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恋姫†異譚  作者: 桜惡夢
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   爪が有るもの


早朝から始まった嶺胡と亥駑の戦は激闘となった。


──という様な事実は存在しません。

ええ、こう言っては何ですが、格が違いますので。

南北の防衛に当てた嶺胡族は系五百。

南に三百、北に二百でしたが、それで十分。

南は美以が敵兵を殺さない様に倒しながら防衛。

北は沙和が指揮しながら押さえましたからね。

最後は「私が決めるからね~!」と突っ込んできた亥駑の長である張角(・・)を捕まえて、終了。

ある意味、長が一番早く遣られた訳ですからね。

亥駑は勿論、早屡と黄尼も大人しいものです。

そういう聞き分けの良さは外の連中に見倣わせたい部分だと言えるでしょう。

まあ、無い物強請り(・・・・・・)ですけどね。


そんなこんなで、現在、目の前には張三姉妹が。

ああ、“原作”みたいな格好はしていませんから。

アレは入れ知恵(・・・・)有ってな訳ですし。

時代・文化的に考えても、ズレますからね。

勿論、其処を突き詰めたら駄目なんですけど。

だってほら、ゲームとかって、そういう設定の上で成り立ってる世界観を楽しむ訳ですから。

考え過ぎたら駄目な部分も有ります。

…まあ、それでも「現実的に考えたら…」って思う事が悪いとか間違ってる訳じゃ有りません。

寧ろ、そういう思考は必要な事だと思いますよ?。

その想像力が正しい方向(・・・・・)を向いていれば。

自分にとっても、他人にとっても、社会にとっても意味の有る思慮に繋がりますから。


──で、当の張三姉妹なんですが。

所謂、原始人的な格好に近いんですよ。

美以達もなんですけど、奈安磐って辺境な訳で。

他郡(外部)との交流が極端に少ない地域な訳で。

そうなると文化・文明的にも発展し難いんです。

その結果、奈安磐の人々のフォーマルな衣装とは、動物の毛皮を使用した物が多いんですよ。

そう、原始人な感じのね。

──とは言え、ただ、毛皮を切ったりしてるだけな訳では有りません。

それなりに工夫されてはいます。

ただ、見た目には……野性的な水着?。

セクシーでワイルドだね~──じゃなくて。

ちょっとばかり、目の遣り場に困ります。

…主に正座している張角がね。



「え~っとね~、私が亥駑の長で~、長女の張角、字は公陸(・・)、真名は天和(・・)だよ~」


「次女の張宝、字は子海、真名は地和(・・)よ」


「末の張梁です、字は文空(・・)、真名は人和(・・)です」



緩~い張角の自己紹介から始まり、負けて不機嫌な張宝、素直に従う張梁と続いたが…うん。

本当、面白い三姉妹だこと。

孫家の三姉妹と比べるとネタ寄りだけど。

それは飽く迄も原作での話ですからね。

現実の彼女達は、また違っています。


原作では、天然・巨乳・ピンク・魅力チートと。

何かと劉備と被りまくっていた張角。

実三姉妹の長女と、義三姉妹の長女でも有るしね。

それから女としては意外と強かなのも似てたな。

普段とは違い、負けず嫌いだし独占欲も強め。

ただ、それ以上に調和や友好を大事にする。

うん、改めて考えてキャラ被りが凄いわ。


もうさ、どうせなら、最初はさ、劉備が張角として熱狂的な支持者(ファン)に御輿にされて。

それが黄巾党──ファンクラブ兼運営組織を結成。

しかし、興行(ライブ)を利用しようとした官吏と対立。

それが切っ掛けで官軍に狙われて──返り討ちに。

其処から可笑しな方向に事態は転がって、加速。

手に負えなくなった為、張角の名を捨て劉備に戻り義勇軍として立ち上がって、暴徒と化した黄巾党を討伐する為に戦場に身を投じた。

──みたいな脚本(ストーリー)でも良かったんじゃない?。


──とか言う議論は思考の片隅で遣ってて下さい。

俺の仕事の邪魔をするな、其処の暇な俺。



「話した様に、御前達は全て宅の民という事だ

亥駑族という形を残すのは嶺胡族と同様に構わない

但し、次の長は必ず俺の血を直に継ぐ者である事が絶対条件になる

だから、天和、御前には俺の妻の一人に成って貰い張家の興し、跡継ぎを産んで貰う事になる」


「は~い、任せて~、ばんばん産んじゃうよ~」


「………人和、大丈夫だと思うが、頑張ってくれ」


「色々と申し訳有りません

誠心誠意尽くさせて頂きます」


「…むぅ~…」



笑顔で自分の御腹を叩いて見せる天和を見て思わず人和に対し「不安だから、頼むぞ?」という視線を向けてしまった俺は可笑しくないと思う。

いや、ある意味では頼もしい反応なんだけどさ。

妊娠・出産経験は勿論、自分が男性経験も無いのに笑顔で言われても…ねぇ?。

それはまあ?、遣る事遣れば出来るし?。

俺だから、絶対に妊娠させられるけどさぁ…。

何か、違うよね?。

せめて、二人は産んでから言ってよ。

何処から来るんですか?、貴女のその自信は?。

そして、何故不満そうにする?。

まだ「人和にも産んで貰うから」とは言ってない。

これから説明はするけど。

……ハッ!?、まさか未来を垣間見たのかっ!?。

天和──いや、張公陸、何と恐ろしい娘よ…。


──という戯れ言は放り投げてと。

ちゃんと二人にも説明して置かないとな。



「天和は勿論だが、統合している早屡と黄尼からも一族としての形は残したいという望みが有ってな

だからと言って、今の長に年頃の娘は居ない

其処で地和、人和、御前が両一族を代理とする」


「──っ!?」


「…?………どういう事?…ですか?」



何と無く察した人和は身を強張らせる。

一方の地和は首を傾げ、素が出て、一応付け足す。

うん、それはもう丁寧じゃなくて失礼だからな?。

それなら、変に付け足さない方が良い。

だって、此方が言わせてる感が凄いもん。

悪気は無いんだろうけど、嫌な気分になるから。

尤も、その程度で怒ったりはしませんけどね。



「美以の子が嶺胡を、天和の子が亥駑を継ぐ

当然、その子の父親は俺な訳だ

──で、今言った様に現状、早屡と黄尼には直ぐに俺の妻に為れる娘は居ない

──と言うか、見事に息子しかいなくてな」


「あー…確かに…」


「数年以内に娘が産まれたとしてもだ、妻に為れる歳まで待っているのは困る

一族内での不和や権力争いに繋がるからな」


「非戦派って言っても内部の事は別だもんね」


「そういう事だ

だから待って遣る事は出来無い

其処で、考え方を変える

今の両一族の長の息子達──跡継ぎは各々十五歳と十四歳で、結婚しても可笑しくはない

だから、各々に一族の嫁を娶って貰い、子を成す

そして、地和と人和に俺の子を産んで貰い、各々の一族の次の次の長として婿入り(・・・)する

そうする事で俺の血を入れる

元々、両一族は御前達が吸収したんだからな

その意味でも責任を負う訳だし、結果として亥駑と両一族は血縁関係を結ぶ事にもなる」



まあ、少々気長に構えなくては為らない話だが。

下手に今の長達を優遇するよりは増しだ。

それに、こうすれば今の長達の選択が正しかったと一族内に示す事にも繋がるしな。

ただまあ、色々と考えて言う輩は居るだろう。

其奴等は自分の利害しか考えてない訳だが。

鬱陶しい存在なのは間違い無い。

排除は簡単だが、無闇に介入はしない。

下手に介入すると話が拗れるからな。

だから、こういう面倒な手段を取る訳です。

産まれてもいないが婚約を確定(・・)させれば押せる。

だって、政略結婚(・・・・)ですからね。

そういう物なんですよ。


勿論、子供達の事も考えていきます。

幼少期から一緒に居させる様にして幼馴染みにして仲を深めさせたりもします。

そういう調整は親の責任でも有りますからね。

手を抜いたりはしません。

自分達が決めて、レールを敷く訳ですから。

定めた終着点までは、責任を持ちます。

其処から先は子供達自身が決めて歩む道ですから。

余計な干渉はしませんよ。



「…でも、それなら私達が両一族の跡取り息子達に嫁げばいいんじゃないの?」


「亥駑との事だけを考えれば有りだけどな

その場合、早屡と黄尼は亥駑の一部という扱いだ

悪いが、嶺胡・亥駑とは同格には出来無い

俺の血が入ってはいないからな

話としては一番簡単だが、両一族の立場は低くなる

それに両長にとっては、一族内での立場や影響力を弱める事にも繋がる可能性が否めないからな

そうなると善からぬ事を考える輩も増える」


「…何て言うか…こう…面倒臭い話ね」


「ちょっと、ちー姉さんっ」


「人和、今は身内(・・)だけだ、気にするな

地和、今は構わないが、人前では気を付けろよ?

御前だけの事じゃなくて、天和達や一族の立場にも影響してくる事なんだからな」


「ぅっ…気を付けます…」



我慢の限界だったらしく地和の態度を人和が注意。

天和も地和も感覚的に俺に気を許してはいるが。

人和は理性型だから心配するのも仕方が無い。

だから、やんわりと窘める。

同時に地和には注意をしておく。

決して、言っても解らない訳でないので。

地和みたいなタイプには言い方(・・・)が大事。

それさえ間違わなければ、改善は見込めるからな。

フッ…伊達に苦労はしていませんとも。


それは兎も角として。

人和は末っ子だが、一番しっかりしているな。

よく状況や立場が見えているしな。

苦労した事で──と言うか、この姉達だからな…。

しっかりせざるを得なかったんだろうけど。

それが本人の性質とも合ってたのは幸いだな。

華琳の目にも止まった訳だし。

冥琳達も含め、鍛え上げられるだろう。

今から将来が楽しみだ。



「まあ、話を戻すが、そういう訳でだ

勿論、二人の場合には数年以内に、だ

天和は…二年以内には、という感じだ

あまり長くなると色々と事情が絡んでくるしな」


「え~と…その、姉さんや私達は判ったんだけど…

その…美以も、二年以内に?」


「いやいや、それは流石に無いから

美以は自身が長だし、一族の他の者が勝てないから内乱の可能性は低い

天和も自分が長だからだ

そうじゃなかったら、色々と順序が必要だったな

そういう意味では、早屡と黄尼の事だけで済むのは俺達としても楽が出来て助かったな」



本当にね、手間が省けたから助かってます。

如何に非戦派でも、言った様に早屡と黄尼には俺の妻に為れる長の娘が居ませんから。

そうすると、別の輩が長の地位を狙う訳で。

俺に娘を嫁がせようと目論む訳です。

勿論、華琳が睨みを利かせますから無問題。

直ぐに潰されるでしょうけど。

その娘自身が信者になる可能性は有ります。

侍女として俺の側で仕えたり、とかね。

教祖なら遣り兼ねませんから。

そういう意味でも、可能性は減らせたので。

何気に張三姉妹には感謝してます。


それから、年齢の話が出たので確認をば。

長女である天和は俺の二つ上で十九歳。

桃香の一つ下です。

ただ、この二人は並べば姉妹に見られるでしょう。

実の妹達から見てもね。


地和は一つ下で十六歳、人和は三つ下で十四歳。

…え?、「妹二人の戦力差はっ?!」ですと?。

はっはっはっ……エ?、何、聞コエナイナ~。

ウワ~、ノイズガ物凄ガガガピビィイィィ…。

──という冗談は置いといて。

まあ、何ですね、世の中というのは理不尽です。

いや、まだ原作程の大差では有りませんが…ええ。

人和の方が勝ってますね。

身長は地和の方が高いですけど。

そういうのは気にしたら駄目な事なんです。

何を言おうが、触れた時点で一発アウトなので。


因みに美以は五つ下で十二歳です。

…作ろうと思えば子供は出来ますけどね。

いや、遣りませんよ?、そんな事は。

華琳とは…まあ、年季が違いますからね。

比較してはいけません。

する気も有りませんけど。


取り敢えず、遼東属国──奈安磐の攻略第一歩目は無事に踏み出せた、という感じですね。

あまり長く留守にも出来ませんから、出来る限り、早く片付けたいと思います。

…一番手っ取り早い方法が俺の政略結婚ですけど。

それは遣りたくは有りません。

地和達との息子達には悪いですけど。

俺の政略結婚とは規模や意味が違いますからね。

中々大変なんですよ、マジで。





 張角side──


私達の戦いは、呆気無い程に圧倒されて終了。

思いっ切り手加減されてたからね~。

うん、仕方無いよね~、うんうん。



「…御免なさい、姉さん…私の所為で…」


「ん~?、人和ちゃんが謝る事無いよ~?」


「でもっ、敗けちゃった所為で姉さんが…」


「それは人和ちゃん達も同じでしょ?」


「それはっ……そうだけど………でもっ──っ!?」



放って置いたら、ずっと謝ってそうな人和。

その唇を右手の人差し指で押さえて、黙らせる。

……実はコレ、私が忍様にされたんだけどね~。

しかも、そのまま唇を奪われちゃいました~。

きゃあ~っ!。

流石に私が人和の唇は奪いませんけど。

それは忍様の御楽しみですからね~。



「私は、忍様の妻に成る事は平気だよ?

寧ろ、真面目に考えたら一番良い結果だしね~

ほら~、もしもね、私達が嶺胡を倒して勝ってたら戦いは続いてた訳だし…

最終的には私や人和ちゃん達の結婚に関して色々と話が面倒になってたと思うしね~」


「…それは……そうだけど…」


「そう考えたら忍様との結婚は最良だと思わない?

余計な心配は要らないし、面倒な事も少ない

何より、亥駑も嶺胡も早屡も黄尼も、粗無傷

こんなに良い結果、予想出来無かったよね?」


「…うん、それは私も、そう思う」



正直、何方等の被害も覚悟しての戦いだった。

それが負傷者は出ても死者は出ずに終わった。

敗北した事は問題じゃない。

忍様は亥駑も早屡も黄尼も嶺胡と同様に扱って。

その在り方を尊重してくれている。

こんなに凄い結果、予想なんて出来る訳無いもん。

「こう為ったら良いな~」の上を行く現実。

だから、私には何の不満も無い。


それと嶺胡の犠牲者に関しては私達は無関係。

私達が仕掛ける前の御片付け(・・・・)なんだし~。

そういう意味でも、忍様の存在は大きい。



「人和ちゃんは忍様に不満が有るの?」


「…ううん、それはない

正直、忍様みたいな人、他には居ないと思うし」


「だよね~、だったら、私達は幸せ者(・・・)だよ

過程はどうあれ、結果は良いんだから~、ね?」


「…うん、そうね、姉さんの言う通りだと思う」



そう言って、漸く笑顔を浮かべる人和。

まあ、その笑顔を忍様の前では疾っくに見せてるんだろうけどね~。

私が、そうだったし。

だから、こうして人和の不安──罪悪感を拭う。

抑、人和一人が背負う事じゃないしね。

三人で平等に──ううん、半分は私が背負うもの。

だって、私が亥駑の長なんだから。

残りの半分を二人が半分ずつ、かな。

忍様なら「一族全体で背負うべき事でも有る」って仰有るんだろうけどね~。

まあ、細かい事は気にしない気にしない。


そして私は頑張って忍様との赤ちゃんを産むっ!。

長として跡継ぎを作るのは大事な務めだしね~。

頑張ろ~!。



──side out



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