですって?。

母さんにです。

母さんに膝枕されながら、耳掃除をされています。

うん、されています。

此処、かなり重要だから。

だから其処の御二人さん、睨まないで下さい。

これは俺が希望して遣って貰ってる訳じゃないから。

………まあ、母さんの太股柔らかくて気持ちいいから嫌だとは思わないけど。



「ふふっ♪、大物だわ♪」


「…………」



そんな俺達の事なんて全く気にしていない母さんは、俺の耳の(ダンジョン)を掃除(冒険)しながら奥へと進んで獲物を見付けた様で本当に楽しそうだ。

因みに耳掃除の文化自体は有ったみたいだけど行為に使用する道具──耳掻きは適当だったりした。

其処で俺は竹を削り自前の耳掻きを作った。

…だって、使用する道具が雑過ぎて痛いんだもん。

仕方無いでしょうが。

──で、自分なりに工夫し使い心地を高めた訳ですが母さんが気に入ったらしく「忍、これ頂戴」と真剣な表情で言ったので贈呈した結果が──現状です。


うん、俺は悪くないよね。

何も悪い事はしてない。

だから、俺は素直に従う。

静かに目蓋を閉じ耳掃除の心地好さに心身を委ねて、意識を手放す。

子供らしく、男らしく。

今は幸福を堪能する。

それで良いのだから。





「…………ぅ?…ん……」



現世の深淵から帰還するとボヤけていた視界の焦点が合うと見慣れた天井が見え途切れた記憶が連結する。

そして、眠る前には有った筈の感覚が無くて、硬い。

つまり、状況が違うという事を残念無念ながら理解し小さく溜め息を吐いてから身体を起こす。

──が、まるで磔にされたかの様に動けなかった。



「これは何事か──って、そういう落ちですよね〜」



俺の身体に掛けられている兎の毛皮で作った毛布──タオルケットに近い物だが──の両端を押さえる様に眠っている御姫様が二人。

気分は地に縛り付けられたガリバーだろうか。

それ程は彼我の差は無いが飽く迄も気分的に、だ。


だが、ガリバーとは違って俺の脱出は容易い。

身を捩りながら芋虫の様に毛布の下から這い出す。

それは宛ら、蛹から羽化し飛び立つかの様だ。

…まあ、そんなに大袈裟な話じゃないんだけどね。



「──よっと、脱出成功」



某怪盗の三代目みたいに、瞬間脱衣が出来れば簡単な事なんだろうけど。

生憎と俺には出来無い。

と言うか、そんな技術自体必要としないからね。



(あ〜でも、あれだよな…

逮捕・捕縛される可能性は意外と高いかもしれないし身に付けた方が良いか…)



“出る杭は打たれる”とも言うじゃないですか。

「フッ…残念だったな」と言われてしまう様な展開が将来的に起きない可能性が無い訳ではない。

ならば、そういう時の為に備えて置くべきだろう。

それに場合によって色々と使い道は有りそうだし。

うん、華琳達も含めて少し遊び感覚で遣ってみよう。

「縄抜けの術っ!」なんて忍者ごっこしながらでも、身に付けられそうだから。


まあ、関羽は自力(力業)で脱出出来そうだけどね。

…彼女が縄抜けを?、今は兎も角として将来的には、困難に為るでしょう。

だってほら、男とは違って“引っ掛かり”が大きくて出来無いでしょうから。

ええ、その点、華琳の方が身に付ける上では実用性が高いでしょうね。

…言ったら、殺されるかもしれませんが。


尤も、俺(宅)の妹(華琳)に手を出そうものなら地獄を見せて殺りますが。

ええ、エエ…存分ニネ。



(──って、暢気にしてる場合じゃないな…

二人が起きない内に退散だ

そう、これは逃亡ではない

明日へ繋げる為の前向きな撤退(後ろ歩き)だ!)



──なんて事を考えながら日々の鍛練と狩猟で培った高等技術を無駄に駆使し、俺は猛獣の眠る檻の中から無事に脱出を果たす。

生きて吸う空気の美味さは成し得た者にしか判らない甘美なる愉悦だろう。


…まあ、後が色々面倒な為“言い(アリバイ)”作りだけは欠かしませんがね。

追及ってさ、“追窮”って書いた方が良くない?。

だって窮地に追い込むのが目的な気がするんだもん。

絶対、そうすべきでしょ。

追及される側からしたら。




家を出て、何処へ行く。

母を探して、三千里。


うん、そんなに遠い所まで母さんは出掛けません。

移動手段も有りませんから日帰りなんて無理ですし。

放任主義っぽい人だけど、子煩悩な人でもある。

だからね?、如何に俺達が子供らしくはなくて大丈夫そうだったとしても。

母さんは一日も家を開けるという事は無い。

過保護じゃないよ?。

過保護だったら、八歳児が熊を狩ったりしてる時点で軟禁に近い事をしてる筈。

異質な八歳児の行動にさえ理解を示し許容してくれる素晴らしい母親なんです。

とても自慢の母親です。

未亡人なのが不思議です。

…でも、再婚するとしたら色々大変ですね、はい。

賛成・反対の問題以前に、相手の糞野郎の鑑定・評価から始めますとも。

いや、嫉妬じゃないよ?、だってほら、再婚するなら糞野郎は俺達にとっての…ゴニョゴニョ…に為る訳で…ゴニョゴニョ…だなんて呼ばなくちゃ為らない訳で「はい、そうですか」とは言えませんとも。

特に華琳達を守る意味でも譲れませんからね。

決して、俺が失った悲願を果たせる可能性を持つからという理由ではない。

そう、そんな事は無い。

母さんの幸せを願っている親孝行な俺ですから。


──とまあ、そんな感じの母さんな訳なんですね。



「うふふっ、それでね?、恕ったら──」



──そして、親馬鹿です。

ええ、それはもう話題上の当人が羞恥心に悶えるより母さんの話を聞いてる人に同情したくなる位に。

天然の、親馬鹿なんです。

母さん(本人)は、何気無い話題のつもりなんだけど、当たり前の様に変わる為に話し相手・聞き手としても“その手の話題は避ける”という事が不可能でして。

以前、俺達の話をたっぷり聞かされた村の男性から、力無く愚痴られました。

いや本当に、悪い事してる訳でもないし、俺達自身も子供らしくはないんだけど一方で良い子供の例として挙げられていましてね。

特に、女性(母親)方からの評判が高い訳ですよ。

……ええ、御想像の通り、この村でのヒエラルキーは女性の方が上なんです。

世知辛いですよねぇ…。


ただ、俺から母さんに対し指摘する事は出来無い。

何故なら──華琳に関して話し出したら兄馬鹿(俺)も親馬鹿(母さん)と同類で、ノーリミットだから。

だから、仕方無いんです。

溢れる愛は止められない。

それが真実なのだから。




そんな訳で、然り気無く、母さんの機嫌を損なわない様に気を付けながら、俺は声を掛けて話を終わらせ、ミッションを完了する。

解放された村人Nさんが、逃げる様に挨拶をしながら俺に視線で「助かった!、本当に有難うな!」と意を伝えてきたので、謝意から母さんには判らない感じで「此方こそ、すみません」という一礼を返す。

口にしては為らない。

男と男の暗黙の了解。

女性には判らない世界が、其処には有るのだから。



「恕、二人は?」


「まだ寝てましたからね、置いて来ました」


「あらあら〜、起きた時に貴男が居なかったら二人はどうするのかしらね〜?」


「…大丈夫でしょう」


「ふふっ、だと良いわね」



話題は綺麗に逸れているが個人的には触れたくはない部分を容赦無く突いてきて楽しそうに笑う母さん。

態々訊かなくたって二人の反応位は判るでしょうに。

でも、その笑顔に負けて、言い返せないのは。

男としての未練からか。

或いは、息子としてか。

それは俺にも解らない。


それは兎も角として。

その姿を見ていると本当に母娘なんだと思う。

まあ、比較対象は原作での曹操なんだけどさ。

あの曹操から…狡猾さ?を引いて少々の天然を加えて混ぜ混ぜ捏ね捏ね皆大好きハンバーグ風に仕上げると母さんに成ると思う。

まあ、正直な所、母さんは有能な劉備って感じだ。

でも、揶揄い(悪戯)好きな所なんかは曹操なんです。

孫策的な風味も有るけど、怠け者じゃないから。

その点は、やっぱり曹操の母親なんだって思うよ。



「取り敢えず、畑に行って収穫して来ましょう」


「何方が早いかしらね〜」



それは勿論、俺と母さんの話ではなく、俺達が収穫を終えて帰るのと、華琳達が起きてしまうのと。

その何方が、という話。

考えたくはないのだけど、考え無しには乗り切れない大波が迫って来ている。

本当、半端無いって。


…まあ、まだまだ二人共に“花より団子”だからな。

世界でも特に食文化に対し貪欲な現代日本人の本気を見せて遣りますよ。

餌付け、それは平穏という共存の架け橋である。




さて、此処で小話を一つ。

畑というのは農作物を育て収穫する為の農耕地ですが基本的には家毎に管理し、仕事をするのが普通です。

でも、それは考え次第では非効率的でも有ります。

特に超山奥の、ド田舎の、人口1000人に満たない小さな村では。

家庭毎の農作業というのは負担もリスクが高い訳で。


其処で、俺は母さんを通し村の皆様に提案をした。

「“共同栽培農地”を村に作ってみませんか?」と。

簡単に言えば、作業分担し個々の負担を減らした上に病気や怪我で動けない時に畑の心配をしなくて済み、大人数で作業する事により土地の無駄も省ける。

──という感じで説明し、理解と賛同を得て始まった通称“村大畑”は大成功。

特に冬場に各家に差が無く食糧を供給出来るという事が大きかった。

それにより、共同水田案が出て、昨年実施された。

此方も成功と為った。


そんな訳で、村の母さんの発言力は村長以上です。

でも、母さんは距離を置き下手に深入りしない様にと気を付けています。

…まあ、その辺りの理由は未だに不明なままの母さんの過去に有るんでしょう。

訊きませんよ?、今は。

何時か、必要だと思ったら母さんなら話してくれると信じてますしね。



「──御兄様?」


「ん?、起きたのか?」



──とか考えながら収穫を遣っていたら、背後からの冷ややかな──俺に対して不機嫌さを隠してはいない声に振り向き、平静を装い「寝てても良かったぞ?」という兄の思い遣りの体で声を掛ける。

二人きりの場なら兎も角、こういう公共の場で素顔を晒さない意地っ張りな質を理解しているからこそ。

遣れる技なんです。

出来れば、越えてくた方が兄としては嬉しいのだが。

中々に難しいだろうな。

その隣に居る関羽共々に、甘え下手だから。




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