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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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   息吐く温もり


冥琳の出産から五日後。

予定通りに月が出産し、長男の董()が誕生。

月は出産した妻達の中では一番小柄──と言うか、見た目には幼女と間違われますからね。

勿論、本当の幼女ではなく、“みたいな”、です。

小柄と言っても身長は120㎝は有りますから。

極端にキャラとして強調されている程ではない。

胸だって原作の董卓よりは有りますから。

ええ、俺の愛が通じた様です。

身長には通じませんでしたが。

取り敢えず、母子共に無事で健康です。

どんなに慣れていても、無事で安心しました。


まあ、それはそれとして。

いや本当にね、皆、見事に跡取り息子達ですね。

別に不満は有りませんし、可愛い我が子ですよ。

ただね、外野(・・)が鬱陶しいんです。

その所為で、「実は宅は娘ばかりで男の子が…」と違うアプローチをする縁談が急増中でして。

勿論、丁重に御断りさせて頂いていますよ。

ただ、その言い方とかが…ねぇ…。

「自慢の五人姉妹ですから、御自由に」とか。

「まだ七歳(若い)ですが…」とか。

「人妻は如何です?」とか。

うん、何考えてんの、御前等?。

マジで、そう言って殴って遣りたくなります。

まだ、五人姉妹は許容しよう。

此方等に選択権を残してくれてるしな。

しかし、若いと幼いは違うからなっ?!。

幾ら月や雛里が見た目は幼女寄りだからって流石にガチの幼女に手を出す気は無いからっ!。

それから人妻に手を出す気も無いっ!。

原作の黄忠は未亡人だったから、再婚です!。

決して不倫や寝盗りではないから!。

──と言うか、勝手に俺に変な性癖を付けるな!。

プレイは時々ハードモードでも俺はノーマル!。

妻達も俺中心の複数プレイが有りなだけで、決して百合では有りませんから!。

宅の夫婦はノーマルなんですっ!!。



「…誰に主張してるのよ?」


「言うな、吐けない愚痴なんだから」



判っていて、ツッコム咲夜に返す。

言ってきた相手に言えないんじゃない。

その愚痴を言おうものなら動く教祖(・・)が居るから。

──と言うか、妙に急増してる裏に居るな。

直接は手を出してはいないだろう。

そんな証拠を残す生易しい相手ではないんだ。

おまけに自己顕示欲も承認欲求も無い。

純粋な目的を遂げる為の一手段に過ぎない。

だから、厄介だ。


──とまあ、そんな話は置いといて。

冥琳も月も難産という事はなくて良かった。

一応、氣を使ったりして処置は出来るが。

基本的には、関わり過ぎない方が望ましい。

その方が二人目以降の時に活きてくるから。

経験というのは知識・技術的な意味だけではなく、肉体的な事にも密接に関わるからな。

一番判り易いのが免疫システムでしょう。

だから、子供に「止めなさい」は控え目に。

多少の怪我や体調不良は大事な経験なんです。

それを経て、身体が強く成れる訳ですから。

薬や医療が発達しても、人体の機能は変わらない。

つまり、健康な身体は様々な経験を以て成る、と。

そう言う事が出来る訳だ。

ただまあ、その過程で死んだら意味が無いからね。

その辺りは親が見極めないと。

誰かに責任転嫁するのではなく。

親が自ら背負い、判断する。

そうしないと親の方が成長出来ませんから。

世の中の親御さん、頑張って行きましょうね。



「昔の方が人は愛情深かったでしょうね」


「技術の発達は人心を解離させるからな

何の為の技術なのか、それを見失ったら無意味…

それと同じ様に、教育や家庭の意味もだ

そうは為らない様に俺達も気を付けないとな」


「ふふっ…そうね」



そう言いながら意味深な笑みを浮かべる咲夜。

態々、追及はしませんが。

だって、墓穴を掘る様なものですから。


それは兎も角として、咲夜の方も順調です。

初めて逢った時、今の関係を想像する事は御互いに出来無かったでしょう。

そんなに良い出逢い方ではなかったしね。

今では物凄く懐かしい記憶の一つですが。

まあ、それは再会した時も、でしょう。

咲夜からは「アレで殆んど一目惚れよ」と。

暫くして寝物語に話してくれましたが。

その気持ちは理解出来ます。

俺が母さんに惚れたのも、近い理由ですから。

決して、豊かさに魅了された訳では有りません。

それも無かったとも言いませんけどね。

女性の魅力は大きさでは決まりませんから。


──とか考えている内に目的地に到着。

俺達を見て、月の祖母である李春鈴──()殿が座る椅子から立ち上がって深々と一礼する。



「忍様、咲夜様、月が御世話になっています」


「此方等こそ、色々助けて頂いて助かります」


「私達は殆んどが親が亡くなっていますので…

経験と共に助言・補助して頂けるのは助かります」


「…そう言って頂けて光栄です」



宅の夫婦は咲夜の言う様に親が居ない者が多い。

だから、それを知る梓殿にすれば、感涙物。

俺と言うよりかは、咲夜からの言葉だから尚更だ。

如何に仲が良かろうとも、政治的には別家。

それ故に本来は必要以上に関わる事は好ましくなく避けるべき事でもある。

だが、実際には咲夜達は董家──梓殿や月の母親の董君雅──()殿を頼る事は多い。

華琳でさえ、そうなのだから。

其処まで信頼されれば、泣きたくもなる。

まあ、其処で堪える辺りが女傑の共通点だろうな。


梓殿に着席を促し、咲夜を席に座らせ、俺は茶杯を用意して御茶を淹れる。

…え?、「侍女は居ないのか?」って?。

居ますよ、普段は。

今は半公務・半私事なので。

自分達で遣る様にしています。

ん?、「それでも立場的に可笑しいだろ?」と?。

咲夜は妊婦、梓殿は義祖母だからな。

夫として、義孫として、俺が遣るのが無難です。

なので、これで良いんです。



「梓様、月達には御会いに為りましたか?」


「はい、冥琳様にも元気な男の子が御生まれで…

何処も安泰の様で…素晴らしい事です」


「女の子で悪い訳じゃないんですけどね」


「ええ…ですが、新興家は暫くは見栄も大事です

その中でも直系の嫡男が当主というのは形としては大きな意味を持ちますから…」


「判り易い形、というのは大事ですからね」



──という、咲夜と梓殿の会話。

どうしても世の中が、政治が、男社会だからね~。

宅の内部では女性も多く登用してるし、活躍をして実績も残してくれていますが。

やはり、彼女達には「選ばれた者だからな」という特別な評価と事実が付きますからね。


女性の社会的活躍は今暫く時間の掛かる事。

何より、優先されるのが妊娠・出産・育児だしな。

子供が増えないと社会の土台が弱ってゆく一方。

女性が安心して子供を沢山産める社会組織を構築し軌道に乗せてから、漸く、女性の社会進出です。


勿論、それ以前でも活躍出来る人も居ますが。

彼女達は色々と恵まれているから。

夫婦・家庭・職場での理解・補助が有るから。

そうして貰える余裕が無ければ、厳しいのが現実。

宅にしても妻達が活躍出来るのは人数が居るから、妊娠で仕事量を減らし、一時休職もし易い為。

そうでなければ、子供を優先にする事になる。

子供が出来無ければ家や血筋が絶えるだけでなく、多くの民の未来を左右する事になるから。


だから、俺達も頑張ってますし、考えてます。

一過性の解決策なんて無意味ですからね。

根本的な所から問題点を考えて洗い出し、一つ一つ時間を掛けて構築していくしか有りません。

一代ではなく、何代にも渡って繋ぐ政策になる。

その大変さを理解していても。

遣るだけの価値が、意味が有ると思うから。

俺達は前を向いて進んでいけるんですよ。



「まあ、こういう人を夫に選んだ訳ですから…」


「ふふっ、大変ですが、幸せな事ですよ

同じ道を共に歩める(・・・・・)という事は」


「はい、それはもう、確と感じています」



そう言って茶杯を置いた俺を見る二人。

だが、俺は一切反応しません。

無駄に優し気な微笑みですが、それは罠です。

反応したら、揶揄われるだけですからね。

宅の妻達も、此処ぞとばかりに遣ってきますから。

勿論、その夜に意趣返しはさせて頂きますけど。

梓殿には出来ませんから。

それを理解しているから咲夜達も乗っかる訳で。

ククッ…この徐子瓏を甘く見るではないわっ!。


──という世紀末的な俺には御退場頂いて本題に。

別に孫達の出産祝いだけで来てはいませんので。

いや、以前に比べたら、それも気軽に出来ますが。

立場上、色々有るんですよ、何処もね。



「頼まれていた遼西郡の領地への支援の件ですが、人員・物資共に用意は整いました

何時でも動かせます」


「早い対応で助かります」


「…ですが、本当に董家()で良かったのですか?

確かに、忍様の奥様方には所縁の方が居ないという事で余裕の有る当家に話が来たのは判りますが…」


「影響力が強くなる可能性が高い、でしょう?」


「ええ…袁家の二の舞、とまでは言いませんが…

宅も一騒動有りましたから…」


「“歪み(アレ)”に関しては不可抗力です

何処で有っても起きる可能性が有りました

あの時は偶々(・・)、董家で起きただけです

そういう意味では、問題の内には入りません」


「……そうでしたね、判りました」



あの一件の詳細こそ話してはいないが。

梓殿と佳殿には「怨霊的な存在の仕業」と。

そんな感じで説明して有ります。

氣を使え、更に限られた資質が無いと認識不可能、という話をすれば、流石に頷くしかない。

何しろ、自分には解らない事(・・・・・・・・・)なのだから。

だから、ちょっと強引では有るが押し通した。

勿論、公的な発表は「韓宮が心を病んで…」と。

民衆が納得出来る(・・・・・)尤もらしい話にして。

言っても解らない事は憶測から混乱を招く。

だから、その辺りの情報統制は必要不可欠。

──とは言え、これはトップの俺が理解していて、他が理解出来無いから出来る事。


トップが理解出来無い事を理解させるのは大変で、その為の労力と時間は無駄に費やされるだけ。

そういう時は、トップは理解出来る者に事の全権を与え、任せてしまう方が良い。

それで職権乱用すれば、その者を処刑するだけ。

何の為の全権委任なのか、という話なんだから。

失敗したとか、効果が直ぐに出ないとか。

その辺りの対応は寛大且つ長期的に判断。

短期的に解決出来る問題の可能性は低いのだから。

だからこそ、専門性が必要になる訳ですからね。

その辺りの判断が出来無いトップは無能ではなく、単なる無知なだけ。

理解出来無いから、思考は的外れで判断も矛盾し、迷走に次ぐ迷走で混乱が拡がり、後手後手になる。

つまり、ザ・負の連鎖。

ただそれだけの事なんですよ。


まあ、やれ責任問題だ、やれ解任だと。

訳の解らない子供の喧嘩以下の超低俗・超低知能な争いを生放送で遣る様な連中には何を言っても無駄でしかないんですけどね。

一回、客観的に観て見なさいよ。

昔なら恥ずかしくて即切腹物の醜態ですから。

そんな真似を遣ってる時点で税金の無駄使い。

給料を貰う所か、国民に慰謝料を払いなさい。

そう言いたくなる程、酷いんですから。



「…?…忍様?」


「ん、特に問題も無いし、直ぐにでも頼む

宅からも将師を数人回して経験を積ませるから」


「その奥様方が治め易い様に、ですね」


「いや、其処までは言わないけどな

民や臣下の信頼を得られるかは本人達次第だ

だから、その点で甘やかす真似はしない

寧ろ、俺や皆の名に頼る様なら切る(・・)だけだ」


「……ふぅ…同じ女としては羨ましい信頼ですね」


「ふふっ、頼まれても譲らないわよ?」


「月を貰って頂けただけで十分です

まだまだ曾孫も期待出来る様なので」


「ああ、それは大丈夫よ

一人十子は固いわ」


「ふふっ、頼もしい限りです」



おーい、其処の二人ー、人が聞き流してるからって好き勝手言うなー。

確かに出来ると思うし、欲しいと思ってるけど。

それって、俺が言う台詞じゃないの?。

いやまあ、それは確かに俺は言わないけど。

妻達相手なら兎も角、梓殿には言いませんて。





 董卓side──


直ぐに子供が出来る。

その自信と確信は忍さんに愛されて有りました。

ですから、子供を作ると為った時も。

妊娠した時も。

然程驚きはしませんでしたが。

………御腹を痛めて産んだ我が子を腕に抱いた時の感動と実感は生涯忘れえぬ経験です。

勿論、一人で満足してはいませんが。



「ふふっ、ぅふっ、あ~可愛いわね~、ん~~っ」



私の産んだ長男の剛を抱いて頬擦りする御母様。

私自身が物心付いてから一度も見た事が無い位に、緩みに緩みきった若気顔は………こういうのは少し躊躇われますが…ちょっと面白いです。

ただ、赤ん坊が可愛い気持ちは判ります。

皆さんの産んだ子供達も私には等しく我が子。

忍さんという夫だからこそ可能な事ですが。

その気持ちが揺らぐ事は有りません。

こうして私自身が子供を産んでもです。

──とは言え、注意しなければいけない事も。

公平に、平等に、と。

それを意識し過ぎると自分が産んだ子供達に対して特に厳しくしてしまう可能性が高くなります。

ですから、変に構えない、という事を忍さんからは教えて頂いています。

…だって、私達は皆、愛されていますから。

身を以て、知っている訳です。

流石に口には出来ませんが。


──と、部屋の扉が叩かれたので返事をすると扉を開けて御祖母様が入って来られました。

予定日は事前に報せていたので、二人は此方等には三日前から来ています。

まあ、昨日までは観光等をしていましたが。

剛の誕生は御祖母様も喜んでくれています。

御母様程では有りませんけど。

その辺りは人生経験の差でしょうね。

御祖母様が見てきた赤ん坊の数は私達の比でなく、ずっと多いでしょうから。

だから、御母様の様子を見て、溜め息を一つ。



「あらあら…まだ遣っていたの?…困った娘ね…」


「御祖母様、御話は終わりましたか?」


「ええ、急ですが私は先に戻ります

大丈夫でしょうが、月、身体には気を付けてね」


「はい、御祖母様も御自愛下さい」


「大丈夫よ、曾孫を十人抱くまでは死なないわ」



そう言って「頑張りなさい」と激励してくれますが冗談ではなく本気なので苦笑するしか有りません。

勿論、十分に産む自信は有りますけど。

忍さんからも「上限を決めるつもりはないしな」と頼もしい言葉を頂いていますので。



「ほら、佳、剛を少し抱かせて頂戴」


「む~…本当に少しだけですよ?」


「可愛いのは判るけれど程々にしなさいね…

ほ~ら、良い子ね…月が生まれた時の事を思えば、大きいし、重さもしっかりしているわね」


「そうなんですか?」


「ええ、貴女は平均よりも少し小さくてね

忍様の言う所の“未熟児”だったのでしょう

早産という訳ではなかったから、特に問題が有ったという訳では無かったけれど…

ふふっ…その娘が母親に成ったのよね

改めて、感慨深く思うわ」



そう言われて顔が熱くなるのは仕方無いでしょう。

この手の話は生涯有る訳ですから。

嬉しくも恥ずかしい、何とも言えないものです。



──side out



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